『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
Guardians of the Galaxy Vol.2
あのガーディアンズのメンバーが帰ってきた。今回解き明かされるスターロードの生い立ちと、地球人ではない父の存在。おいしいところを独占の青い顔の男・ヨンドゥ。ベビー・グルートの成長に目を細めてしまう。
公開:2017 年 時間:136分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジェームズ・ガン
キャスト
ピーター・クイル: クリス・プラット
ガモーラ: ゾーイ・サルダナ
ドラックス: デイヴ・バウティスタ
ロケット:ブラッドリー・クーパー(声)
グルート: ヴィン・ディーゼル(声)
ネビュラ: カレン・ギラン
エゴ: カート・ラッセル
ヨンドゥ: マイケル・ルーカー
マンティス: ポム・クレメンティエフ
アイーシャ: エリザベス・デビッキ
スタカー: シルヴェスター・スタローン
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
スター・ロードを自称するいい加減なリーダー、ピーター・クイル(クリス・プラット)を筆頭にしたガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。
美しき暗殺者のガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、毒舌なアライグマのロケット、樹木型ヒューマノイドで25センチまで再生したグルート、そしてマッチョな破壊王ドラックス(デイヴ・バウティスタ)。
このガーディアンズの面々が、新たな危機に直面し、再び強大な敵と立ち向かうことになる様を描く。
◇
高慢な指導者アイーシャが率いる黄金の惑星で、小遣い稼ぎの仕事をこなしたガーディアンズ。しかし、ひょんなことからアイーシャ(エリザベス・デビッキ)を怒らせてしまい、追われる身に。
危機に陥った彼らの前に、ピーターの父親だという謎の男エゴ(カート・ラッセル)が現れる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
意外と複雑なストーリーの急展開
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編であり、前作で犠牲になったグルートがベビーに交代した以外は、変わらないメンバー編成。
いきなり、巨大なタコの怪物のような敵と戦うガーディアンズたちだが、その戦闘シーンをろくにカメラは捉えずに、かわりに音楽に身をくねらせるベビー・グルートを写す人を食った演出。いかにも本作らしい導入部分だ。
この怪物退治は、金ピカのソヴリン人からの請負仕事で、報酬に、捕らわれていたネビュラ(カレン・ギラン)を手に入れる。
ネビュラはガモーラの義妹だが、命を狙い合う間柄であり、今回も救出ではなく懸賞金目的のようだ。
だが、ロケットがソヴリンから電池を盗み出したことで、ピーターたちは総攻撃を受ける羽目になる。そして、ソヴリンの大船団の攻撃を一撃で阻止して、彼らを救い出すのが、ピーターの父を名乗るエゴという神のような力をもつ天界人なのだった。
◇
いや、前半のあまりに複雑で急ピッチなストーリー展開は、会話の余韻や小ネタの面白味を楽しむ余裕も与えてくれない。
これだけ魅力的なキャラクターを集め、しかもMCUの中では割合好き放題に暴れて良さそうな映画なのに、何とも窮屈だ。こんなに多くの要素を詰め込む必要があったか、というのが少し疑問である。
敵が多すぎて、意識が集中できない
冒頭の1980年、地球でのピーターの母と愛を語るシーンから、怪しさ抜群のエゴ。演じるは、なんとカート・ラッセル! 嬉しいではないか。ジョン・カーペンター監督と組んだ数々の愛すべきB級アクション、往年のダーク・ヒーローだ。
◇
今回のヴィランがエゴなのであれば、話をシンプルに持っていっても十分興奮できそうなのに、ソヴリン人を悪役にしたり、ヨンドゥ率いるラベンジャーズを内部分裂させて更に複雑化したりと、あちこちに敵がでてくる。
途中仲間入りしたように見えるネビュラだって、寝首を掻かれそうな危険キャラだ。どうにも敵が多すぎる。
◇
新登場キャラで勿体ないのはソヴリンの女王アイーシャのエリザベス・デビッキの起用法だと思う。
美形の民族という設定だが、全身金箔のゴールドフィンガー状態なので、素材の良さが伝わらない! ノーラン監督の『TENET』を観た時に、本作に彼女が出演していることは、全く思い出せなかった。
ラベンジャーズのリーダーでヨンドゥの親分格であるスタカーのシルヴェスター・スタローンも、カメオ出演のような短いシーンだったのは残念。
新キャラがもう一人。マンティス(ポム・クレメンティエフ)は共感能力のあるエイリアンというユニークな存在で、次回作以降にも活きてくるキャラ設定だ。ドラックスと妙に仲が良くなるのも面白かった。
父親がまともなヒーローはいないのか
エゴの正体は惑星そのものだったという説明も、俄かには受け容れ難い。
『スターウォーズ』に、惑星と思って着陸したら、怪物の腹の中だったというのがあったと記憶するが、本作はその逆を行く。そういえば、敵が父親だったのではなく、父親が敵だった、というのもSWの逆張りプロットだ。
◇
それにしても、MCUのヒーローたちの父親の思い出はつらいものばかりだ。アイアンマンとブラックパンサーの立派な父親は殺され、ナターシャ、ワンダ、スパイダーマンあたりも、みな両親がいないか、死別している。
ソーの父親が立派かどうかは、本作後に解明される。両親が立派で健在なのはアントマンの相棒・ワスプくらいで、あとは総じて話題にものぼらない。
◇
ガーディアンズのメンバーも同様だ。特に、ガモーラとネビュラは、実の親は殺されて、サノスが義父という悲惨さだ。
そしてピーターも、胡散臭い父親エゴに騙されそうになるが、母に意図的に腫瘍を植え付けて死に至らせた事実を知るや否や、躊躇いなく銃を向ける。ここは単純明快で本作らしいシーンになっていると思う。
いいところを独り占めのブルーマン
だが、意外なことに、本作の見せ場、というか主役を食う存在だったのは、前作の敵役であったヨンドゥ(マイケル・ルーカー)なのである。
一撃必殺のヤカの矢で、ラベンジャーズの裏切り者たちを次々と倒していく姿に見惚れる。
◇
地球で母を亡くしたばかりのピーター少年をかっさらい、ラベンジャーズの裏稼業に酷使してきた悪党のように描かれてきたヨンドゥ。
だが、実はエゴが各地で産ませた子供を回収しては惑星の拡張につぎ込むという悪事を知り、ピーターを匿っていたのだ。最後には、自らの命を宇宙空間に投げ出して、ピーターを救うヨンドゥ。カッコよすぎる。
◇
つまりは、ピーターの父親代わりはヨンドゥなのだ。生みの親より、育ての親。本作は、そういう浪花節的な物語といえる。いつの間にか、ガーディアンズの面々にも、「俺たちは家族だ」的なノリが増えてきたし。
だったら、尚更、単純なストーリーにしてくれた方が、似合ったのではないか。まあ、ロケットの毒舌とグルートの天真爛漫な行動を観ているだけでも、楽しめるからいいのだけれど。