『ドクター・ストレンジ』 MCU一気通貫レビューvol.14:ミスターでもマスターでもない、天才外科医の挫折と矜持

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『ドクター・ストレンジ』 
 Doctor Strange

遂に登場、自信家で人格破綻した妖術使い。ベネディクト・カンバーバッチが似合い過ぎ。山奥の修行にビル街の倒壊など、いろんな過去作の繋ぎ合わせのようではあるが、頼れるヒーローがまた一人誕生したのは朗報。

公開:2017 年  時間:115分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      スコット・デリクソン

キャスト 
スティーヴン・ストレンジ:
     ベネディクト・カンバーバッチ
モルド:   キウェテル・イジョフォー
クリスティーン・パーマー:
       レイチェル・マクアダムス
ウォン:     ベネディクト・ウォン
パングボーン: ベンジャミン・ブラット
カエシリウス:   マッツ・ミケルセン
エンシェント・ワン:
        ティルダ・スウィントン

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

あらすじ

ニューヨークの病院で働く天才外科医、スティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)。交通事故を引き起こした彼は、外科医としては致命的な、両手にマヒが残るケガをしてしまう。

一瞬にしてその輝かしいキャリアを失った彼は、あらゆる治療法を試し、最後にカトマンズの修行場カマー・タージに辿り着く。

そこで神秘の力を操る指導者エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)と巡り会った彼は、未知なる世界を目の当たりにして衝撃を受け、ワンに弟子入りする。そして過酷な修行の末に魔術師として生まれ変わったストレンジ。

しかしそんな彼の前に、闇の魔術の力で世界を破滅に導こうとする魔術師カエシリウス(マッツ・ミケルセン)が現れ、人類の存亡をかけた戦いの渦に巻き込まれていく。

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一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ストレンジャー・ザン・アベンジャーズ

新たに登場したこのヒーローも、コミックとしては60年代から存在し、何度も映画化の企画が出ては消え、ようやく日の目を見た。

ベネディクト・カンバーバッチという配役は、なかなかうまいと思った。アベンジャーズの一員として見た時にも、独特の存在感がある。

直前の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、大勢のヒーローたちの活躍に目が慣れてしまった身には、今回の単体ヒーローもの、しかも生身の人間の成長話となると、ちょっと物足りなさを感じてしまうのは正直なところ。

実際、今後他のヒーローたちとも絡みはでてくるが、本作では、ほんの僅かに「アベンジャーズ云々」という台詞が出てきたり、ニューヨークに彼らのタワーが一瞬みえるくらいなものだ。それはそれで良い。

(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

ノーヒットではないがノーラン

単独の作品ゆえに時間をかけて、主人公スティーヴン・ストレンジが不思議な力を持つまでの経緯が語られる。

天才外科医ぶりと傲慢な性格、自業自得でランボルギーニを大破させた自動車事故と絶望的な後遺症。そしてエンシェント・ワンに出会い、弟子入りし修行するまでが、丹念に描かれるのだ。

いや、待てよ。どこかの山奥で導師に弟子入りし、厳しい修行の末に力を手に入れる、このヒーロー成長のプロセスには既視感がある。

そうだ、『バットマン ビギンズ』で、渡辺謙演じるラーズ・アル・グールに学んだブルース・ウェインの境遇と似ているぞ。

それだけに留まらない。本作のヴィランであるカエシリウスが使う魔術によって、マンハッタンが街ごとくねくねと曲がったり、逆さまになったりする様子は、まんま『インセプション』の夢の中と同じではないか。

MCUもついにネタ切れで、クリストファー・ノーラン監督の作風をパクるようになったか

などと思っていると、終盤でドクター・ストレンジは、アガモットの目(タイムストーン)を駆使して、時間を逆行させてしまうではないか。これも、ノーランの『TENET』と被ったぞ。

とはいえ、公開は本作の方が早いので、一矢報いた感じではある。

(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

あれも惜しい、これも惜しい

この作品は何度か観ているが、残念に思う点がいくつかある。

魔術師カエシリウスはMCUの歴代ヴィランの中では、わりと魅力的なキャラだと思う。マッツ・ミケルセンがカッコいい。『007 カジノ・ロワイヤル』で彼が演じた、冴えない金庫番のような悪役とは大違いだ。

強いのは勿論、目の周りを黒塗りした装飾も『ブレードランナー』レプリカントみたいでクールだ(そのメイクしてたのは女優ダリル・ハンナだったけど)。

だが、勿体ないことに、そのカエシリウスが香港での最終バトルでスティーヴンたちと決着をつける前に、ラスボスのドルマムゥに消されてしまうのだ。うーん、消化不良。

指導者エンシェント・ワンについても不満がある。

ティルダ・スウィントンのキャスティングは、原作のアジア系の老人を白人女性に変えたことで<ホワイトウォッシュ>だと叩かれたが、私はあまり気にならなかった。

三蔵法師の夏目雅子的な雰囲気(古いね)もあるし、何よりここにアジア人男性を置くと、より一層バットマンに近づくし。

だが、エンシェント・ワンが禁断の暗黒の力を隠れて悪用し、長寿を得て、といった彼女の裏の顔をあえて話に盛り込んだ理由が、よく分からない。

話を複雑にするだけで、感情移入を妨げているように思う。彼女を実は悪人のように誘導する演出もまた<バットマンウォッシュ>になるので、避けた方が良かったのではないか。

さて、スティーヴンそのもののキャラはどうか。エベレスト山頂への放置プレイであっという間に術を体得し、きがつけば、名うての魔術師カエシリウスとタイマン勝負が張れるのだから、なかなかの才能なのだろう。

『アントマン』の量子の世界同様、本作による魔術の世界も、MCUに新たな切り口を見せてくれる。相棒となる浮遊マントが持ち主を無視して勝手に戦う様子も、どこか『ど根性ガエル』のピョン吉シャツのようで面白い。

タイムストーンを使い何百回も自分の負け戦を繰り返し、とても勝ち目のないドルマムゥを根負けさせるという、想像を超える無茶な技で交渉を成立させるのも、凡そヒーローものとは思えない着地の仕方だ。

以上、本作単体ではイマイチ盛り上がりに欠けた本作ではあるが、今後続編も予定されており、巻き返しを期待したいところである。