『シャン・チー/テン・リングスの伝説』 MCU一気通貫レビューvol.25:気分はネバーエンディング・ストーリーか<ヒックとドラゴン>か

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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』 
Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings

MCU初のアジア系主人公のカンフーアクション。いろいろな意味でこれまでの作品とは一線を画す。アイアンマン以来となるテン・リングスの登場。

公開:2021 年  時間:132分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:デスティン・ダニエル・クレットン

キャスト
シャン・チー:      シム・リウ
ケイティ:      オークワフィナ
シャーリン:    メンガー・チャン
シュー・ウェンウー: トニー・レオン
イン・リー:     ファラ・チャン
イン・ナン:     ミシェル・ヨー
レーザー・フィスト: 
       フロリアン・ムンテアヌ
デス・ディーラー:  アンディ・リー
ウォン:    ベネディクト・ウォン
トレヴァー・スラッタリー: 
         ベン・キングズレー
ジョン・ジョン:   ロニー・チェン

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

(C)Marvel Studios 2021

あらすじ

犯罪組織を率いる父に幼いころから厳しく鍛えられ、最強の存在に仕立て上げられたシャン・チー(シム・リウ)

しかし心根の優しい彼は自ら戦うことを禁じ、父ウェンウー(トニー・レオン)の後継者となる運命から逃げ出した。

過去と決別し、サンフランシスコで平凡なホテルマンのショーンとして暮らしていたシャン・チーだったが、伝説の腕輪を操って世界を脅かそうとする父の陰謀に巻き込まれたことから、封印していた力を解き放ち、戦いに身を投じる。

レビュー(まずはネタバレなし)

良くも悪くも、今までとは異質な作品

MCUとしては、『ブラック・ウィドウ』に続く作品だが、前作がコロナ禍で公開まで相当待たされた影響で、本作までの間隔が極めて短い。ついでに言えば、次作の『エターナルズ』も、すぐそこに控えている状況で、まるで通勤時間帯の列車ダイヤのような過密ぶりだ。

本作は公開直後の興行成績も良く、ロッテントマトの評価も悪くないというが、私の評価はちょっと辛い。MCU初のアフリカ系主人公を扱った『ブラックパンサー』の完成度を思えば、本作はちょっと傍流に行き過ぎてはいないか。

日本ではないもののMCU初のアジア系主人公ということで期待もしたが、ちょっとバイアスがきつすぎるように思った。

いや、美男美女ばかりでヒーロー映画の出演者を構成するのには無理があるし、ダイバーシティの観点から今回はアジア系でというのも方向性は正しい

でも、失礼な物言いになってしまうが、MCU作品群の中で、なぜ本作だけそれっぽくない俳優をメインの男女に据えているのだろう。これが欧米人のキャスティングだったら、こういう選び方ではなかったように思う。

余計なお世話だが、こんなに地味なメンバーで動員できるのか。

(C)Marvel Studios 2021

MCUの呪縛から解放させてあげたい

MCUのフェーズ4では、もはやアベンジャーズが勢ぞろいしてサノスを倒すような本流の物語は作りにくく、本作のように二ッチな領域を攻めていくのが基本スタイルになるのかもしれない。

これだけシリーズ作品を量産すれば、そのような路線変更は仕方がないのだろう。だったら、少なくともシャン・チーのデビュー戦となる本作では、テン・リングスの話だけで盛り上げればよかった

無理やりにウォンやアボミネーション、マンダリン(ベン・キングズレー)などマニアックな面々を本筋とあまり関係なく参加させて、MCU繋がりを事前告知などで強調することはないのだ。

初期の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のように、MCUの存在など無視したって、面白い作品は十分撮れるのではないか。

まずはサンフランシスコでバス内バトル

物語は、数千年前から始まる。無敵の力を授ける腕輪テン・リングスを手に入れた男シュー・ウェンウー(トニー・レオン)が、不死の命を手に入れ、犯罪組織テン・リングスを率いて、絶対的な権力者として勢力を拡大する。

その彼が戦って唯一勝てなかった相手が、ター・ロー村を守るイン・リー(ファラ・チャン)。やがて二人は恋に落ち、シャン・チーと、妹のシャーリンが生まれる。

20年以上が経過し、なぜかショーンと名乗り素性を隠すシャン・チー(シム・リウ)は、サンフランシスコのホテルで親友のケイティ(オークワフィナ)と共にホテルの駐車係として勤めている。

二人が乗っていたバスの中で、突如シャン・チーの持つ母の形見のペンダントを奪いに来る謎の集団。いきなり襲撃され、封印していた戦闘能力を解き放ち、カンフーで応戦するシャン・チー。

(C)Marvel Studios 2021

敵のヘッドは、片腕がソードになっているレーザー・フィスト(フロリアン・ムンテアヌ)バスの車内バトルはなかなかの迫力だし、ケイティがドラテクを活かしてバスの暴走を必死でくいとめるカーアクションもよい。

序盤の切れ味はよく、期待値があがる。サンフランシスコの坂道を活用したカーアクションは『アントマン&ワスプ』で見飽きた感もあり、他の町が舞台でも良かった気はするが、まあ、それは良い。

結局ペンダントは奪われ、シャン・チーはもう一つの宝石の持ち主である、妹シャーリンの暮らすマカオへと向かう。

(C)Marvel Studios 2021

マカオでは金網デスマッチかと思いきや

マカオでは連日ナイトクラブの闘技場で賭けファイトが行われ、シャン・チーも参戦せざるを得ない流れになる。
見回せば、MCUファンなら気づいてニンマリしそうなキャラがあちこちのリングで戦っている。

この金網デスマッチのような光景は、MCUでは『マイティ・ソー バトルロイヤル』、もっと前なら『XMEN』のウルヴァリンの登場時にも登場しており、既視感がある。

ここでシャン・チーは妹シャーリン(メンガー・チャン)と再会するが、バスを襲った連中に再び襲われ、高層ビルの壁面(足場)で戦う羽目になる。竹を縛って組み立てた足場が高層まで伸びている舞台設定が、いかにもアジアっぽく、このバトルも見応えがある。

本作は無論カンフーアクション映画ではないが、ここまでの対決ではMCUっぽい特撮味付けはあまり目立たず、カンフーの動きを重視したものになっていた。

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これは本シリーズにおいては新鮮だった。言い換えれば、あまりMCUらしくはない。

例えば、バスの中で次々と敵を倒すシーンは韓国映画の『悪女/AKUJO』のようにクールだったし、建物に張り付く足場が崩れる中でのアクションは、本物感には負けるものの『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』のようでもあった。

この作品はMCUらしさを捨てれば、もっと面白い作品になれたように思う。

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

ネバーエンディング・ストーリーかよ

本作は後半になり、シュー・ウェンウーがテン・リングスの犯罪集団を率いて、愛妻の故郷ター・ロー村に襲い掛かるようになってから、話がグタグタになる

これはむりやりにMCUのSFファンタジー要素を取り込んだせいでもある気がする。

父は、死んだはずの妻が助けを呼ぶ声が聞こえるといい、村を攻める。自分たちを殺人兵器に育てた父を恨むシャン・チーとシャーリンはケイティとともに、村を守る。

不思議な力により、世間からその所在を隠蔽している謎の村、住民たちはみな、腕に自信ありの兵士揃い。

それって、まるで『ブラックパンサー』のワカンダ国ではないか。そこに参戦する片腕が武器のレーザー・フィストは、ウィンターソルジャーのまがい物に見えてしまうぞ。

違いがあるとすれば、そこに生息する竜や麒麟や唐獅子といった伝説の生き物たち。この世界観はどうみても懐かしの『ネバーエンディング・ストーリー』のそれである。

いや、若い世代は知らないか。じゃあ、アニメだけど『ヒックとドラゴン』なら、どうだ。敵とも戦う、このパペット自体は頼もしく可愛らしいが、顔のない鳥には感情移入できず失敗キャラに思える。

(C)Marvel Studios 2021

せっかくのトニー・レオンなのに

個人的には、ついにMCUに参画で期待していたトニー・レオンが、権力と武器はあっても、あんなドン・キホーテのようなアホ父になってしまっているのが、情けないやら悲しいやら。

思えば『グランド・マスター』でイップ・マンを演じた彼がいて、そばには『グリーン・デスティニー』ミシェル・ヨーまでいて、しかも舞うような武闘シーンまで用意している。

それなのに、この二人がまるで印象に残らない特撮バトルになってしまったのは、残念だ。確かに父が持つテン・リングスの、武器としての威力はよく分かった。だが、それで勝ててしまうのならカンフー要素は不要だ。

(C)Marvel Studios 2021

劇中でもケイティがいうように、『ドラゴンボール』のかめはめ波に似すぎてもいる。

本作でのトニー・レオンは、『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』で内村光良がモノマネしそうな芝居に終始している。ああ、善悪は問わないから、もっと吹っ切れた役を彼に与えてほしかった。

愚痴っぽい話が続いてしまった。本作は物語の前後に、シャン・チーとケイティが友人と酒を飲んでいるシーンが挟まる。これまでの経緯を酒の席の会話で語らせることで説明してしまうのは、低予算作品ならともかく、MCUにしては随分安易に思えた。

ウォンが出演するのは嬉しいが、火花を散らす<どこでもドア>スタイルの登場はもう見飽きた。

彼らが最後にカラオケで歌うのが<ホテル・カリフォルニア>。これはきっと、トニー・レオンの初期の代表作『恋する惑星』で何度も流れた曲<夢のカリフォルニア>を意識したんだろうな。