『アントマン』 MCU一気通貫レビューvol.12:娘の親権も奪われた前科者のヒーローに世界は救えるのか

スポンサーリンク

『アントマン』 Ant-Man

ついに前科者ヒーロー誕生。ダウンサイジングでこんなにアクションの幅が広がるとは想定外。だが本作がMCUに新たな魅力をもたらしたのは、サイズよりも量子力学の世界なのかも。

公開:2015 年  時間:117分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        ペイトン・リード
脚本:        エドガー・ライト

キャスト 
スコット・ラング/アントマン:
            ポール・ラッド
ホープ・ヴァン・ダイン:
       エヴァンジェリン・リリー
ハンク・ピム:   マイケル・ダグラス
ダレン・クロス/イエロージャケット:
           コリー・ストール
ルイス:      マイケル・ペーニャ
カート: デヴィッド・ダストマルチャン
デイヴ:       ティップ・ハリス
サム・ウィルソン/ファルコン:
         アンソニー・マッキー
キャシー・ラング:
    アビー・ライダー・フォートソン
マギー・ラング:   ジュディ・グリア
ジム・パクストン:ボビー・カナヴェイル

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

(C)Marvel 2015

あらすじ

仕事もクビになり、養育費が払えないため最愛の娘にも会えないスコット・ラング(ポール・ラッド)

そんな崖っぷちのスコットに、謎の男ハンク・ピム(マイケル・ダグラス)から意外な仕事のオファーが届く。それは、体長わずか1.5センチになることができる特殊スーツを着用し、「アントマン」になるというものだった。

選択の余地がないスコットは渋々ながらもアントマンとなり、人生をやり直すための戦いに乗り出す。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ヒーローは前科者

蟻のように小さくなる、この新たなヒーローがMCUの仲間に加わることは、面白いアイデアに思えた。

ただ、人気は出そうにはない。だって、子供たちがアベンジャーズごっこをしたときに、アントマンになりたがる子はいないだろう。戦いに参加しにくいし。お前はチビだから、といって押し付けられるのが関の山だ。

そもそも、ヒーローになる主人公スコット・ラング(ポール・ラッド)が、刑期を終え出所するところから物語が始まるのは、万事考え抜いているマーベルにしては、あまりに型破りな設定。たとえ義賊的な犯行だったとしても、だ。

首に懸賞金がかかっている『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスター・ロードよりも、前科者は印象が悪い。おまけに、仲間に引きこむのが、常習窃盗犯の連中なのだ。

離婚して養育費の払いも苦しいが、自分を慕ってくれる愛娘・キャシー(アビー・ライダー・フォートソン)の存在が大きい。彼女のおかげで、スコットの印象は、ぎりぎり善人の立ち位置で踏ん張れている。

(C)Marvel 2015

意外と楽しめるダウンサイジングでの戦い

映画としては、意外と楽しめた。身体のサイズが変わることで、こんなに面白味にバリエーションが出るとは思わなかった。

いろいろな種類の蟻の大群を統制して敵地に侵入したり攻撃したりするスタイルは、『X―MEN』で金属を自由に操るマグニートのようだ(蟻攻撃は、本作以降は使用していない気もするが)。

また、機関車トーマスをはじめ、身近の品が巨大化してしまうバカらしさとキッチュさは、『ゴーストバスターズ』のマシュマロマンを思い出させる。

冒頭の1989年のS.H.I.E.L.D.に、トニー・スタークの父ハワードや、キャプテン・アメリカの恋人ペギー・カーターら一昔前の世代の連中と口論しているピム博士。

マイケル・ダグラスは渋みもほど良く、なかなか良い配役だ。新たなヒーローを生み出す布陣に、S.H.I.E.L.D.を敵対視している設定を採り入れるとは斬新だ。

中盤ではアントマンがアベンジャーズの施設に侵入し、なんとファルコンと対戦までするサービスぶり。ヒーローたちに本格的な亀裂が入る次作の予兆なのか。

スポンサーリンク

誘蛾灯につかまるヴィラン

本作のヴィラン、イエロージャケットとなる、ピム博士の元助手だったダレン・クロス(コリー・ストール)ハイテクカンパニーのCEOで、ヒーローを作り出した技術を模倣し同じ能力で攻めてくる敵というのは、MCUの典型パターン。

ただ、幼い娘を人質にとる卑劣さが目新しいのか、見飽きた感じはしない。走行する列車の上でのバトルもアクションものの定番だが、機関車トーマスの玩具の車両の上となると、新鮮ですらある。

アントマンもイエロージャケットも、デザインとしてはやや野暮ったい印象。円谷プロでも売れなかったB級ヒーローを感じさせる。ラストに登場するワスプの衣装の方が、洗練度は高い。

それにしても、<蟻>と<蜂>で来るとは面白い。そういえば、手塚治虫に『ミクロイドS』っていうアニメがあったな。

キャスティングについて

スコット・ラング役のポール・ラッドは、コメディ映画出演の多い俳優で、本作もMCUにおいて、コメディリリーフ的な作品になっている。

ピム博士の娘で頭脳も戦闘力も優れたホープにはエヴァンジェリン・リリー。海外ドラマ『LOST』の準主役だったのが懐かしい。

スコットの元妻マギーには『夜が明けるまで』ジュディ・グリア

だが、その再婚相手で警官のジム・パクストンのほうが、出番は多い。演じるボビー・カナヴェイルは、『マザーレス・ブルックリン』でも好演。

本作に使われる、サイズを自由に変えられるという発想は奇想天外だが、亜原子レベルまで小さくなって量子世界にまで話が及んでくると、MCUの中に、新たな広がりが生まれる。

ソーやガーディアンズたちが神話や宇宙レベルに拡大した世界観に、本作が量子力学、そして、やがてドクター・ストレンジが時間軸の概念を持ち込むのだ。なんとも奥が深い。

(C)Marvel 2015

かっぱらいが世界を救う!

さて、本作の監督にクレジットされるのはペイトン・リードだが、実は10年近く前からMCU初期作品と同時期の公開を目指して準備が進められていた。

中心にいたのは、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ワールズエンド 酔っぱらいが世界を救う!』で知られる、カルトなファンの多い、エドガー・ライトだ。

スタジオとの方向性の違いで途中降板してしまったのだが、彼のオリジナル脚本は、めちゃくちゃ出来が良かったと関係者の評価が高いらしい。

前作でのジョス・ウェドン監督同様、MCUの制約と口出しに嫌気がさす監督は何人もいるが、ライト監督のMCU作品はぜひ観たかった。

そう思っていたら、仲違い後は映画も観ていないと、絶交中のエドガー・ライトが、ついに6年ぶりに製作のケヴィン・ファイギと旧交を温めたという情報を数日前に知る。これは期待できるかも。いや、したい。