『アントマン&ワスプ』
Ant-Man and the Wasp
重苦しく終わった『インフィニティウォー』に続くのは、気軽に楽しめるアントマンの第二作。主人公より強くて賢い、サイドキックのワスプがついに本格参戦。
公開:2018 年 時間:118分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ペイトン・リード
キャスト
スコット・ラング/ アントマン:
ポール・ラッド
ホープ・ヴァン・ダイン/ ワスプ:
エヴァンジェリン・リリー
ハンク・ピム:
マイケル・ダグラス
ジャネット・ヴァン・ダイン:
ミシェル・ファイファー
エイヴァ・スター/ ゴースト:
ハナ・ジョン=カーメン
ビル・フォスター:
ローレンス・フィッシュバーン
ソニー・バーチ:
ウォルトン・ゴギンズ
ジミー・ウー:
ランドール・パーク
ルイス: マイケル・ペーニャ
キャシー・ラング:
アビー・ライダー・フォートソン
マギー・ラング: ジュディ・グリア
ジム・パクストン:
ボビー・カナヴェイル
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
元泥棒でバツイチのヒーロー、アントマンことスコット・ラングは、2年前にアベンジャーズの戦いに参加したことがきっかけで、いまはFBIの監視下に置かれ、自宅軟禁の日々を送っていた。
あと3日でFBIの監視から解放されるという日、スコットの前に、アントマンのスーツの開発者であるハンク・ピム博士と、博士の娘のホープ・ヴァン・ダインが現れ、二人が極秘に進めていたある計画に協力するよう要請される。
そんな彼らの前に、ピム博士の研究技術を狙い、壁をすり抜ける謎の敵ゴーストが現れる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
ライト感覚だが意外とよく出来ている
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃的なラストで虚脱感から未だ立ち直れなかったあの頃、そのあとに続く作品がアントマンの第二弾だったのは、意外だった。
ずっしりと重く難解な作品の直後には、気分転換にライト感覚なコミックリリーフ。マーベルも芸が細かい。
軽めといったが、『アントマン』シリーズは、笑いも多く取り入れている一方で、内容的には結構しっかり作られていて、決して侮れない。
◇
アベンジャーズでは傍流とはいえ、量子レベルの世界をMCUにリンクさせたことで世界観に深みが出ているし、何より、サイズが変わるという能力だけでこんなにバトルが面白くなる、という魅力は本作でも健在。
冒頭、スコット・ラング (ポール・ラッド)が一人娘のキャシー(アビー・ライダー・フォートソン)と自宅にこしらえた段ボール製アトラクションで遊んでいる。これが手作り感満載ながら超本格的で感動もの。キャシーは前作から健やかに成長している。
しかし、スコットは相変わらず冴えない。犯罪者として出所するシーンで登場したのが前作だが、今回は『シビル・ウォー』でキャプテン側に加担したことで、ソコビア協定違反で逮捕、目下自宅軟禁中なのである。いつも貧乏くじを引くタイプだ。
勝手にアントマンのスーツを拝借して参戦したらしく、ピム父娘には敬遠され、そもそも接触もFBIから禁止されている状況。つまり、本作は、シビル・ウォーからインフィニティ―・ウォーの間の出来事というわけだ。
ワスプの登場で色褪せる本家
今回、物語の中心はワスプだといえる。ホープ(エヴァンジェリン・リリー)は二代目ワスプとして序盤から、サイズ変更を駆使してアクションに大活躍である。
本作のタイトルでもあるアントマンとワスプは、コンビではあるが単体ではおそらくワスプの方が戦闘能力も高いし頭も切れる。そうなると、同じような特徴のヒーローが二人必要なのかと思ってしまう。
ぶっちゃけ、ワスプが登場したことで、アントマンの存在価値は希薄になった気がする。アベンジャーズの中でも、能力が被るキャラはトニー・スタークとローディだけで十分なのだ。
初代ワスプ、すなわちホープの母でピム博士(マイケル・ダグラス)の妻のジャネット(ミシェル・ファイファー)も、今回の重要人物だ。
ジャネットは、ホープが幼い頃に、ロケットの爆破を制するために犠牲になり、量子の世界に迷い込んでしまう。長年死んだものと思われていた彼女を、今回ついにみんなの力で救出するのである。
マシンの開発途上でスコットにジャネットが憑依し、彼がオネエっぽくなるところは、MCUでは珍しい演出だった。確かに、スコット以外のアベンジャーズには、ああいう演技は想像しにくい。
◇
終盤にようやく実現した、ジャネットとピム博士や娘のホープとの再会は感動すべきシーンなのだが、惜しいことに量子の世界というものの実感が湧きにくい。
なので、ピム博士が危険を冒して彼女を救出に行くシーンが、ありふれた宇宙空間での合成シーンにしか見えないのだ。
ヴィラン抜きでも映画は作れる
本作で特徴的なのは、これというヴィランが登場しないことではないか。サノスの息がかかった連中も、ヒドラの残党もいない。その意味では、MCUとの繋がりはソコビア協定違反くらいしかないのだ。
◇
一応、敵らしき存在はいる。ゴーストと呼ばれる壁抜け女のエイヴァ(ハナ・ジョン=カーメン)だ。真っ白なスターロードのマスクのようなものを被っていて、なかなか手強い。
ただ、彼女は、かつてのピム博士の部下だった亡父の研究の事故の犠牲となり、物体をすり抜ける存在となってしまったのだ。慢性的な強い痛みが、彼女を攻撃的にしているという、相当に情状酌量の余地がある人物といえる。
彼女を支えるピム博士の宿敵ビル・フォスター(ローレンス・フィッシュバーン)もまた根っこは善良な研究者であり、つまり本作はMCUには珍しく、倒すべき悪党がいない作品となっている。
◇
その物足りなさを緩和してくれる愛すべきキャラが、ズッコケ闇商人のソニー・バーチ(ウォルトン・ゴギンズ)や、スコットのよき犯罪仲間のルイス(マイケル・ペーニャ)一派、そして『ワンダヴィジョン』でも大活躍のFBI捜査官ジミー・ウー(ランドール・パーク)あたりだろうか。
ジミーはまじめにマヌケな会話をするところがいい味。
サイズ変更アクションの醍醐味
サイズを変更するアイテムも面白みが増した。ミニカーといえば日本ならトミカだが、ここ米国ではマテル社のホットウィール。
このミニカーをボックスから出しては巨大化させて、カーチェイスの最中もサイズ変更を繰り返して敵を撃退。こんなカーアクションは、他では見られない。
キティちゃんのペッツ巨大化は前回の機関車トーマスなみに笑えた(あれは人間が縮小したのか)。ラボの建物を小型化してキャリーケースにしちゃうのも、結構好き。
てなわけで、本筋と関係ない小ネタアクションで結構楽しい気になる作品。しかも舞台はサンフランシスコのロンバードストリートをはじめ美しい坂道やフィッシャーマンズワーフなど、ご当地ムービーのような一面もある。
さすがに、巨大化したアントマンを海の中に立たせると、われらがウルトラマンの方が100倍かっこいいなあと思うけど。
◇
最後はジャネットも戻り、エイヴァも実体化して、ノートPCの前にミニカー停めてドライブシアターでめでたしめでたし、かと思ったら、まさかエンドクレジット後に、サノスの指パッチンとつながるとは予想外。
全編ゆるいトーンで進んだ本作のラストで、現実世界に引き戻されてしまった。