『SRサイタマノラッパー/2 女子ラッパー傷だらけのライム/ロードサイドの逃亡者』一気レビュー

『SR サイタマノラッパー』
『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

公開:2012 年  時間:110分  
製作国:日本
 

スタッフ 
監督・脚本:  入江悠
キャスト
MC MIGHTY:   奥野瑛太
MC IKKU:   駒木根隆介
MC TOM:    水澤紳吾
相沢一美:   斉藤めぐみ
MC 林道:    北村昭博
等々力辰彦:  永澤俊矢
山下紀夫:   ガンビーノ小林
高島紀代美:  美保純
MC 岸壁:   配島徹也
MC NO SOUND: 回鍋肉
MC NO SIGHT: smallest
MC NO VOICE: HI-KING aka TAKASE
DJ 眠り猫:  倉田大輔

勝手に評点:3.5
  (一見の価値はあり)

(C)2012「SR3」製作委員会

あらすじ

仲間と別れ東京に出たMIGHTY(奥野瑛太)は、ヒップホップグループ「極悪鳥」に入れてもらおうと努めるが、苦渋を味わった挙句に怒りを爆発させてメンバーの一人に大怪我を負わせてしまう。

栃木へ逃亡したMIGHTYは、盗難車の転売など違法行為で商売するグループの一員として働き始め、そのグループが開いた詐欺まがいの音楽イベントでかつての仲間のIKKU(駒木根隆介)とTOM(水澤紳吾)と再会するが…。

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一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ここでMIGHTYが登場するとは

北関東ラッパー三部作のラストを飾るのは栃木。この手のトリロジーで完結編が一番面白い例はけして多くない気がするが、本シリーズでは断然本作が良い。

一作目が原型を作ったとすれば、二作目で女子ラッパーに行き物語に広がりを見せた。というか釣り球でちょっと誘っておいて、最後は本作でストライクゾーンに力一杯投げ込んできた感じ。

何といっても、今回は主役がMIGHTY(奥野瑛太)だ。嬉しいではないか。一作目でビッグになりたくてSHO-GUNGから飛び出していったきりだったが、東京に出ても厳しい生活は続く。

(C)2012「SR3」製作委員会

彼が付いていったヒップホップグループ「極悪鳥」は人気者になったが、MIGHTYは二年経ってもパシリのまま。出場したMCバトルでついに決勝進出を果たすが、「お前、決勝では負けろ」と、ボスからの非情な指示。

結局彼は暴力沙汰を起こし、闇世界に墜ちていく。なかなか切ない展開なのだが、下積み時代でもラップの腕を磨いていたMIGHTYに泣ける。

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それに、本作はこのMCバトルをはじめ、登場するラッパーたちに本物が複数起用されていることから、正直言って、前作までとはラップの水準が全く違う。

いや、これは聴いていて気持ちいい。ずっとMCバトルが続いてほしいくらいのグルーヴ感。素人の耳にも、その違いはすぐに分かる。

後半に登場するレペゼン日光のグループ「征夷大将軍」見ざる聞かざる言わざるのサルラッパーたちも、見た目はコミカルだが、ラップは本物だ。

(C)2012「SR3」製作委員会

なかなか再会しない三人

さて、ダークサイドに堕ちたMIGHTYは栃木の盗難車転売組織でヤバい仕事を任され、音楽イベントに出場者を集めて参加費をまきあげる仕事を仕切ることになる。

ボスに「お前、音楽やってたんだって?踊って見せろよ」と言われ、MIGHTYが披露するキレキレのダンスがカッコいい。

「極悪鳥」も相当ワルそうだけど、MIGHTYが関わっている連中は更に怖そう。入江悠監督は、この辺の不穏な空気を伝えるのが当時からすでにうまい。

そして、ついにIKKU(駒木根隆介)TOM(水澤紳吾)が登場。すっかりコメディリリーフの役割を担っている。このイベントのために、のこのこサイタマからやってくる二人。

(C)2012「SR3」製作委員会

オーディションでワルそうな主催者連中にいじられ、キレるIKKUがラップで返すのがいい。そこに他の参加者も参入してきて、ああこれが言葉の力なのかと妙に感動する。

SHO-GUNGがライバルの征夷大将軍と、偉大なるタケダ先輩つながりで組むことになったり、ひょんなことから皿洗いのバイトをさせられたりと、IKKUたちのパートもなかなか面白い。

タケダ先輩、一作目で病死したきりかと思えば、二作目でも三作目でも、伝説のラッパーとして後輩たちをつなげていく存在だったなんて、思いもよらず。

(C)2012「SR3」製作委員会

読めなかったラスト

さて、このあと当然三人が再会して、SHO-GUNG再結成となるのかと思っていたら、そんな単純な話ではなかった。

バイオレンスはエスカレートし、MIGHTYは恋人の一美(斉藤めぐみ)のために殺人沙汰まで、しでかしてしまう。彼を追いかけるのは、「極悪鳥」のメンバーと、彼が所属するコワい連中、そして警察。おいおい、どうなるのよ。

そこにSHO-GUNGがイベントで披露する初ステージのラップまでまで絡んできて、先の読めない展開に。このあとの彼らの再会シーンは想像を大きく裏切るものだった。

それにしても、刑務所の面会シーンは映画やドラマに数あれど、ガラス越しにラップ対決するのは初めて観た。いやあ、SRのシリーズで最後に泣けるとは思わなかった。これは本作まできちんと観ておいてよかったです。