『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』
Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull
インディ・ジョーンズ19年ぶりの続編。年齢こそ感じさせないアクションだが、今度は発掘するお宝の正体がどうにもなあ。
公開:2008 年 時間:122分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: スティーヴン・スピルバーグ 脚本: デヴィッド・コープ 製作総指揮: ジョージ・ルーカス キャスト インディ・ジョーンズ:ハリソン・フォード マット・ウィリアムズ:シャイア・ラブーフ マリオン・レイヴンウッド:カレン・アレン ジョージ・マクヘイル:レイ・ウィンストン ハロルド・オックスリー: ジョン・ハート チャールズ・スタンフォース: ジム・ブロードベント イリーナ・スパルコ: ケイト・ブランシェット アントニン・ドフチェンコ: イゴール・ジジキン
勝手に評点:
(悪くはないけど)
コンテンツ
ポイント
- 19年ぶりに続編作った意気込みは買うし、ハリソン・フォードもまだまだ元気に暴れているが、本作で唯一最大の問題は、クリスタルスカルの正体だろう。これはジャンル的には禁じ手に近い。
- スパイものの面白さを追求していたはずが、今回は随所にそれ以外の人気シリーズの影響を感じ取れる。シリーズでは最もトホホな作品。
あらすじ
共産主義者の疑いをかけられ、大学を追われたインディ(ハリソン・フォード)の前にマット(シャイア・ラブーフ)と名乗る青年が現れる。
彼はインディの旧友オックス(ジョン・ハート)と母親の行方を捜して欲しいと頼む。ふたりはオックスから届いた手紙に書かれた謎に挑み始めるが…。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
19年ぶりの続編
前作『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』から19年ぶりの続編である。更に15年ぶりに第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が公開されようとしている本年よりも、衝撃的な出来事だったかもしれない。
当時ハリソン・フォードは60歳代後半。まだまだ動ける年齢だ。両者通年で34年と考えると、『トップガン マーヴェリック』の前作から36年ぶりの続編というのは、いかに凄いことかと思う。
しかも、トム・クルーズは老いてなお、前人未到のスタントに自ら挑むし、映画も時代の変化をきちんととらえた作品になっていた。
さて、本作はどうか。賛否両論あったようだが、正直に言って、なんで19年ぶりの続編でこうなるのかという、素朴な疑問が多々湧き上がる。
本作で喜ばしいのは、久々に元気そうなジョーンズ教授に会えたこと。他に思い浮かばない。
序盤の展開までは良かったが
序盤戦はまだ良かった。1957年のネバダ州。“エリア51”の名で知られる米軍施設の機密物保管倉庫に拉致・連行されるインディと相棒のジョージ・マクヘイル(レイ・ウィンストン)。
敵は、ソ連軍の女性幹部イリーナ・スパルコ(ケイト・ブランシェット)率いる偽装アメリカ陸軍。
彼らはそこで「1947年にニューメキシコ州ロズウェルで起きた事件」で米軍が手に入れた、強い磁気を発する長方形の箱を探すよう、インディに強要する。その正体は、強い磁気で金属を引き寄せる謎のミイラだった。
広大な倉庫から、弾丸の火薬を散布して強い磁気の発信源を探しあてるプロセスや、仲間と思われたマックの寝返り、さらには、エリア51の倉庫でチラッと映る、シリーズ第1作で登場した『失われた聖櫃』。
このあたりまではシリーズ固有のわくわく感があったのだが、その後、核実験用につくられた無人の町にインディが逃げ込んで、冷蔵庫に入り込み間一髪で被ばくを逃れた展開から、どうも今までと勝手が違うように思い始める。
◇
この違和感は、遺跡や宝物を巡って冒険やバトルを繰り広げる古代ロマンとスパイ活劇が持ち味であるはずのインディ・ジョーンズが、核実験用の近代住宅に紛れ込んでしまうところから生じたものだと思う。
勿論、この無人の住宅街は、50年代後半の時代考証的にはおかしくないのだろうが、どうも馴染めない。
クリスタルスカルの正体(ネタバレ)
以下、いきなりネタバレに移ってしまうので未見の方はご留意いただきたい。
◇
本作でインディの新たなバディとなる若者マット・ウィリアムズ(シャイア・ラブーフ)とともに、KGBとの争奪戦を繰り広げる、クリスタル・スカルの正体。これには、圧倒的な違和感を覚えずにはいられない。
そもそも、クリスタルでできているのに磁性を帯びているとか、金まで引きつけるとか謎めいた部分の多いこのスカル。
<エリア51>とか<ロズウェル>とかのそれっぽいキーワードからもご推察の通り、なんと古代に地球に現れた異星人の頭蓋骨なのである。これにはがっかりした。
いや、まあ確かにナスカの地上絵も絡んでくるし、古代探究のロマンの果てに異星人が登場することにも、一定の説得力はある。
だが、やはり本シリーズに異星人を持ち出すのは、禁じ手としか思えない。だって、インディ・ジョーンズの目指すは古代ロマンとスパイアクションの融合だろう? そこにジャンルを無視してエイリアンを出しちゃいかんよ。
007やミッション・インポッシブルの敵組織が、どんなならずもの国家や荒唐無稽なテロ集団でもいいが、他の惑星から来たという設定は、おそらく暗黙のルール違反だ。
かつて発見された地球外生物の死骸が登場するが、スピルバーグ監督だけあって『E.T.』っぽさも漂うものの、異様に長い頭蓋骨の造形は、どうみてもギーガーのデザインによる『エイリアン』のそれである。
そこに加えて、本作で謎の解明のカギを握るハロルド・オックスリー教授を『エイリアン』で最初に食われた乗組員役のジョン・ハートが演じているものだから、もう脳内では両作品がコラボしてしまっている。
ハン・ソロなのかインディなのか
今回のインディの相棒マット・ウィリアムズを演じるのは、『トランスフォーマー』や『私というパズル』で知られるシャイア・ラブーフ。
そして、失踪した彼の母親というのが、1作目のヒロインだったマリオン・レイヴンウッド(カレン・アレン)なのである。彼女のシリーズ再起用を製作サイドは何度も画策していたようだが、ついに実現する。
ここまではよい。だが、マットが、結婚直前で別れたインディの、会ったことのない息子であるという設定は、さすがにご都合主義だ。
この設定によって、『エイリアン』のみならず、本作の製作総指揮のジョージ・ルーカスが生んだ『スターウォーズ』シリーズまで、本作に既視感を与えてしまっている。
前作でシニア、本作でジュニアを登場させたかったのは分かるが、自分の息子だ、父親だというサプライズ演出は、ダースベイダーで散々見飽きている。
『スターウォーズ』でハン・ソロの息子の正体が明かされるのは本作よりも後だが、そもそも父子の名乗りという展開をハリソン・フォードに絡ませた時点で、二番煎じ感は否めず。
ついでにいうと、森の中での壮大なバトルも、どこか『帝国の逆襲』っぽいし、インディに『I have a bad feeling about this(嫌な予感がする)』などと言わせていることから、この『スターウォーズ』寄せは確信犯的だ。
ショーン・コネリー不在で正解
インディ・ジョーンズとクリスタル・スカルの名を冠したアトラクション・ライドが東京ディズニーシーに存在するが、本作でスカルを巡って洞窟の中を探検するアクションは、まさにアトラクションっぽい。
奈落の滝壺に三回連続で落ちて行ったり、アトラクションの興奮を映画で味わえることを素直に喜べるのであれば、あなたは本作と相性がいいかもしれない。
ただ、長年続編を待ち焦がれた往年のファンであれば、異星人絡みの展開には異を唱えたくなったのではないか。こんなことなら、初めにチラ見せした聖櫃をもっと出してくれよとでも、言いたくなるだろう。
本作のオファーを受けたショーン・コネリーは、隠居生活から戻ろうとはしなかった。そのため、彼の演じたインディの父ヘンリー・ジョーンズは、没後の写真としてしか登場しない。
結果論だが、ショーン・コネリーが本作に出演しなかったのは正解だったと思う。彼ら父子の絆と軽妙な会話は、完成度の高い前作『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』だからこそ輝いた。
同じ扱いをこの作品で再現したら、コネリーが愛したヘンリー・ジョーンズという役がくすんでしまったに違いない。
◇
さあ、本作から更に15年。異星人の次には何を出そうというのか。若干不安はあるが、そこは手堅くまとめるのが得意なジェームズ・マンゴールド監督の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』に期待したい。