1. 『最も危険な遊戯』(1978)
2. 『殺人遊戯』(1979)
3. 『処刑遊戯』(1979)
『殺人遊戯』
公開:1978年 時間:92分
製作国:日本
スタッフ 監督: 村川透 脚本: 播磨幸治、佐治乾 撮影: 仙元誠三 音楽: 大野雄二 キャスト 鳴海昌平: 松田優作 津山美沙子: 中島ゆたか 井筒文太: 阿藤海 勝田省一: 佐藤慶 江川: 佐藤蛾次郎 二宮: 桑原大輔 桜井昭子: 竹田かほり 花井万次: 草薙幸二郎 植木: 山西道広
勝手に評点:
(悪くはないけど)
あらすじ
ある暴力団の会長を射殺し、殺し屋・鳴海昌平(松田優作)が消息を絶ってから五年。当時の仕事を目撃されたが始末しなかった会長の秘書、美沙子(中島ゆたか)が銀座のクラブのママになったと知る。
そんな鳴海に美沙子のパトロンでもある大物・勝田(佐藤慶)は、かつての弟分だが関西系組織をバックに付け、勝田と対立している花井組の組長(草薙幸二郎)を殺すよう依頼。
それを引き受けた鳴海に、続いて花井も勝田を殺すよう接触してくる。
今更レビュー(ネタバレあり)
冒頭のハードボイルド感はよし
村川透監督と松田優作コンビの遊戯シリーズ第二弾。スタッフもキャストも基本は前作から大きく変わっていない。封切時の併映は『皮ジャン反抗族』(長谷部安春監督)と、のちに『あぶない刑事』のドラマを撮りまくった両巨頭の監督である。
本作も松田優作の身体能力と存在感と感性を頼りに、最後まで突っ走ろうという大胆な作品だが、シリーズのトップを飾った『最も危険な遊戯』の伝説的ともいえる警官隊との銃撃戦やヘリの空撮なんかに比べると、ややスケールダウンの感は否めない。
おまけに松田優作も村川透監督もアドリブが大好きなもんだから、前作以上に話は小ネタギャグ満載になっていく。三作目で軌道修正したのは好判断だったと思う。
◇
冒頭、タイトルが出るまでのマンションでのヒットマンの仕事完遂のシーンはいい。
エレベータで標的の娘と思しき女子高生(竹田かほり)に目撃されつつも、ミッションクリア。側にいた秘書の女・美沙子(中島ゆたか)は、いい女なものだから、つい殺さずに見逃してしまう。
仙元ブルーの夜明けの海に、大野雄二の曲が流れる。ここまでのハードボイルド感はよし。
五年後からはアドリブと笑いが急増
だが、五年が経過し、築地の町に戻ってくる鳴海。(今回の舞台は築地界隈。市場や橋は勿論、聖路加病院やら本願寺やら、全て近隣ですませている?)
彼を待ち続けた舎弟のような男・井筒文太(阿藤海)。彼も優作の映画では常連だが、ここまでの大きな役ではりきりすぎたか、とにかく演技はオーバーだ。鳴海が帰ってきて嬉しいのは分かるが、しつこく騒ぎすぎて、映画の雰囲気は完全コメディタッチに変貌する。
◇
鳴海が見逃した女・美沙子が暴力団・寿会のボス、勝田(佐藤慶)の情婦で銀座のクラブのママとなっている。鳴海が美沙子に近づくと登場する寿会の組員・江川(佐藤蛾次郎)が、完全にちびっこギャング的なコントスタイルなので、もはやどこまで真剣に観るべき映画なのか分からず、悩み始める。
勝田が会長を務める寿会は、弟分の花井(草薙幸二郎)が率いる花井組の台頭が面白くない。勝田は鳴海が伝説の殺し屋と見抜き、二千万円で花井を始末するよう依頼する。
一方、花井の方もそうとは知らず、鳴海を呼び出し、勝田を殺せと仕事を依頼する。まるで二重スパイのようになる鳴海だが、そこは先に依頼を受けた勝田を義理立てたか、花井組長を始末する。
「勝田を殺すのに武器はあるのか?」
そう花井に聞かれた鳴海がおもむろに銃をして見せるが、しまわずにそのまま銃口を向ける。組員たちはみな組長の部屋の外で待機しており、いとも簡単に組長を射殺。
そこからワンカットの長回しで、花井組の組員を次々に撃ち殺していく。筆頭は山西道広。松田優作と文学座で同期の山西は、共演ではいつも目立つ役なのだが、大抵殺されたり殴られたりで、不遇なことが多い。それにしても花井組、あまりに脇が甘く、これでは早晩殺されるのも仕方ない。
本作の仮題は『ゴキブリ用心棒 俺が裁く!!』だったという。採用されなくて良かったと思うが、鳴海と文太で立ち上げたツケの取り立て業者の名前が「ゴキブリ商事」なのはその名残らしい。
長回しで撃ち殺される組員もみな、死ぬ間際に手足をバタバタと痙攣させるのがあまりに不自然で、これもゴキブリを意識したのかと勘繰ってしまう。
いかにも佐藤慶らしい役柄
さて、まんまと花井を始末した鳴海だったが、「そんな殺しの依頼を私がするわけがない」とあとからしらを切る勝田。さすが、佐藤慶らしいキャラである。
当然カネなど払うわけもなく、文太を人質に取られ、勝田たちにボコボコにされる鳴海。復讐心がメラメラと燃え上がる。
当然の流れとして、ここから機会を窺う鳴海は、美沙子を従わせて寿会の本部に堂々と入り込み、ついには勝田に向け引き金をひく。
◇
それはいいが、花井組と同様に、寿会の組員たちも、長回しで全員撃ちまくり、壊滅させる。二重スパイまではわかるが、両方の組織を一人で壊滅させちゃうってのは、さすがにやり過ぎではないかと思う。まあ、優作ファンには、そんなこと気にならないだろうけど。
このあと、一人だけ残った美沙子が、鳴海に銃口を向けるが、弾丸はみんな外れて、最期は鳴海の手で葬られる。映画の冒頭で、美沙子の魅力に負けて殺さずに別れた鳴海だったが、自分でケリをつけることとなる。
おふざけが過ぎたか
松田優作は遊戯シリーズ以前に角川映画の『人間の証明』(1977、佐藤純彌監督)に出演しており、また本作の翌年には村川透監督と組んだ角川映画『蘇える金狼』(1979)が公開される。
そんなこともあってか、劇中では角川映画ネタが炸裂。本作公開の年からすると、『野生の証明』を派手に宣伝していた時期なのだろう。
劇中で鳴海が「これから『野生の証明』観に行く予定なんだけど」と言ってみたり、『Never give up』 とキャッチコピーを呟いてみたり、ラストでは、キャッチバーに流れる曲が町田義人の「戦士の休息」と、『野生の証明』大サービスである。これは楽屋ノリのおふざけが過ぎる。
◇
特に最後は、文字通り厄介な仕事を終えて、戦士の休息なのだろうが、ボケで終わるにしては、ダラダラ長すぎて締まらない。まあ、村川透監督と松田優作のタッグで、ここまでふざけた映画というのも、ある意味貴重かもしれないが。