『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
Guardians of the Galaxy
コミックではベテランでも、知名度は恐ろしく低いメンバーが結集して、のびのびと暴れまくるのは、意外と楽しい! 笑って泣ける好バランスのヒーローアクション。
公開:2014 年 時間:122分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジェームズ・ガン
キャスト
ピーター・クイル: クリス・プラット
ガモーラ: ゾーイ・サルダナ
ドラックス: デイヴ・バウティスタ
ロケット:ブラッドリー・クーパー(声)
グルート: ヴィン・ディーゼル(声)
ヨンドゥ: マイケル・ルーカー
イラニ・ラエル: グレン・クローズ
ロナン: リー・ペイス
ネビュラ: カレン・ギラン
コラス: ジャイモン・フンスー
コレクター: ベニチオ・デル・トロ
サノス: ジョシュ・ブローリン
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
自らをスター・ロードと名乗り、いい加減な性格でプレイボーイなトレジャーハンターのピーター・クイルは、ある日、惑星モラグの廃墟で謎の球体オーブを見つけ、盗み出すことに成功する。
しかし、そのオーブは銀河を滅亡させるほどの力を宿したパワーストーンで、暗躍する闇の存在が探し求めていたものだった。
オーブを狙う者たちに追われ、凶悪犯だけが収容されるという銀河一危険な収容所に入れられてしまったピーターは、そこで一緒になったロケット、グルート、ガモーラ、ドラックスと協力して脱獄。
たまたま利害関係が一致しただけで信頼関係もない五人は、内輪もめを繰り返しながら逃亡を続けるが、そんな彼らに闇の存在の魔の手が迫る。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
二軍選手ばかりではないのか
MCUに全く毛色の違う新作品が加わったことは、当時驚きだった。
思えば、MCU第1弾はアイアンマンという、マーベル所属メンバーの中ではクリーンアップを打ちそうにない選手が大抜擢された。
そして本作で、ピーター・クイルと共に戦うことになるこのメンバーたち。実は全員マーベルの歴史の中では50年近いキャリアを持つベテラン揃いなのだが、知名度となると恐ろしく低い。
まるで二軍選手が急遽引き上げられメジャーの試合にベンチ入りしたようなものだ。
だが、そんな彼らを結集し暴れさせてみたら、こんなに楽しくて躍動感のある作品ができあがるとは。だから、映画というのは面白い。ジェームズ・ガン監督、大した才能である。
◇
MCUとはいいながらも、本作ではアベンジャーズとの繋がりはまだ少ない。
サノス(ジョシュ・ブローリン)がちょっと顔を出したり、インフィニティ・ストーンを奪い合ったり。
『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のラストに出てきたコレクター(ベニチオ・デル・トロ)が登場するくらいだろうか。
◇
世界観も違うので、そもそもアベンジャーズと合流するとは当時思っていなかった。
だが、この繋がりの少なさのおかげで、ガーディアンズたちは、MCU映画のお作法に縛られず、のびのびと、或いは少し脱力系に、本作の中で活躍できている。それが大きな魅力に見えるのだ。
◇
母と死に別れ、ヨンドゥに攫われて育ったピーターがスター・ロードとして成長。オーブの奪い合いでガモーラと争い、懸賞金稼ぎのロケットとグルートのコンビに狙われ、刑務所でドラックスと出会う。
そしてオーブをめぐる利害が一致し、クセ者揃いの連中は、チームを組むことになる。ここまで実にいいテンポで進む。
ガーディアンズの個性派たち
まずはピーター・クイル(クリス・プラット)。死んだ母にもらった、オレンジ色のイヤーパッドが懐かしい初期型ウォークマンで聞く懐メロの数々。
これでダンスバトルよろしく踊って悦に入る彼が何とも面白いが、このダンスは終盤の決戦でも役に立つのだ。
とはいえ、勝負の際にダンスで相手の気をそらすとは、MCUにあるまじき行為。策略も身体の動きも『今日から俺は‼』の三橋のようである。
実質こっちが主役にも思える、外見はアライグマのロケット(声はブラッドリー・クーパー)。見た目はかわいいが、言動はドギツイという点で、『テッド』のぬいぐるみのクマに通じる。
銃火器を持たせたら、荒っぽいことこの上ない。元は人間だが子の姿に遺伝子改造された哀しい過去も背負う。
◇
彼の毒舌を聞いているだけでも楽しいが、その相棒である木のヒューマノイド(植物人間ではない)のグルート、こいつのキャラ設定が最高。
心優しいピノキオのようで、戦闘力も滅法高い。そして一貫して ” I am Groot “ としか喋らないのに、感情がきちんと伝わるヴィン・ディーゼルの声優魂。
◇
そして、はじめは敵としてピーターの持つオーブを追っていたガモーラ、演じるゾーイ・サルダナは『アバター』のヒロインだったが、今回の方が顔はきちんと出ているかも(色は青から緑へ)。
サノスに両親を殺され、養女となるが、ピーターたちに仲間入りする。
一方、サノスの側に残り、ロナンに仕える義妹のネビュラ(カレン・ギラン)はサイボーグである。この姉妹と養父サノスとの近親憎悪の関係は、後続作で詳細に明かされる。
◇
そして、刑務所にいた灰色の大男ドラックス(デイヴ・バウティスタ)は、妻や子供たちを虐殺されたロナンに復讐を誓い、ピーターらと手を組む。怪力で頼もしいが、やりとりがどこかズレているのが持ち味。
こうして列挙すると、メンバーはみな、心に大きな傷を持ちながら、気丈に軽口をたたいて戦っているのだと改めて気づく。
その他のメンバーも意外と光っている
ピーターをさらって育て上げたヨンドゥは、宇宙海賊ラヴェジャーズの統率者。強欲だし、矢のような武器を口笛で自在に操る彼も滅法強いのだが、どこかとぼけたところがあり、憎めない男。
演じるマイケル・ルーカーは『スーパー!』や『スリザー』でもジェームズ・ガン監督と組んでいる。
◇
さて、ガーディアンズから離れると、ヴィランであるロナンが攻撃を仕掛ける惑星ザンダーを自治するノバ帝国の軍警察。
このリーダーであるイラニ・ラエルがグレン・クローズ。『ヒルビリー・エレジー』の祖母役の変わり様には驚いたが、本作では彼女らしい役柄。
軍警察の戦闘機がガーディアンズと組んで敵と交戦したり、女性リーダー軍を統率していたりと、どこか『スターウォーズ』の反乱軍の戦いを思わせる。これも、今までのMCUには見られなかった戦いの風景だ。
ロナンも結構魅力あるヴィランだったよ
そして最後はヴィランのロナン・ジ・アキューザー(リー・ペイス)。
残虐な悪党であり、感情移入もできないのだが、なんとロナンは、入手したオーブがパワーストーンであることに気づき、サノスに渡さず自分のものにしてしまうのだ!
歴代ヴィランの中で、サノスに真っ向から歯向かった骨のあるヤツは他にいないのではないか。
◇
その意味では、ロナンはドラックスの家族を殺した過去に触れたり、ピーターのトリックに引っかかったりと、一応キャラの肉付けがされている。
本作までのMCU作品で、魅力のあったヴィランはロキとウィンター・ソルジャーくらいだが、どちらも今やアベンジャーズ側だ。
なので、ロナンは純然たる悪役としては、なかなか貴重なキャラだったのではないか、と思う。
この映画に泣かされるとは想定外
そして、ノリの良さと脱力感だけで突き進むと思われた本作には、なんと、涙なくしては観られないシーンがあった。
グルートが長い枝を伸ばして包囲し、仲間全員をロナンの攻撃から保護して息絶えてしまうのだ。それも、最後だけは I am ではなく、“ We are Groot.” という言葉を残して。
MCU作品には、何人か戦死したヒーローたちもいるが、みな、焦らしに焦らす。ここまで潔く死んでしまうケースは稀有だろう。あのロケットが哀しみに暮れている様子を見ると、こちらも泣けてくる。
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とはいえ、すぐに陽気さを取り戻すのが本作の良い所か。グルートは死んでしまったけれど、その種子がまた実を結ぶのだ。ああ、ベビー・グルートの成長が待ち遠しい。