『ディスクロージャー・デイ』
Disclosure Day
スティーブン・スピルバーグ監督の新作。その日、真実が開示される。
公開:2026年 時間:145分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: スティーヴン・スピルバーグ
キャスト
マーガレット・フェアチャイルド:
エミリー・ブラント
ダニエル・ケルナー: ジョシュ・オコナー
ノア・スキャンロン: コリン・ファース
ジェーン: イヴ・ヒューソン
ヒューゴ: コールマン・ドミンゴ
ジャクソン: ワイアット・ラッセル
ボイド: ヘンリー・ロイド=ヒューズ
シスター・モーラ:エリザベス・マーヴェル
勝手に評点:★★★☆☆2.5(悪くはないけど)

コンテンツ
あらすじ
サイバーセキュリティの専門家であるダニエル・ケルナー(ジョシュ・オコナー)は、謎の組織ワーデックスから機密情報を盗み出す。
一方、カンザスシティのローカル局で気象予報士を務めるマーガレット・フェアチャイルド(エミリー・ブラント)は、突如として自身の身に起こった異変に戸惑っていた。
接点のないはずの二人は、謎めいた協力者ヒューゴ・ウェイクフィールド(コールマン・ドミンゴ)に導かれ、これまで数十年にわたり隠蔽されてきた、世界を揺るがす衝撃的な真実を知る。
その秘密を人類に開示しようとする彼らの前に、ノア・スキャンロン(コリン・ファース)率いるワーデックスが立ちはだかる。
レビュー(ネタバレあり)
未知でもE.T.でもない
「僕らは宇宙で唯一の存在なのか、あるいはそうでないのか?その問いは臨界点に達した。もし誰かが答えを知っているのなら、なぜ明かさないのか?」
スティーヴン・スピルバーグは宇宙人の存在を本気で信じ、だからこそ、これまでに何本ものSF映画を手掛けてきたのだろう。特に本作は、米国政府機関がひた隠しにする機密情報を命がけで世界中に開示しようとする者たちの物語である。
宇宙の彼方からエイリアンが襲来してきて地球に侵略をしかけてくるわけでもないし、ヒーローやロボットが活躍するわけでもない。その意味では、監督の代表作である『未知との遭遇』を彷彿とさせるプロットと言えるのではと期待が膨らんだ。

いや、でもこの新作は、あの傑作の系譜とはだいぶ違った作品だった。ちょっと落胆が大きい。映画ライターの評の中には、『未知との遭遇』や『E.T』を引き合いに出して、本作を激賞しているものも目に付く。それは本音なのだろうか。
リアルタイムで『未知との遭遇』に出会って宇宙人の映画に痺れ、単純な5音階の反復に鳥肌を立てて、ほんの一瞬だけ映る異星人のご尊顔に感動した者の一人として、私はこの作品には同じ興奮は得られなかった。
同作や『E.T』のように一般人や子供たちが主人公ではなく、当局の内部にいた天才エンジニアとTVの天気キャスターが機密情報を盗み出して、本来それを知るべき人たちに開示しようという話だ。
その意味では、宇宙人より、ジャーナリズムの話という方が近いのかもしれない。スピルバーグ作品でいえば、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の系譜なのかも。

印象的なのは宇宙人ではない
70~80年代の頃とは違い、特撮映像に世間の目が肥えすぎているという環境の違いもあるだろう。エイリアンの姿をチラ見せしたり、トウモロコシ畑の草木を円型になぎ倒したりしても、大したサプライズはない。
一方で、鹿や狐、鳥といった動物たちの動きはなぜか一目で作り物と分かる代物で、これなら『ジュラシックパーク』の恐竜のが余程リアルだ。ロズウェル事件まで遡って古い映像も出てくるが、それっぽいエージング技術ならJホラーの方が余程雰囲気づくりがうまい。
この作品で一番インパクトのある映像は、お天気キャスターのマーガレット(エミリー・ブラント)が生放送中に言葉ではなく不思議な音をたててメッセージを伝え出す場面だろう。ここは円谷特撮っぽくて良かった。
でも、そのあと彼女がいろいろな国の言葉を自在に喋り、相手の心の中も読めるようになるという展開は、目新しさに乏しい。そもそも、宇宙人と称するリリー・フランキーがお天気キャスターをやっていた『美しい星』(吉田大八監督)に衝撃度で負けている。

大和田伸也にしか見えないコリン・ファースが演じるノア・スキャンロンが率いている秘密組織のウォーデックス社。
そこから、宇宙人に関する膨大な映像資料を持ち逃げしたダニエル・ケルナー博士(ジョシュ・オコナー)が、特殊な能力に目覚めたマーガレットと出会い、ともに組織から逃亡する。
追う者と追われる者の関係性は分かりやすいが、この特殊能力やそれを覚醒させるアイテムなど、考えてもよく分からない部分も結構多い。
◇
アクションで見応えがあったのは、踏切で後続車に押し出されて列車にひきずられるクルマから脱出する場面だ。車両の上で戦ったり、クルマが衝突したりというアクションは珍しくないが、今回は新たなパターン。
米国映画でメインに登場するクルマがアルファロメオ・ジュリアだったのは意外だったが、このアクションで大破するのが残念。

全米にしか展開しないの?
さて、エミリー・ブラント演じるお天気キャスターの奇行と踏切アクションは良かったが、肝心の宇宙人の映像は、どうにも物足りない。
大量にあることはあるのだが、これを機密情報ではなく、ニュースの映像として流すことが、本作のクライマックスになっている。
でもそこには違和感や疑問点があり、まずはこんな映像をいきなりニュースで流されても、フェイク全盛の世の中で、TVの前で老若男女が釘付けになってそれを見続けてはくれないだろうということ。

それから、この映像がカンザスシティのローカル局からNY経由で全米に流れ、更には三大ネットワークにも広がっていくのだが、今時、なんで米国に閉じた話にしているのかが不思議。
アジアも欧州も殆ど相手にされていない(BBCがちょっと映るくらい)。北朝鮮との関係がキナ臭くなり、みんな世界滅亡を恐れて避難し始めるという描写があったが、これも取ってつけたような話で薄っぺらい。
◇
さすがに最後にはきちんとした形で宇宙人が登場する。あえてチープな感じにしているのだと思う。『未知との遭遇』や『E.T.』との親和性を狙ったのだろうか。
でも、この二つの傑作は、宇宙人の姿はもっとチープだったのに、登場したときに鳥肌もんの感動が得られたんだけどなあ。
