『オデッセイ』
The Martian
リドリー・スコット監督がマット・デイモン主演で贈る、火星に取り残された男のサバイバルSF
公開:2015年 時間:141分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: リドリー・スコット
原作: アンディ・ウィアー
『火星の人』
キャスト
<アレス3>
マーク・ワトニー: マット・デイモン
メリッサ・ルイス:ジェシカ・チャステイン
リック・マルティネス:マイケル・ペーニャ
ベス・ヨハンセン: ケイト・マーラ
クリス・ベック: セバスチャン・スタン
アレックス・フォーゲル:アクセル・ヘニー
<NASA>
テディ・サンダース: ジェフ・ダニエルズ
ミッチ・ヘンダーソン: ショーン・ビーン
アニー・モントローズ:クリステン・ウィグ
ビンセント・カプーア:
キウェテル・イジョフォー
ミンディ・パーク:マッケンジー・デイビス
<JPL(ジェット推進研究所)>
ブルース・ン: ベネディクト・ウォン
リッチ・パーネル:ドナルド・グローヴァー
勝手に評点:
(オススメ!)

コンテンツ
あらすじ
火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまったワトニー(マット・デイモン)。仲間たちは緊急事態を脱するため、死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、火星を去ってしまう。
しかし、奇跡的に死を免れていたワトニーは、酸素は少なく、水も通信手段もなく、食料は31日分という絶望的環境で、4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく。

今更レビュー(ネタバレあり)
火星の人
リドリー・スコット監督には『ブレード・ランナー』と『エイリアン』シリーズという、SF映画の金字塔的な作品を、キャリアの初期にぶちあげてしまっているわけだが、この作品もまた捨てがたい。
火星でのミッションの途中で事故死してしまったと置き去りにされた主人公マーク・ワトニー(マット・デイモン)が実は生きており、そこで完全なる孤独な日々を生き抜く物語。
『オデッセイ』という壮大な感じがする邦題も悪くはないが、ちょっとホンダ車のイメージが強すぎる。個人的には、原作のタイトルにもなっている『火星の人』のほうがストレートで好みだけれど、さすがにそれでは動員が見込めないと日本の配給会社が考えたか。
アンディ・ウィアーは本年公開の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の原作者でもある。どちらもすこぶる面白い読ませるSF小説だが、映画としては10年ぶりに観た本作の方が面白さでは上なんじゃないかと感じた。
原作の科学的な側面を大胆に削ぎ落して、エンタメ路線に傾倒してしまった『ヘイル・メアリー』に対して、こちらはあくまでリアルに(そう思えるだけかもしれないが)、物語を展開しているところが気に入ったせいだろうか。

ジャガイモだけで生きていく
人類による有人火星探査ミッション<アレス3>。突如現れた激しい嵐の暴風で吹き飛ばされたワトニーは夜の火星で行方不明となり、生存は絶望視された。苦渋の決断で彼を置き去りにしたクルーだが、後日、奇跡的に生き延びていると確認される。
ただ、楽観できる材料は皆無だ。独りぼっちで火星に取り残されたワトニーには、地球との交信手段もなく、次にNASAが有人機を送り込んでくるのは4年後。サバイバルに不可欠な食糧も酸素も水も絶対的に足りない。
だが、植物学者である彼は、人糞を肥料に、食糧のジャガイモを栽培することを思いつき、科学的に水を創り出すことで、見事に基地の中に菜園を作る。ジャガイモが最初に芽を出す場面は、まるで小さな話し相手が生まれたかのように感動的だ。
◇
マット・デイモン扮する主人公は、どんなに過酷で絶望的な状況でも、最後の瞬間まで希望を捨てず、落ち込むことなく陽気に振舞う。
思えば『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のライアン・ゴズリングも同じようなキャラだった。このポジティブなキャラは、作品の雰囲気を左右する。ついでに、80年代のディスコミュージックなんかを使うのも、両者に共通する特徴といえるか。
やがてワトニーは20世紀にNASAが火星に放った通信静止画カメラを掘り起こし、地球とコンタクト。その後、ついにメールのやりとりが可能となる。
手元にある材料を組み合わせて何かを作り出し、難題をクリアするのはNASAの定番ミッションであり、『アポロ13』にもそんな場面があったのを思い出す。
キャスティングについて
<アレス3>のクルー・メンバーが今思えば結構豪華だ。
- 操縦士のマイケル・ペーニャは『アントマン』のレギュラー、
- 生物学者のセバスチャン・スタンは『アベンジャーズ』のウィンター・ソルジャー、
- 女性クルーのケイト・マーラは『ファンタスティック・フォー』(酷評リブート版ね)のスー・ストーム。
彼らを支える地上組には『ドクター・ストレンジ』のベネディクト・ウォンもいるもんだから、すっかりマーベル勢が脇を固めている印象。
そして、ワトニー置き去りの責めを自ら背負う女性船長に『インターステラー』のジェシカ・チャステイン。
考えてみれば、前年公開の『インターステラー』にもマット・デイモンが登場してたんだな、それも孤独で惑星に暮らす役で。あちらは孤独に耐えられずに暴走しちゃう博士だったけど。
◇
<アレス3>のクルーたちはその後のミッションに影響を与えかねないと、当初ワトニーの生存情報を秘匿されるが、やがて全員同意のもとで、NASAの命令に背き、ワトニーの救出に乗り出す。
NASAにおいては、保身に走る長官(ジェフ・ダニエルズ)が憎まれ役で、火星プロジェクトの責任者カプーア(キウェテル・イジョフォー)が人情派という色分け。
その中でクルー思いのフライトディレクター(ショーン・ビーン)がいぶし銀の渋さでよかった。ショーン・ビーン、こういう好人物を演じるの珍しくない?
固唾をのむクライマックス
一度、ロケット打ち上げが失敗し、万事休すのNASAを助けるのが中国国家航天局。翌年公開の『メッセージ』でも感じたけど、この時代の宇宙開発系のSF映画では、中国の存在感がかなり目立つようになった。
そしてクライマックスは、長い間の孤独な生活を耐えてきたワトニーを、クルーたちが救出に行く。
全世界の人々がその救出ミッションを固唾をのんで見守るなか、火星から宇宙に打ち上げられる小型脱出艇MAVに乗ったワトニーを、クルーたちの宇宙船がキャッチしなければいけない。
この離れ業をどう成し遂げるのか。結末は予想がついても、手に汗握る展開である。最後にワトニーが『アイアンマン』になるとは思わなかったが、周囲がマーベル俳優ばかりだから、さほど違和感はないか。
『プロメテウス』はじめ、『エイリアン』系のSFホラーもいいけど、こういう正統派SFもきっちり仕上げるリドリー・スコット監督は、さすが。
