『検察側の罪人』
原田眞人監督が雫井脩介の同名原作を映画化。主演の検事はキムタクとニノという豪華な布陣。
公開:2018年 時間:123分
製作国:日本
スタッフ
監督: 原田眞人
原作: 雫井脩介
『検察側の罪人』
キャスト
最上毅: 木村拓哉
沖野啓一郎: 二宮和也
橘沙穂: 吉高由里子
丹野和樹: 平岳大
松倉重生: 酒向芳
諏訪部利成: 松重豊
運び屋の女: 芦名星
弓岡嗣郎: 大倉孝二
小田島誠司: 八嶋智人
青戸公成: 谷田歩
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
都内で発生した犯人不明の殺人事件を担当することになった、東京地検刑事部のエリート検事・最上(木村拓哉)と、駆け出しの検事・沖野(二宮和也)。
やがて、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の容疑者だった松倉(酒向芳)という男の存在が浮上し、最上は松倉を執拗に追い詰めていく。
最上を師と仰ぐ沖野も取り調べに力を入れるが、松倉は否認を続け、手ごたえがない。沖野は次第に、最上が松倉を犯人に仕立て上げようとしているのではないかと、最上の方針に疑問を抱き始める。

今更レビュー(ネタバレあり)
警察学校以前にあった教場
雫井脩介の同名原作を原田眞人監督が映画化したことで、作品にはハリウッド仕込みのゴージャス感が加わる。
東京地検刑事部の切れ者検事の最上に木村拓哉、駆け出しの青臭い検事・沖野に二宮和也という豪華な座組み。
冒頭、教室に集められた沖野ら研修生たちを相手に厳しく検察の何たるかを講義する最上、まるで『教場』の原型のような場面だ。法律という切れ味鋭い武器をもって、どう戦うかを語り、教え子を送り出す最上。
そして4年後、沖野が最上のもとに配属されたとき、ある老夫婦殺しの容疑者として松倉(酒向芳)という男の存在が浮上する。この男は、かつて最上が学生時代に親しかった寮母の娘を殺したうえ、否認を続け時効まで逃げ切った人物だった。
最上は秘密裡に、松倉を新たな事件の犯人に仕立て上げ、極刑に処するよう画策する。何も知らされずに最上の指示に従い取り調べを進める沖野だが、やがて事務官の橘沙穂(吉高由里子)とともに、最上の動向に不信感を抱き始める。
原作のツボをとらえたテンポのよい展開。説明的にはなっていない脚本だが、要所は押さえており、混乱はなく、特に最上が暴走し始める前あたりまでは、結構面白く観られる。
木村クン相手に二宮不利なり
ただ、なぜかこの映画は世間的な評価は今一つ伸び悩んでいるように思う。これは私の想像だが、ニノのファンの評価が厳しかったのではないか。
演技には定評のあるキムタクとニノだが、こうして師弟関係で並ばれると、どうしても木村拓哉がおいしいところを持っていくし、ダークヒーロー的な役柄もまた、魅力的に見えてしまう。
◇
一方ニノが演じる沖野は徒手空拳で正義を貫く若造検事だ。やはり人柄や人当たりの良さは隠せず、終盤最上とガチンコでぶつかり合うまでの関係性にもなれずに終わる。ファンとしては不甲斐なく見えるのかもしれない。
沖野が松倉の取り調べ中にブチ切れて怒声を浴びせるシーンはたしかに迫力はあるが、あれはさすがに不自然で嘘くさい。訴えられれば負けるレベルだ。
吉高由里子が演じる事務官の沙穂は、原作よりもかなり出しゃばったキャラになっており、存在感がある。
逆にいうと、本来は沖野の見せ場であるべきところを、彼女に譲ってしまっているように感じた。それもあって、沖野のキャラは原作よりも控えめに見える。
酒向芳と松重豊の冴え
木村拓哉が検事を演じるとなれば『HERO』が当然頭をよぎる。
しかも、闇社会の取引に関わるブローカーの諏訪部(松重豊)や、終盤に登場する人権擁護派の国選弁護士小田島(八嶋智人)、容疑者のひとりである弓岡(大倉孝二)といった『HERO』仲間も顔を出す。
だが木村が演じているのは、およそドラマの時とはかけ離れた検事であり、松重もまた逆方向に振り切った悪党なのが面白い。
最上のポチになることを厭わない闇ブローカー諏訪部の手の動き、お茶の水博士みたいな髪型の松倉(酒向芳の怪演!)が「ンパッ!」と発する破裂音、悪ぶってるけど間抜けっぽい弓岡(大倉孝二)の憐れな末路。脇を固める悪役助演陣の演技が光る。
善玉では、検事から政治家になるも、悪を暴き追い詰められ自死する丹野議員(平岳大)が渋い。
そのほか、最上のギャベル(木槌)コレクションやら、殺された女子中学生の歌う”Cry Me a River”、謎の泣き女たちの舞踊などは、原田監督の独自演出として効果的だったと思う。
特に、沖野との取り調べ中に時効になった事件の犯行を自白した松倉が、”Cry Me a River”を口ずさむ場面は凄い。別室でそれを盗聴していた最上が、耐え切れずに外に出たのはアドリブだというが、それだけのインパクトがあった。
倉庫みたいな小田島弁護士事務所や、ヤクザ(音尾琢真)が子分を虐める廃ボーリング場など、謎の舞台設定も雰囲気があってよい。

映画オリジナルの部分
一方で、最上の祖父がインパール作戦に従事し白骨街道を彷徨っていたという設定と、自殺した丹野議員がつかんだ太平洋戦争正当化を企むネタというのが本題にうまく絡んでいなかったと感じた。
最上がやたら「〇月〇日生まれは誰々と誰々で、性格は…」と林家ぺーみたいで似合わない。これらのオリジナルネタはあまり機能していなかったのでは。
後半、最上の暴走が止まらなくなっていく様子は、映像でみると原作以上に「そんな無茶はありえないだろう」という感じになる。まあ、それは仕方ないか。
松倉の無罪が決まり祝賀パーティに人権擁護派の大物弁護士(山﨑努)が登場する。『クライマーズ・ハイ』のおかげで、原田監督作品の中の山﨑努は悪徳エロオヤジにしかみえない。
正義のためとはいえ、最上の悪事は最後にはすべてが明るみになって破滅するべきなのだろうが、映画が沖野の叫びで終わるというのは、原作よりも腹オチ感がなかった。
キムタクが拳銃撃って腰抜かしたり吐いたりするのは斬新だったけど。ニノを説得する素振りがちょっと古畑任三郎になっていて、『スマスマ』を懐かしんだ。
