『ブラックパンサー』 MCU一気通貫レビューvol.18:ワカンダにこんなに強い王がいるなら、もっと早く出て来てほしい

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『ブラックパンサー』 
 Black Panther

アメコミ・ヒーロー映画の単独主人公が黒人初なら、アカデミー作品賞候補も初。おまけに興行成績も塗り替えるなど、初物尽くしの本作は見応えも十分。チャドウィック・ボーズマンよ、永遠に。

公開:2018 年  時間:134分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      ライアン・クーグラー
       
キャスト 
ティ・チャラ / ブラックパンサー:
      チャドウィック・ボーズマン
ウンジャダカ / キルモンガー:
       マイケル・B・ジョーダン
ナキア:       ルピタ・ニョンゴ
オコエ:        ダナイ・グリラ
シュリ:     レティーシャ・ライト
エヴェレット・ロス:
        マーティン・フリーマン
ユリシーズ・クロウ:アンディ・サーキス
ズリ:     フォレスト・ウィテカー
ウカビ:      ダニエル・カルーヤ
エムバク:   ウィンストン・デューク


勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)Marvel Studios 2017

あらすじ

絶大なパワーを秘めた鉱石「ヴィブラニウム」が産出するアフリカの国ワカンダは、その恩恵にあずかり目覚しい発展を遂げてきたが、ヴィブラニウムが悪用されることを防ぐため、代々の国王の下で世界各国にスパイを放ち、秘密を守り通してきた。

父の死去に伴い、新たな王として即位したティ・チャラは、ワカンダの秘密を狙う元秘密工作員の男エリック・キルモンガーが、武器商人のユリシーズ・クロウと組んで暗躍していることを知り、国を守るために、漆黒のスーツと鋭い爪を武器に戦うブラックパンサーとして戦う。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

黒人が主人公のアメコミ・ヒーロー映画

MCUにおいて、いやアメコミ・ヒーロー映画において初めて、黒人が単独で主人公を演じているメジャー作品ということで話題になったが、そこにしっかりと内容が伴い、優れた作品になっていることが嬉しい。

黒人観客を集める目的のブラックスプロイテーション映画ではない、世界に展開される超ド級メジャー、更には公開当時MCU史上最大の興行成績を叩きだし、アカデミー賞にはアメコミ・ヒーローものとして初めて作品賞にノミネートされている。

アベンジャーズに代表される、ヒーローが集まって戦う作品には、国籍や性別にダイバーシティの観点が採り入れられており、白人男性一辺倒のメンバー構成ではなくなっているが、どうしても主役の添え物扱いになる。

本作のように単独主人公として黒人男性が活躍したり、後に公開される『キャプテン・マーベル』のような女性主人公が出てくることは、実に心強い。

惜しまれるチャドウィックの早逝

(C)Marvel Studios 2017

主演のチャドウィック・ボーズマンは本作の成功で、まさにいろいろな作品での活躍が期待されようというところだったが、昨年43歳の若さで病気のため早逝してしまう。この突然のニュースは驚きであり、とても悲しく残念だ。

ライアン・クーグラー監督は『フルートベール駅で』から『クリード チャンプを継ぐ男』、本作と次々と才能を開花させ、『ブラックパンサー2』も監督を務める予定で期待大。

続編にはティ・チャラの代役もCGも使用しないとマーベルは公言しているようだが、ぜひ、チャドウィックへの敬意を感じる優れた作品に仕上げてほしい。

真面目な作りで原点復帰

さて、本作がこのような世間的な評価を受け、他人事ながら喜んでいるのは、この映画は真面目な姿勢で作られた秀作だからだ。ここ最近のMCU作品がおふざけ路線に走ってきたのを、堅物のティ・チャラが軌道修正してくれている。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で父である国王ティ・チャカの爆死以降あんなに絡みのあったアベンジャーズの面々とも、本作の中ではほとんど関与がない。作品としてはほぼ独立して成り立っているのもいい。

ワカンダ王国の王位継承の風習や各部族との確執など、各所にアフリカのカラーを残す(ステレオタイプなデフォルメにも思えるが)。

王位継承のためには、ブラックパンサーの力を封じて挑戦者との戦いに勝つべしという、単に血筋だけでは国王になれない設定が面白い。

一方でワカンダには「ヴィブラニウム」の恩恵による超ハイテク国家の顔も見せ、このハイブリッドな絵面がユニークだ。

リニアモーターカーが走る大未来都市のデザインはやや荒唐無稽な感じだったけれど、妹シュリ(レティーシャ・ライト)が開発したパワードスーツや各種ハイテクガジェットを披露するのは、007のお馴染み技術オタクな<Q>みたいで楽しい。

息の通ったヴィランの魅力

本作ではヴィランであるキルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)が息の通ったキャラになっており、全体を貫く物語に説得力がある。

冒頭のシーンで若き先代の国王が、オークランドで「ヴィブラニウム」の横流しを働く弟を殺す。町で遊ぶ小さな子が、国王の乘る戦闘機を見上げているのだが、この少年こそが、父の復讐に燃えるキルモンガーだと後に判明する。

更には、先代国王に殺された彼の父にも正義のための大義名分があったり、キルモンガーも王家の血筋として正当な王位継承権があったりと、単なる強欲で乱暴者のヴィランとは少々異なる。

『マイティ―・ソー』で王位継承をめぐりソーを逆恨みしたロキよりも同情の余地があり、『スパイダーマン:ホームカミング』で虐げられた復讐に走るバルチャーよりも、戦う動機に納得感がある。

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どうにも冴えないバトルアクション

本作で唯一最大の難点は、ブラックパンサーのバトルアクション、それもキルモンガーと戦う最大の見せ場シーンのつまらなさだと思う。

キルモンガーはティ・チャラを崖から突き落として戦いに勝ち新国王となったあと、新ブラックパンサーとなる。

この新旧対決なので、戦い方もパワーも、そしてデザインもほぼ同じ者同士の対決になるという、MCUでは定番の失敗例をここでも繰り返す。

物語の経緯から、今回の似た者対決は不可避と言えなくもないが、ビジュアル的にはイマイチ。二匹の黒ヒョウが暗いリニアモーターカーの軌道上で戦うのも動きが見づらいし、リアルな感じはない。

これなら、最強戦士オコエ(ダナイ・グリラ)が率いるスキンヘッドの女親衛隊のメンバーの戦いのほうが迫力があった。

ブラックパンサーのバトルアクションは、初見参の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の方がよほどスピード感と見応えがあった。CGキャラクターではそうそう盛り上がれるものではない。

もともとデザインと動きが東映戦隊ヒーローっぽいのが、ハリウッド水準から東京ドームシティのショーのような現実に変わってしまった感がある。

(C)Marvel Studios 2017

その他のキャラの話

途中までは敵側の中心的存在だったユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でもヴィブラニウム絡みの武器商人として登場。左腕はウルトロンに斬られたままだった。

一見手強そうなキャラだが、今回はなぜかあっさり仲間のキルモンガーに殺される。

CIAのエヴェレット・ロス(マーティン・フリーマン)『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』からの登場。

はじめはうるさいだけの諜報局の男かと思いきや、ナキア(ルピタ・ニョンゴ)を庇って負った傷をワカンダで治療されて以来、国外で唯一の理解者として仲間入りする。

彼が戦闘機で活躍するのはややゲームセンター的で盛り上がれなかったが、本作では貴重な白人キャラのサイドキック。

ズリは重要な役ではあったが、フォレスト・ウィテカーが演じるのなら、もう少し出番があってほしかった気もする。

国王とヒーロー…2つの顔をもつ男

「国王として守るか、ヒーローとして戦うか」 
本作で問われるテーマだ。

ワカンダの先進技術を他国から隠し、国民を守ることに専念してきた先代国王に天国喝を入れ、ティ・チャラは国の壁を越えて、広く人々のためにこの技術を提供することを宣言する。

それは同時に、自分も戦うという決意でもあるのだろう。

「農業国であるワカンダが、何を分かち合ってくれるというのですか」

先進国の上から目線の質問にも、新国王は大人な対応で微笑むだけだ。

そう、ラストシーンで少年に尋ねられても、ティ・チャラは自分については語らない。ヒーローが全員トニー・スタークのようなわけではないのだ。