『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』
公開:2023年 時間:101分
製作国:日本
スタッフ
監督: 阪元裕吾
キャスト
杉本ちさと: 髙石あかり
深川まひろ: 伊澤彩織
神村ゆうり: 丞威
神村まこと: 濱田龍臣
赤木: 橋野純平
田坂守: 水石亜飛夢
宮内茉奈: 中井友望
須佐野: 飛永翼
向井さくら: 安倍乙
松本さん: 渡辺哲
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

あらすじ
組織からの依頼で殺しを請け負っている、ちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)の二人は、ジムの会費、保険のプラン変更など、日々のお金に頭を悩ませ、いつものように途方に暮れていた。
一方、殺し屋協会アルバイトの神村兄弟(丞威・濱田龍臣)もまた、金の悩みを抱えていた。
上からの指令ミスでバイト代はもらえず、正社員ではないため働いても満足した生活ができない。そんな現実を前に、お金が欲しい兄弟は、「ちさととまひろのポストを奪えば正規のクルーに昇格できる」という噂を聞きつける。
今更レビュー(ネタバレあり)
敵キャラと会話のキレがやや弱まった?
前作の勢いとノリがそのまんまの第2弾。コアなファン層を開拓したのだから、何の迷いもなくそのまま続編も突き進めばよいのだという、自信さえ感じさせる展開。そこはいいと思う。
ただ、前作で新鮮に思えたちさととまひろの脱力系な会話や日常が、楽しくもある一方で、すべっている部分も結構あるような。
◇
今回の対戦相手は、殺し屋協会への正規雇用を目指す、殺し屋兄弟の神村ゆうり(丞威)とまこと(濱田龍臣)。腕前はなかなかのレベルのようだが、ちょっと抜けてる部分も多い。

前作では本宮泰風演じる極道オヤジが、実態は特に強くもなかったのだが、怖そうな雰囲気だけは十分だったので、それに比べると今回の敵は威圧感に乏しい。
◇
ちさととまひろがスポーツジムの会費や保険料を2年間滞納して相当な金額になっていて、それを期限までに振り込むために銀行に行ったら強盗に遭遇する。

これは彼女たちがおカネに困る状況にもっていく必要からうまれた展開なのだろうが、脚本重視ではない映画だとしても、あまりに場当たり的で薄っぺらい気はした。
◇
一方で、彼女たちの指導係である須佐野(飛永翼)に加え、前作では出番が少なかった死体清掃係の田坂(水石亜飛夢)が更にアクの強いキャラに成長し登場し、その部下で毒舌の宮内茉奈(中井友望)まで追加投入。殺し屋組織の面々の層が厚くなったのは面白かった。

こんな夜更けに死体かよ
今回、一番ワケの分からない存在感を示したのが、商店街の福引を仕切っていたオヤジ(渡辺哲)だ。二人を相手に、『花束みたいな恋をした』の素晴らしさを熱弁する。
「菅田将暉がさ、仕事に忙殺されてパズドラしかできなくなっちゃうんだよね」などと、結構あの映画のキモの部分を押さえている。
若者かぶれしたこの老人が菅田将暉の「ビジュ爆発」と彼の着ていた「メゾンマルジェラ」の服について語ったのが強烈に印象に残ったのか、ちさととまひろは以降、そのフレーズを繰り返す。
二人が「花恋」の動画を家で観て、まるで二人の会話のように映画の台詞を復唱するシーンは笑。
このシリーズはちさととまひろの丁々発止の会話の面白さと、映画全体はゆるいのにアクションだけは本格派という意外性が魅力なのは前作同様。会話部分にはややマンネリ化が感じられたものの、アクションには前作以上に見応えがあった。
動物の着ぐるみを着たままでちさととまひろが取っ組み合いのバトルを始めたのにも驚いた。大きなかぶり物をしたまま、よくもあんなに激しく動けるものだ。
対戦中の二人の着ぐるみの中の顔をワイプで抜く処理とは面白い。『アイアンマン』にああいう演出なかったっけ。
プロの殺し屋とは思えない、あとの死体処理が大変な殺し方をするちさととまひろに、清掃班の田坂はいつも文句をいうわけだが、「こんな夜更けに死体かよ」と呟いたのは個人的に噴いた。
でも最後には、神村兄弟に殺されかけて九死に一生を得たその田坂が「あいつらグチャグチャにしちゃってください」とベビわるの二人に依頼する。ここは妙に感動的。
◇
クライマックスは勿論、殺し屋の正規雇用を賭けた(というのは兄弟の早合点なのだが)神村兄弟とベビわるの対決。ここは本作のセールスポイントだから、頑張っている。
敵キャラの描き方から、これ最後には勝敗はつくけどノーサイドで仲良くCIAOちゅ〜る(猫用オヤツね)を食して終わるものだと思っていたら、最後は意外にもハードボイルドだぜ。