『探偵はBARにいる1・2・3』|シリーズ三作一気通貫レビュー

『探偵はBARにいる』
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』
『探偵はBARにいる3』

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『探偵はBARにいる』 

公開:2011 年  時間:125分  
製作国:日本
 

スタッフ 
監督:    橋本一
脚本:    古沢良太
須藤泰司
原作:    東直己
     『バーにかかってきた電話』
キャスト
俺:     大泉洋
高田:    松田龍平
沙織:    小雪
霧島敏夫:  西田敏行
松尾:    田口トモロヲ
相田:    松重豊
カトウ:   高嶋政伸
佐山:    波岡一喜
田口幸平:  有薗芳記
峰子:    安藤玉恵
近藤百合子: 竹下景子
桐原組組長: 片桐竜次
岩淵恭輔:  石橋蓮司

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

あらすじ

札幌の歓楽街ススキノで活躍する探偵(大泉洋)のもとに、コンドウキョウコと名乗るナゾの女から「ある男に会い、彼にひとつ質問してほしい」という依頼が舞い込む。

簡単な依頼のはずが、探偵はその直後に命を狙われ、不可解な事件に巻き込まれていく。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ススキノのご当地エンタメ映画誕生

東直己『探偵はバーにいる』シリーズから「バーにかかってきた電話」を映画化。札幌はススキノを舞台にした探偵ものハードボイルド。

タイトル通り、大抵の時間はBARにいるという、ケータイを持たないススキノのプライベート・アイ(私立探偵)である主人公の<俺>(大泉洋)と、無愛想な北大生だが空手の師範代で頼りになる相棒の高田(松田龍平)のバディムービー。監督は、時代劇から昭和スタイルの任侠ものまで幅広にこなす、東映出身の橋本一

地元TEAM NACS大泉洋を主演に起用し、ふんだんに札幌要素を採り入れた本作は地元でもさぞ盛り上がったことだろう。函館はシネマアイリスの佐藤泰志原作映画シリーズが芸術路線でいくのならば、札幌はエンタメで行くぜという意気込みを感じる本シリーズ。

探偵は文字通り、基本はススキノのBAR「ケラーオオハタ」のカウンターで酒を飲み、高田とオセロに興じている。ハードボイルドならチェスが似合いそうだが、ここは日本風にアレンジしたのか。

BARにいるといっても、けして安全なところに身を置き頭脳で勝負の安楽椅子探偵ではない。乱闘上等、カーチェイスだってある。相棒の高田は滅法強いが、探偵本人もそれなりに武闘派だ。

映画『探偵はBARにいる』予告編

大泉と松田の動と静

本作は冒頭で、地元の名士である霧島敏夫(西田敏行)が、拉致されそうになる若い娘を助けようとして暴漢に刺殺される。

その後に、コンドウキョウコを名乗る謎の女性からBARの探偵に電話が入るようになり、彼女の依頼で、ある弁護士を洗いはじめた探偵は暴力団組織に狙われ始める。

そしてこの依頼人女性の名前が、数年前に地上げ絡みで歓楽街のビルで焼死した女性の名だと気づく。

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

事件そのものの詳細は本レビューでは割愛するが、シリーズ一貫して「探偵は依頼人を守る」主義を通そうとする探偵の姿勢はハードボイルドっぽくてよい。

ただ、その路線でいくのならば、本作での大泉洋少々オーバーアクションであり、また声もでかすぎる。もう少し落ち着けと言いたくなるが、このキャラでハードボイルドは厳しい。もっとも、バディの高田と静と動になるように配慮したのかもしれないが…。

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

高田を演じる松田龍平は本作と同じ公開年に『まほろ駅前多田便利軒』(大森立嗣監督)でも永山瑛太のバディを演じている。

どちらも寡黙だが頼りになるバディで、キャラはかぶっているが、そんなことはお構いなしに超然とこの役をこなしている。

この手の相棒役に、もはや松田龍平のほかに頭に浮かばないほどのフィット感。しかも彼がいるだけで、どこか『探偵物語』のDNAも感じられるし。

ただ、彼の愛車のポンコツ初代ビュートを使った、エンジンがなかなかかからないネタは、さすがに何度も繰り返されると辟易する。これは続編にも続くのだが、本作のなかでは浮いている演出だったと思う。

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

正体を悟らせない配役の妙

以下、ネタバレになるのでご留意いただきたい

本作で電話の依頼人であるコンドウキョウコが誰なのか、というのはひとつの謎になっているが、声と話の流れから、それが霧島敏夫(西田敏行)の若き未亡人である沙織(小雪)であることは、容易に想像できてしまう。

この推理で終盤まで物語をひっぱるのは、ちょっと無理があったように思う。腹違いの妹の写真(吉高由里子)が出てきたので、彼女が依頼人かとも勘繰ったが、どうやら考え過ぎだった。

殺されてしまった霧島の西田敏行も、妻であり犯行の容疑者でもある沙織の小雪も、善人役か悪人役かいずれもあり得るタイプの俳優なので、その点では配役によって迷彩を施した効果があったともいえる。

事件の鍵を握る登場人物の正体が、当初の印象とは違うものだったというのは、本シリーズに通底しているパターンだが、本作でもよくできていた。

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

探偵はどこにいる

出色だったのは、札幌で一番下品なヤクザ・花岡組の関係者で探偵を拉致したカトウという人物。高嶋政伸が演じているこの不気味なサイコ野郎は、コーエン兄弟『ノーカントリー』ハビエル・バルデムが演じた悪役のパクリに見えるが、それでもなかなか面白い。

彼をもっと活躍させたらよかったのにと思ったが、残念ながら探偵は花岡組のファーム・則天道場・に潜入し佐山(波岡一喜)という副長や道場生たちと雪原で戦うあたりから、東映おふざけアクションものに様変わりしていく。

(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

本作は終盤の沙織の結婚披露宴会場で山場を迎える。だが、不思議なことに、この大事な局面で探偵は沙織の策略で小樽に出向いており、この一番大事な場面に帰ってこれず、「探偵はオタルにいる」

もっとも、列車のなかで、依頼人を守れなかった自分を責めてもがき苦しむ姿は、結構ハードボイルドっぽい。

タランティーノが好きそうな、純白のウェディングドレスを血に染めて復讐する相手に銃口を向ける沙織。その乱射シーンは美しくもあり、そして悲しい。

本作は過度に複雑にいりくんだミステリーにしていない分、ほどよいレベルの謎解きで楽しめるご当地ハードボイルドにしているところが、うまく世間のニーズに合ったのかもしれない。軽快なエンディングのテーマ曲で、つい次作も観たくなる。