『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)
『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
Raiders of the Lost Ark
インディ・ジョーンズの記念すべき第1作。スピルバーグとルーカスの夢のカップリング。
公開:1981 年 時間:115分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: スティーヴン・スピルバーグ 脚本: ローレンス・カスダン 製作総指揮: ジョージ・ルーカス ハワード・G・カザンジャン キャスト インディ・ジョーンズ:ハリソン・フォード マリオン・レイヴンウッド:カレン・アレン ルネ・ベロック: ポール・フリーマン アーノルド・エルンスト・トート: ロナルド・レイシー サラー: ジョン・リス=デイヴィス ヘルマン・ディートリッヒ: ヴォルフ・カーラー マーカス・ブロディ副学部長: デンホルム・エリオット サティポ: アルフレッド・モリーナ
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
ポイント
- 記念すべきシリーズ第1作。40年を越えて改めて観ると、あまりに能天気な冒険活劇にやや鼻白む点は否めないものの、面白さは色褪せない。ライド・アトラクションのような娯楽作品。ハリソン・フォード、若いぜ。
あらすじ
1936年。考古学教授インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)にはトレジャー・ハンターとしての顔があった。
ある日彼は政府から、手にした者が巨大な力を得るという古代の秘宝“アーク”を、ナチスに渡る前に探してほしいと依頼される。
手がかりを求め高名なアーク研究家に会いにネパールに渡った彼は、研究家宅でナチスに襲われる。研究家の娘で元恋人でもあるマリオン(カレン・アレン)と共に危機を脱したインディは、アークを探しエジプトでの大冒険に乗り出す。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
冒険アクションの王道
ハリソン・フォードが、シリーズ最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』で最後のインディの勇姿を見せてくれる。これは急いでシリーズの総復習をしなければ。
というわけでまずは記念すべきシリーズ第1作、『レイダース 失われた《聖櫃》』。まだ、インディの名を冠していないタイトル。邦題よりも原題”Raiders of the Lost Ark(失われた聖櫃の盗掘者)”の方が、言いやすく分かりやすい。
スピルバーグとルーカスが組むという、夢のような企画であり、ジェームズ・ボンドを古代ロマンの冒険の世界に連れてきたような、冒険アクションの王道のような作品。
考古学者で冒険家のインディアナ・ジョーンズが秘宝を求めて世界中を飛び回りながら冒険を繰り広げる。主演は勿論、ハリソン・フォード。
本作公開の前年には『スターウォーズ・帝国の逆襲』(1980)のハン・ソロ役、翌年には『ブレードランナ―』(1982)のデッカード捜査官、そしてハン・ソロとインディの続編が1983~1984年と続き、『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985)。
いずれ劣らぬ傑作揃い。ハリソン・フォードがノリにノッてる6年間だった。
冒頭10分で元が取れる面白さ
本作はアドベンチャー・アクションの興奮と、古代遺跡のロマン、それに不屈のヒーローの活劇の面白味が適度なコメディタッチで描かれている。
冒頭、パラマウントのお馴染みの山影がそのまま南米の山に変わり、遺跡に侵入し数々の罠を見破って金のお宝を盗み出そうとするインディ。
序盤の挨拶代わりのアクションが、すでにテーマパークのアトラクションのような興奮で、大玉転がしのような巨大な岩から逃げるところまで、息もつかせぬ面白さ。冒頭10分で観賞チケットの元がとれた気分だ。
『007』シリーズ的な面白さを追求しただけあって、キャラクターの設定もどこか似ている。
インディがボンドだとすれば、男勝りなボンドガールにマリオン(カレン・アレン)。ヒロインの亡き父が物語の鍵を握るというのも、よくあるパターン。
実戦には参加しない、所属組織のボスといった立ち位置のマーカス・ブロディ副学部長(デンホルム・エリオット)。
実戦で手を貸してくれる、CIAエージェントのような役割のサラー(ジョン・リス=デイヴィス)。ここまでは味方陣営。ちなみに、サラーは新作にも登場するとか。
敵陣は、何かとすぐに現れては手柄を奪っていく同業者のルネ・ベロック(ポール・フリーマン)、そしてナチスの古参党員の桂文珍ことトート(ロナルド・レイシー)。どちらも、ボンドの敵組織スペクターの幹部にいそうなキャラではある。
意外とコメディタッチな演出多し
何としてでもナチスより先に聖櫃を手に入れろとの依頼を受け、インディは聖櫃の争奪戦に臨む。
人海戦術で獲物を探すナチス陣営に対して、敵の知らない手がかりから情報戦でリードするインディたちの孤軍奮闘。ジョン・ウィリアムスの威勢のよいテーマ音楽が、エンタメ映画の王道感をさらに強めてくれる。
◇
今回、改めて観直すと、想像以上に笑いのポイントがあることに驚く。序盤のお宝を盗み出すシーンも、背中の毒グモから砂袋交換、大玉転がしまでレイダースよりドリフターズのようなコントっぽさ。
長い刀剣を振り回す剣術使い相手に、どんな対決が観られるかと思えば、インディが銃を発砲しすぐにケリがつく場面。確かハリソン・フォードが腹を壊したための苦肉の策だったと記憶するが、笑いの切れ味はいい。
マリオンを捕まえたナチスのトートが、どんな拷問で口を割らせるのかと思えば、おもむろに取り出したヌンチャクが、武器ではなく洋服ハンガーになる。このギャグセンスは好きだなあ。
そしてアークが開かれる
本作のクライマックスは、奪った聖櫃を開けたナチスの連中が、そこに現れたゴーストのようなものに、身体を溶かされてしまうシーン。
囚われのインディとマリオンは、目を閉じてそれを見なかったために、命拾いする。聖櫃の中身を見てはいけないことを、予め古代語の解読により、インディは知っていたのだ。
敵陣営がみな、顔をとろけさせて死んでいく様子はCGではなく、この時代ならではの手作り感があって面白い。
当時、エンタメ路線の金字塔ともいえる本作は高い評価を得ており、勿論私も異論はない。
だが、あえて言わせてもらうと、物語にあまり毒気がなく、後半に出てくるカーチェイスのアクションシーンあたりで、ちょっとダレる。個別にはよくできたカットなのだろうが、どんなご馳走も、単調に続けられるとやや飽きがくる。
本作の終わり方もやや不満だ。聖櫃の存在と顛末は、続編があるにしても一旦は本作でけじめをつけてほしかった。米国政府の巨大な倉庫に、そのまましまい込まれるラストで、もやもやしたまま数年待たされるのは、あまり好きではない。
とはいえ、公開後40年を経ても色褪せぬ興奮と面白さ。シリーズを振り返っても、完成度の高さは他の追随を許さない。さて、新作はオリジナルのこの面白味を、『トップガン・マーヴェリック』のように現代風にアレンジしにいくのだろうか。