『キングスマン・ゴールデンサークル』一気通貫レビュー②

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『キングスマン ゴールデン・サークル』
Kingsman:The Golden Circle

今回はケンタッキー州の同盟組織<ステイツマン>が登場。英国紳士と投げ縄ガンマンの共闘で、人類を救えるか。

公開:2018 年  時間:141分  
製作国:イギリス
  

スタッフ 
監督:       マシュー・ヴォーン
キャスト
エグジー:     タロン・エガートン
ハリー:       コリン・ファース
マーリン:     マーク・ストロング
ポピー:      ジュリアン・ムーア
ウイスキー:     ペドロ・パスカル
テキーラ:    チャニング・テイタム
シャンパン:    ジェフ・ブリッジス
ジンジャー:       ハル・ベリー
チャーリー: エドワード・ホルクロフト
ティルデ王女:  ハンナ・アルストロム
クララ:    ポピー・デルヴィーニュ
米国大統領: ブルース・グリーンウッド
フォックス補佐官: エミリー・ワトソン
ロキシー:    ソフィー・クックソン
アーサー:     マイケル・ガンボン
エルトン・ジョン:        本人

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

あらすじ

キングスマンの拠点が、謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けて壊滅した。残されたのは、一流エージェントに成長したエグジー(タロン・エガートン)と教官兼メカ担当のマーリン(マーク・ストロング)のみ。

二人は同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるが、彼らは英国文化に強い影響を受けたキングスマンとは正反対の、コテコテにアメリカンなチームだった。

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今更レビュー(ネタバレあり)

成長譚がなくなって、間が持たない

マシュー・ヴォーン監督最大のスマッシュヒットとなった前作『キングスマン』は、これまでのスパイアクションとは一味違う斬新な面白さがあった

暴力的表現に加え、やり過ぎ感やバカバカしさもあったりはするのだが、どこかモンティ・パイソン的なシニカルな魅力もあり、なかなか憎めない作品だった。

二匹目のドジョウねらいの本作はどうか。前作にみられたサイケデリックな雰囲気やグロテスクな映像は控えめになったか。率直にいって、調子に乗り過ぎて前作の良さを見失っている気はする。

映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」予告A

考えてみれば、前作は主人公・エグジー(タロン・エガートン)が亡き父の同僚ハリー(コリン・ファース)に鍛えられ、キングスマンの一員として活躍するまでの成長譚であった。

エグジーの目線を通じて、キングスマンの組織の実態やメンバーの英国紳士的な振る舞いと数々のガジェット、そして厳しい選抜競争を生き残っていく過程が面白かったわけだが、本作では当然ながら、それらはスキップされる。

つまり、前作ではサミュエル・L・ジャクソン扮する敵キャラとの戦いとエグジーの成長の二本柱で観客を牽引できたが、今回は麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボス・ポピー(ジュリアン・ムーア)との戦いのみで140分を持たせなければならない。これは結構キツイ。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

今回もまた幹部全員壊滅状態

前半の展開を振り返ってみると、いきなり登場しエグジーに襲い掛かるのは、前作でキングスマンの選抜メンバー候補だったが敵となり死んだはずのチャーリー(エドワード・ホルクロフト)片腕が機械仕掛けの義手になっているのは、マーベル映画っぽい。

前作でエグジーが世界を救った際に、チャーリーの脳内で起爆するはずのチップまで破壊してしまったため、まだ生きているらしい。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

彼がゴールデン・サークルの配下となり、女ボスのポピーはキングスマン全幹部にミサイル攻撃を仕掛ける。生き残ったのはエグジーと、事務員と誤認されたマーリン(マーク・ストロング)のみ。

エグジーは前作で救出した縁でスウェーデンのティルデ王女(ハンナ・アルストロムと交際しており、宮廷で会食中で命拾い。それにしても、前回に引き続き総攻撃で壊滅状態になるキングスマン。強いのか弱いのか、よう分からん。

アーサー親分(マイケル・ガンボン)はともかく、前回大活躍の女エージェント・ロキシー(ソフィー・クックソン)まで瞬殺されてしまうのは、ちょっと勿体ない

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アメリカ野郎のステイツマン

エグジーとマーリンだけでは、さすがに戦力不足で反撃できないと、彼らが行きつくのは、指令に従って開けた金庫に入っていたケンタッキー・ウィスキーのラベルにあった<ステイツマン>。そしてケンタッキー州で、キングスマンの兄弟組織のようなステイツマンのメンバーと出会うのである。

スーツに長傘で英国かぶれのキングスマンと、野球と投げ縄で米国かぶれのステイツマン。酒の席の冗談のような発想に悪ノリ全開。そして驚いたことに、彼らは記憶喪失となっているハリー(コリン・ファース)を施設内に匿っているのである。

前作で頭部を撃たれ殺されたはずのハリーを、特殊なジェルで脳を保護し救出したらしい。チャーリーの生存のみならず、もはや、何でもありの世界になっている。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ハリーを水槽で溺れさせたり、犬を撃ったりの前回ネタで何とか記憶を回復させようとするくだりは面白くはあるが、ちょっと複雑な心境。

確かに、コリン・ファースが再登場したことで、『ステイツマン』に傾きかけていた映画が『キングスマン』に戻った気はする。

でも、彼は前作であまりに唐突に射殺されて退場したからこそ観客にサプライズを与え、またエグジーを成長させることができたのだ。ここにきて、生き返らせなくてもよかったのではないか。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

豪華出演者の無駄遣い

結局、前からその傾向はあったが、本シリーズは出演者のビッグネームに依存しすぎている。

それでも、前作のマイケル・ケインサミュエル・L・ジャクソンなどは、まだ彼らの個性を生かした役柄だったので意味はあったと思うが、本作はあまりに無駄に豪華なキャスティングが目に余る。

ポピーのジュリアン・ムーアは無駄遣いではあるが、一応ラスボスなので大物女優でもよいとして、ステイツマンの親玉シャンパンのジェフ・ブリッジス、若造テキーラのチャニング・テイタム、女性スタッフ・ジンジャーのハル・ベリー、更には大統領の首席補佐官のエミリー・ワトソンなどは何と勿体ない起用法。飼い殺しにもほどがある

そうかと思えば、本人役で張り切っているエルトン・ジョンまでいたりして、作品は混沌とした状態にある。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

コリン・ファースは好きな俳優だけど

本作はハリー役のコリン・ファースを再び舞台にあげたことで、作品を迷走させているようにも思う。

まず、喪失した記憶を取り戻すが、なかなか本調子には戻らず、戦闘中も蝶の幻視がちらつくという設定。せっかくハリーの見せ場に思えた、「マナーが人を作る」といって酒場の扉を施錠して悪党を懲らしめるお約束のシーンでも、とんだ醜態をさらすことになる。

結局、ここはステイツマンのウイスキー(ペドロ・パスカル)の活躍の場になった。ハリーが復調するまでは、戦闘シーンもずっこけばかりで、全てコメディタッチになってしまう。

一方で、ハリーが本調子に戻ったら自陣が強すぎてしまうので、映画的なバランスから、マーリンは地雷の犠牲になって犬死する羽目になった。もしエグジーと二人だけの戦いなら、マーリンにはもっと活躍の場があっただろう。

ステイツマンのウイスキーも同様だ。ハリーがいなければ、彼も<実は敵だった>的な設定にはならずに、最後までキングスマンと共闘できたに違いない。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

次回作に期待かなあ

麻薬密売組織のゴールデン・サークルのポピーは、米国大統領(ブルース・グリーンウッド)に麻薬を合法化するように要求し、拒否すれば麻薬に仕込んでいた毒物で数億人の人間が死ぬと脅迫する。

大統領は要求を飲むふりで、麻薬中毒者と密売組織を一掃しようと企む。どっちが悪者だか分からなくなってくる話に、かつて恋人を麻薬中毒患者に殺され、麻薬を憎むウイスキーも参戦してくるので、荒唐無稽なスパイアクションの割に、話が複雑になっていく。

ストーリーはともかく、キングスマンの魅力であるガジェット類の新ネタが乏しかったのも残念。

今回印象的だったのは、ウイスキーの電磁投げ縄と、ポピーの飼っていた二匹の獰猛なロボット犬(ついでにミンチ機も)、あとはチャーリーの機械義手といったところ。ちょっと寂しいなあ。

次回作は前日譚だそうだが、挽回に期待したい。