『MaXXXine マキシーン』考察とネタバレ|マキシーンがやらねば誰がやる

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『MaXXXine マキシーン』
 MaXXXine

タイ・ウェスト監督がミア・ゴス主演で贈るホラー三部作、ついに完結。

公開:2025年 時間:103分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:         タイ・ウェスト


キャスト
マキシーン・ミンクス:   ミア・ゴス
ラバト探偵:    ケヴィン・ベーコン
ベンダー監督:  エリザベス・デビッキ
モリー・ベネット:  リリー・コリンズ
レオン店長:    モーゼス・サムニー
ナイト社長:ジャンカルロ・エスポジート
ウィリアムズ刑事: ミシェル・モナハン
トレス刑事:   ボビー・カナヴェイル

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

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あらすじ

テキサスで起きた凄惨な殺人事件の現場から、マキシーン(ミア・ゴス)がただひとり生き残ってから6年が過ぎた。

ポルノ女優として人気を獲得した彼女は、新作ホラー映画の主演の座をつかみハリウッドスターへの夢を実現させようとしていた。

その頃ハリウッドでは連続殺人鬼ナイト・ストーカーの凶行が連日ニュースで報道されており、マキシーンの周囲でも次々と女優仲間が殺されていく。

やがてマキシーンの前に、6年前の事件を知る何者かが近づく。

レビュー(ネタバレあり)

タイ・ウェスト監督とミア・ゴス主演による三部作は、『X エックス』『Pearl パール』に続く本作『MaXXXine マキシーン』でついに完結。

いかにもA24が好みそうな企画だが、振り返れば、やはりホラーとして新鮮味のあった一作目『X エックス』の完成度が高い。

そこから、老婆パールが若い頃にスターを目指す時代を描いた『Pearl パール』という不思議な前日譚が登場し、その作風から、三作目を撮らせてもらえるのか勝手に心配していたが、無事に完成。

今回は80年代のLAを舞台に、『X エックス』の惨劇から一人生き残ったポルノ女優マキシーン(ミア・ゴス)が、ホラー映画の主役に抜擢されるという展開が描かれる。

暗闇から扉が開き、主観ショットのカメラが外の光景を映し出すというオープニングカットは、面白いことに三部作全てに共通するんだな。

ポルノ女優としては有名になったマキシーンだが、普通の映画に出演したい。オーディションで迫真の演技を披露し、ついにホラー映画の主演を勝ち取る。

厳しい演技指導で知られる女性監督は、長身にスリム体型のいい女で、出演者より余程女優っぽいぞ。と思ったら、『TENET』エリザベス・デビッキじゃないか。

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『セント・エルモスファイア』がヒットしている1985年のLA、町にはナイト・ストーカーと名乗るシリアルキラーが何人もの女性を殺害し、市民は恐怖に脅えていた。

この殺人鬼の模倣犯が路地裏でマキシーンを襲い、彼女が反撃するシーンは、男性なら目を背けたくなるグロい演出だ。

物語は、本物のナイト・ストーカーが、どのようにマキシーンに近づき、襲い掛かってくるかという流れになっていく。

若い男女が惨劇の館に泊まりこむ1作目はホラー映画と言えそうだが、二作目、三作目はちょっとジャンルが異なるようにも思う。もっとも、タイ・ウェスト監督が好みそうなゴア演出は随所に登場するが。

『X エックス』でマキシーンが生き延びた、テキサスポルノ惨殺事件。その内情を良く知っていそうな探偵が彼女の前に現れ、依頼人が会いたがっているという。

どうやら、その人物がナイト・ストーカーと思われるが、正体は明かされない。どちらかというと、私は依頼人よりもその個性の強い探偵を演じているのが誰かの方が気になってしまった。

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だって、ケヴィン・ベーコンだよ。彼が、このシリーズに登場するとは驚き。

そういえば、犯人を追う刑事二人組の女性刑事ミシェル・モナハンなんだけど、サングラスのせいで、彼女だって分かりにくいんだよねえ。

あと、もう一人、マキシーンが頼りにしている業界通の弁護士で事務所の社長にジャンカルロ・エスポジートコッポラ『メガロポリス』に出演し、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では主役を食う活躍だった。

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ハリウッドのショービジネスの華やかな世界の裏側には、この映画に出てくるような薄汚い世界があるのかもしれないけれど、三部作の完結編には、もっと過去作との結びつきがあることを期待した。

たしかに、マキシーンには、惨殺事件と老婆パールがトラウマになっているようだ(そりゃ無理もない)。

だが、それ以上にサプライズ的なものがあるとすれば、ナイト・ストーカーの正体と犯行動機くらいしか思い当たらず、またそれが期待に応えるものかといわれると、肯定しにくい。

ここから更にネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。

さて、結局行きつくところは、マキシーンの過去を知る連続殺人犯ナイト・ストーカーの正体は誰なのよということになるのだが、これが彼女の父親というのが、はたして三部作のオチと納得できる結果なのか。

なるほど、ハリウッドの豪邸が並ぶ丘の上に、個人宅用のケーブルカーで上がっていった豪邸にマキシーンが侵入すると、幼少期の彼女の映像をみている父親がいるというのはショッキングだ。

だが、そのあとの悪魔祓いの儀式じみた展開は、なにか急ごしらえな感じがして、今ひとつ盛り上がらない。

誰でも知っている、丘の上に「HOLLYWOOD」と大文字焼のように大きな看板が並べられた場所で、刑事たちとの撃ち合いが始まる。

これだけ有名な景観を舞台にした映画となると、ラシュモア山の大統領の顔の上で戦ったヒッチコック『北北西に進路を取れ』以来かも、というと褒めすぎか。

「私らしくない人生は受け容れられない」

父の教えを忠実に守ったマキシーンは、最後に父親の頭をショットガンでぶち抜く。このグロさはクローネンバーグ監督の『スキャナーズ』を思い出させる。

そこから、まさかのハッピーエンドとは、驚いた。VHSビデオ全盛期の80年代を描いた作品に、当時を知る者は涙するのか。エンドロールまで見たら、巻き戻して返却してね。