『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』『処刑遊戯』考察とネタバレ !あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | ページ 3 | シネフィリー

『最も危険な遊戯/殺人遊戯/処刑遊戯』松田優作・遊戯シリーズ一気レビュー

1. 『最も危険な遊戯』(1978)
2. 『殺人遊戯』(1979)
3. 『処刑遊戯』(1979)

『処刑遊戯』 

公開:1979年  時間:100分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:     村川透
脚本:    丸山昇一
撮影:    仙元誠三
音楽:    大野雄二

キャスト
鳴海昌平:  松田優作
叶直子:   りりィ
岡島芳勝:  青木義朗
田山恵子:  森下愛子
藤田:    山本麟一
坂巻:    山西道広
大田原:   佐藤慶
井賀:    片桐竜次

勝手に評点:2.5
         (悪くはないけど)

あらすじ

一匹狼の殺し屋、鳴海昌平(松田優作)は、行きつけのバーで出会ったピアニストの直子(りりィ)と一夜をともにした直後、何者かにどこかへ連れ去られて監禁される。

脱出しようと試みた鳴海の前に、ひとりの男が立ちふさがる。男はある巨大組織に所属する藤田(山本麟一)で、直子を返してほしければ殺し屋の岡島(青木義朗)を殺せと鳴海に命じる。

岡島を追い始める鳴海だが、直子が自分を利用しようと近づいてきたのではないかと疑いだす。続いて鳴海に藤田から新たな依頼が…。

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今更レビュー(ネタバレあり)

三作目にしてシリアスタッチ

仕事の成功率100%という凄腕の殺し屋・鳴海昌平の死闘を描く遊戯シリーズの第三作にして完結編。軽妙なタッチの前二作と比べ、今回は一気に硬派なハードボイルドアクションに様変わりしている。

冒頭は何者かに拉致され、密室に拉致監禁されている鳴海。すでに激しい攻撃を受けており、意識は朦朧とし、相手の顔もよく分からない。だが、卓越した身体能力を持つこの長身痩躯の男は、天井に吊るされた状態から身体の自由を取り戻し、銃を手に次々と反撃を開始する。

ここでようやく、敵の組織のボス、藤田(山本麟一)が姿を見せ、これまでの一連の攻撃はすべて鳴海の実力を試すテストだったと明かす。

この後、松田優作演じる百戦錬磨の殺し屋は、人質に取られた行きずりの女・ピアニストの直子(りりィ)を救うために、藤田の依頼する殺しの仕事を引き受けることになる。

女絡みで引き受けることになる厄介仕事。ハードボイルドの既定路線ではあるがけして退屈ではない。

一挙手一投足が絵になる優作と、シリーズ三作を通しての村川透監督の演出とカメラは仙元誠三のブルーが特徴的な映像、そして音楽は大野雄二のジャジーなナンバー。

本作が脚本家デビューとなる丸山昇一は、ここから『野獣死すべし』『ヨコハマBJブルース』など、松田優作との親交を深めていく。

処刑遊戯 松田優作 -直子のテーマ-

華を添える二人の女優

今回のマドンナは行きつけのバーで出会ったピアニストの直子、演じるのはりりィハスキーボイスが特徴的。歌が本職だから、劇中で聴かせる歌は当然うまい。

映画デビューの『夏の妹』(大島渚監督)で演じた、健康的な明るい女性とは打って変わって、本作では過去を引きずる謎の女。いかにも東映っぽいキャラを好演。

晩年は『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二監督)や『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太監督)などで、彼女ならではの存在感を示す。

一方、りりィの代わりに健康的な魅力でアイドル的な役を演じたのが、時計の修理工という、どうみても嘘くさい役を演じた森下愛子。ストーリーには直接絡まないが、鳴海の存在がちょっと気になっている存在として、作品に華やかさを添える。

子供の頃の私は、ドラマ『探偵物語』の色っぽいお姉さんが森下愛子だと思い込んでいたが、あちらは竹田かほりだった。どことなく似ていたのだ。森下愛子は近年のクドカン作品ではすっかり名コメディエンヌになっている。

(C)東映

お楽しみ三点セット

藤田(山本麟一)が鳴海に依頼した殺しの標的は、元殺し屋の岡島(青木義朗)。第一期東映ニューフェイスの山本麟一に、ドラマ『特別機動捜査隊』でお馴染み青木義朗。どちらも強面で雰囲気十分だが、派手さはないというか、渋めの配役。

そして藤田の配下に、手負いの鳴海にボコボコにされて形無しの山西道広や、この手の映画には欠かせない片桐竜次などが登場し、気分を高揚させてくれる。

山道を逃げる鳴海と直子と、二人を追う藤田の一味のカーチェイス。鳴海のスポーツカーは懐かしや初代サバンナRX-7だ。それは良かったのだが、他に登場してくるセダンまでみんなマツダ車ばかりで、松田優作と同名のよしみか。だが、さすがにこれは不自然すぎる。協賛なのは分かるけど。

この時代の映画はロケ地もお楽しみのひとつだが、今回は千代田線のホームから地上に出ると明治神宮前駅。つまりは原宿だ。ここから、今は表参道ヒルズに再開発されてしまった同潤会アパートあたり。そして、警視庁から大使館に向かう護送車を射撃するという計画の中で登場する谷町界隈

(C)東映

これでシリーズは見納め

全速力で走るクルマが、必ず止まるポイントがあり、そこで運転手が窓を開ける。その一瞬、その角度でしか、狙えない標的の男を撃てという計画。この見せ方までは良かったのだけれど、ここから、狙撃が成功するかどうかは、もう少し盛り上げようがあった気もする。

鳴海はラスボスの男を、そいつが座る重役椅子の大きな背もたれの背後から撃つんだよね。別にガンマンシップや武士道に則る必要もないので、背中から撃つのもありだろうけど、ちょっと意外。まあ、目的のためには手段を選ばない稼業だからな。

本作でシリーズが完結した感じは正直あまり伝わらなかった。今回は、森下愛子とちょっとした会話を交わす部分も含め、完全ハードボイルドなので、軽口を叩く隙もみせない松田優作。それを好むか、物足らないとみるかは、好みが分かれるところかも。

「同じ女を二度抱くほどヒマじゃないんだ」

鳴海にしか、似合わない台詞だ。