『オールドガード』考察とネタバレ|まさに百年の孤独、不死身は幸福か

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『オールド・ガード』 
 The Old Guard

何百年も人類の歴史の裏で暗躍してきたメンバー、不死身ゆえの孤独と虚しい戦果。意味はあるのか、この戦いに。

公開:2020 年  時間:125分
製作国:アメリカ
  

スタッフ
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
原作・脚本: グレッグ・ ルッカ

キャスト
アンディ: シャーリーズ・セロン
ナイル:  キキ・レイン 
ブッカー: マティアス・スーナールツ
コプリー: キウェテル・イジョフォー
ジョー:  マーワン・ケンザリ
ニッキー: ルカ・マリネッリ
クイン:  ベロニカ・グゥ
メリック: ハリー・メリング

勝手に評点:3.0(一見の価値はあり)

(C)Netflix. All Rights Reserved.

ポイント

  • 特殊部隊を率いて敵と戦うシャーリーズ・セロン、黒い髪と戦闘服は『イーオン・フラックス』の再来か。永遠の生命を持つ不死身の傭兵という設定がイマイチ腑に落ちていないせいか、盛り上がりも中途半端に。

あらすじ

何世紀にも渡り、歴史の影で暗躍し、誰にも知られることなく秘密裏に人類を守り続けてきた謎の特殊部隊オールド・ガード。

そのメンバーは永遠の命を持つ不死身の傭兵たちであり、彼らを率いるのは女性兵士アンディ(シャーリーズ・セロン)

ある日、元CIA工作員コプリー(キウェテル・イジョフォー)から緊急任務のために召集されるが裏切りにあい、彼らの能力が暴かれ、恐るべき陰謀のためにその能力を複製しようと企む強大な謎の組織から狙われることに。

手段を選ばない組織の脅威に立ち向かう部隊と人類の運命はアンディと仲間たちに託されていく。

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レビュー(まずはネタバレなし)

歴史の影の戦士たち

けして表舞台には立たず、人の歴史の裏で戦いに暗躍する謎の特殊部隊、そのリーダー・アンディを演じるはシャーリーズ・セロン

公式サイトにも記載されているのでネタバレではないと判断するが、彼らの持つ特殊能力は不死身なことである。

彼らはそれこそ十字軍の頃の時代から、何度も死にながら、生き返って戦い続けているのだ。

<不死身>というと無敵の怪力と強靭な肉体のように聞こえ、確かに強いことは強いのだが、正しくは、一旦死んでもすぐ復活する戦士たちである。

出演者について

シャーリーズ・セロンのアクションというと、最近では『アトミック・ブロンド』を想像する人が多いかもしれないが、今回は金髪ではないし、見た目とか戦い方からすると、ちょっと懐かしい『イーオン・フラックス』の方が近いイメージだ。

元CIA工作員で彼女たちを罠に陥れる男・コプリーキウェテル・イジョフォー。こいつは、敵か味方か最後まで目が離せない雰囲気。

特殊部隊のメンバーには私の知らない俳優も多いが、アンディの片腕的な役・ブッカーのマティアス・スーナールツ『夜が明けるまで』『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』など最近Netflix作品でよく見る。

ちなみに彼の作品でイチ押しは、シャチのトレーナーと恋に落ちる『君と歩く世界』

新メンバー・ナイル役のキキ・レインは、『ビール・ストリートの恋人たち』で主役の気丈な婚約者を演じた女優だ。すぐには思い出せなかったけど。

メリック製薬CEOのハリー・メリングもどこかで見た顔だと思っていたら、Netflix『バスターのバラード』で胴体だけの男を演じていた人だ(世間的にはハリポタのが有名だろうが)。

(C)Netflix. All Rights Reserved.

スタッフについて

監督のジーナ・プリンス=バイスウッドは、まだ他の作品を観たことがない。

原作・脚本のグレッグ・ルッカ『スーパーマン』『ワンダーウーマン』『ウルヴァリン』などのアメコミ・ライターらしい。

コスプレも変身もあるコミック・ヒーローではなく、死なないだけのキャラクターを、どう映画的に盛り上げられるか。

そういえば、彼らの不老不死の能力の謎を解明し、模倣してやろうというアプローチが、アメコミ的な要素といえるかもしれない。

『インクレディブル・ハルク』だったか『X-MEN』だったか思い出せないが、超人を捕まえては実験データを集め、その能力を自分のものにしてやろうという行動を、人は良くとる(大抵失敗するけど)。

今回もそういう路線の展開といえるだろう。ただ、ユニークなのは、オールドガードの面々は、この不死身の能力を別に欲していないことだ。

愛するものや家族が老いて死んでいく中で、自分だけが何百年も生き続けなければいけないことに、それぞれ思い悩んでいるのである。

『オールド・ガード』予告編 - Netflix

レビュー(ここからネタバレ)

軸となる二つの話

何百年にもわたって戦い続けるアンディは、それでも平和の訪れない現代を嘆き、自分たちの努力は無意味ではないかと悩む。

彼らを罠にかけたコプリーを探すオールドガードたちは、二つの出来事に直面する。

まずは、久しぶりに新たな不死身メンバーが誕生したこと。アフガニスタンで衛生兵として従軍するナイル(キキ・レイン)は、瀕死の状態からすぐ無傷に回復し、周囲に気味悪がられる。アンディは彼女をスパルタ方式で強引に仲間に引き入れる。

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もう一つは、メリック製薬のCEOが、富と名声、ついでに人類の幸福のために、彼らから不死身のデータを解読しようと捕獲作戦に出ること。

これにより、仲間のうち二人が捕獲され、実験材料となってしまう。

何も知らないナイルが仲間に加わったことで、我々もいろいろと彼らについて学ぶことができる。

例えば、彼らにも寿命はあり、いつか傷が治らなくなる日が来る。そして、不死身の彼らは火あぶりなら平気だが、捕縛は怖い。

仲間の一人クイン(ベロニカ・グゥ)は、棺のままもう五百年も水中に沈められたままなのだ。おーっ、これは地獄の苦しみだぞ。不死身になるのも考えものだ。

(C)Netflix. All Rights Reserved.

さあ、救出に乗り込もう

そして、捕らわれの仲間を救出に、アンディとナイル、ブッカー(マティアス・スーナールツ)はメリック製薬に乗り込むという展開。

部隊のメンバーは男3:女2の計5名だが、人数が少ない割に、先に捕らわれた2名は今一つキャラが立っていない気がする。

二人はゲイで付き合っているのだが、あまり本筋には関係なく、この設定は正直ねらいが不明だ。

また、あまりに自然な展開なので、あとで思い出し納得するシーンもいくつかある。

例えば、ドラッグストアで傷の手当て用の医薬品を買い求めるアンディ。つまり、彼女はもう傷が治らなくなってきているということ。

それから、ロシア語が分かるかとメリックの前でナイルに尋ねるアンディ。これは、序盤の機上バトルと同様に死んだふりしてろ、つまりCEOと飛び降りろということ。

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残念な点をひとつ。アンディたちが長年やってきたことは決して無駄ではなく、オールドガードが救った人々の中から、名もなき活動家やノーベル賞受賞者等、平和活動に貢献する市民が多数生まれていることを、コプリーは調査して突き止めていた。

これは、彼らオールドガードが報われるいい発見なのだが、そんなネタを、壁に貼った報道写真と赤ペンだけで表現して終わりにしてしまうのは、ちょっと安易ではないかと。

いい材料なのだから、もう少し予算かけて、話を膨らませればいいのに。

アメコミ的に考えると、ラストの意外な人物の登場は、次回作への含みだろうか。

オールド・ガード | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
何世紀もの間、ひそかに人類を守ってきた4人の不死身の兵士たち。だが、その特殊能力を知った謎の組織が、私利私欲のために彼らを狙い始める。