『スパイダーマン:ノーウェイホーム』MCU一気通貫レビュー27

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
Spider-Man: No Way Home

ありがとう、ジョン・ワッツ監督!これ以上の完結編は望めない。全てのスパイダーマン・ファンに贈る堂々の完結編。

公開:2022 年  時間:148分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:         ジョン・ワッツ
脚本:        クリス・マッケナ
          エリック・ソマーズ

キャスト
ピーター・パーカー/ スパイダーマン:
            トム・ホランド
スティーヴン・ストレンジ:
     ベネディクト・カンバーバッチ
ミシェル・ジョーンズ(MJ):ゼンデイヤ
ネッド・リーズ: ジェイコブ・バタロン
メイ・パーカー:    マリサ・トメイ
ハッピー・ホーガン:ジョン・ファヴロー
フラッシュ:    トニー・レヴォロリ
J・ジョナ・ジェイムソン: 
            J・K・シモンズ
ウォン:     ベネディクト・ウォン
<マルチバース>
グリーン・ゴブリン:ウィレム・デフォー
Dr.オクトパス: アルフレッド・モリーナ
エレクトロ:  ジェイミー・フォックス
サンドマン:
     トーマス・ヘイデン・チャーチ
リザード:      リス・エヴァンス

勝手に評点:4.0
  (オススメ!)

(C)2021 CTMG. (C) & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

あらすじ

前作でホログラム技術を武器に操るミステリオを倒したピーターだったが、敵が残したフェイク映像タブロイド紙の「デイリー・ビューグル」が公開したことでミステリオ殺害の容疑がかけられ、正体も暴かれてしまう。

マスコミに騒ぎ立てられ、ピーターの生活は一変。身近な大切な人にも危険が及ぶことを恐れたピーターは、ドクター・ストレンジに助力を求め、魔術の力で自分がスパイダーマンだと知られていない世界にしてほしいと頼む。

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レビュー(まずはネタバレなし)

想像しろ、越えてやる

いや、参った。油断していた。トム・ホランド主演のMCU版スパイダーマンのホーム三部作の完結編に、ここまで感激させられるとは思わなかった。

全編にジョン・ワッツ監督のスパイディー愛が充ちている。単に、サム・ライミ監督の旧三部作とマーク・ウェブ監督のリブート版二作の悪役キャラを寄せ集めただけの、安易な豪華お正月スペシャルかと疑っていた自分が恥ずかしい。「想像しろ。超えてやる」のキャッチコピーに偽りなしだ。

MCUのみならず、スパイダーマンの過去作品の集大成ともいえる本作。2002年に第一作が公開されてから、はや20年。トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールドか、はたまた現役のトム・ホランドか。

思い入れのあるピーター・パーカーは人それぞれだろうが、どのファン層にも納得のいく展開。これはいい。MCU作品としては久々のオススメ高評価だ。

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マルチバースから呼び寄せた敵

物語は、前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のヴィラン・ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)が死に際に遺した映像で、ピーター・パーカーがスパイダーマンだと報道されるラストから始まる。

J・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)がニュース・キャスターを務めるデイリー・ビューグルが、英雄ミステリオを殺したピーターを断罪し、世相もピーターはヒーローか罪人かで二分する。

彼の大切な仲間である、MJ(ゼンデイヤ)ネッド(ジェイコブ・バタロン)にも、その被害が及ぶ。みんながスパイダーマンの正体を忘れてくれればいいのに。

そこで彼は、ともに戦った同志ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の魔術に頼ることを思いつく。

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だが、ピーターが次々と追加要望を言ったことで、この魔術が失敗し、スパイダーマンを知る過去の強敵をマルチバースから呼び寄せてしまう。この発想はなかなか面白い。

偉そうにしているが、どこか抜けているドクター・ストレンジのキャラも活かされているし、何よりこの奇策によって、過去に死んでしまったヴィランたちが再び結集することができるのだ。

どこか憎めない歴代ヴィランたち

強大な敵が町を襲うスケールの大きさに対して、ピーターの最大の関心は、大学進学どうしようとか、みんなでMITに入学できるかなとか、普通の高校生と同じ目線であることは、従来と同様。このスタンスはMCUの中では異質だが、ジョン・ワッツ監督のこだわりでもある。

ニューヨークの町をビルからビルへMJ連れてスイングする躍動感も健在。特に今回は体感型の4DXシートで観賞したので、MJと同様のスリルが味わえた。

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今回登場するヴィランたちは全部で五人、新キャラは出てこない。円谷プロでも石森プロでも、過去に倒した敵が復活するエピソードでは、それを統括する新たな敵が必ずいる。

だから物足りないかと思ったら、そんな心配は無用。スパイディーの敵はどれも、人間味があって魅力十分なことを再認識させられる。これまでのMCUではヴィランのキャラ描写が淡泊すぎて不満な作品が多かったが、今回は対照的だ。

『スパイダーマン』旧三部作からは、グリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)ドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)、そしてサンドマン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が登場。

『アメイジング・スパイダーマン』の二作からはエレクトロ(ジェイミー・フォックス)リザード(リス・エヴァンス)が登場。どれもみな、オリジナル版と同じ俳優を起用している。これは素晴らしい。

強烈な印象を残したキャラの復活には、同じ俳優を使わなければ意味がないことを、『マトリックス:レザレクションズ』のモーフィアスとエージェント・スミスにも教えてあげたい。

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はじめは、次々登場する過去キャラを一人ずつ倒していく単純な展開かと思っていたのだが、もっと練りに練った脚本だったのは、嬉しい誤算。それにしても、ジェイミー・フォックスをはじめ、ヴィランたちの配役の豪華なこと

名優ウィレム・デフォーは、あの安っぽいマスクを自ら叩き壊したから、今回は顔出しで演技してもらえてよかった。息子のハリーも出てきたら更に盛り上がったが、それでは悪役のバランスが悪いか。

個人的には、私の好きなドク・オクのアルフレッド・モリーナが結構おいしいポジションを担っていたので、嬉しい限り。リス・エヴァンスの出番がちょっと少なかったのは残念。

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レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますのでご留意ください。未見の方は、これ以上は何も予備知識なく観賞された方が、一層楽しめると思いますので、ご注意を。

MCU版フィールド・オブ・ドリームス

さて、呼び寄せてしまったヴィランたちをただ元の世界に戻せば、また殺されてしまうだけだから、治癒してあげようと考えるピーター。善人ぶりはメイ叔母さん(マリサ・トメイ)譲りだ。だが、グリーン・ゴブリンを筆頭に、ヴィランたちがそれぞれ暴れ始める。

ピーターを助けるイスの男・親友ネッドが、今回意外な能力を披露する。見様見真似で中途半端に魔術が使えるようになるのだ。

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そして、ここからは、その手があったかという展開。なんと、ネッドの作った火花散るマルチバースのトンネルの中から現れたのは、アンドリュー・ガーフィールドトビー・マグワイア。まるで『フィールド・オブ・ドリームス』だよ。それもカメオ出演ではない。堂々の参戦なのだ。夢の三世代共演

もうさすがに大人のトビー・マグワイア登場には、「一般人が来ちゃった?」と笑いもとるが、いや、感動だわ。涙が出そう。

本編映像<ストレンジのミラー・ディメンション> 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』1.7 FRI #全ての運命が集結する──

この三人が(ちゃんと微妙に違う)同じスーツを着て、ヴィランたちと戦う。三者三様の決めポーズが痺れる。自由の女神を舞台に繰り広げられる決戦。

同じようなデザインのキャラが戦うことのつまらなさを、これまで『アイアンマン3』『インクレディブル・ハルク』のレビューでも語ってきたが、今回は違う。三人のスパイダーマンが本能のままに息を合わせて戦うことのスピード感と躍動感。

アクションだけではない。ベン伯父さんを死なせた初代、恋人グウェンを失くした二代目、そして大切なメイ叔母さんを救えなかった三代目。みんな心に傷を負いながらも、<親愛なる隣人>として戦う。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」

その言葉を胸に刻みながら。ドラマとしても、彼らはしっかり魅せてくれるのだ。

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少年は、大人になった

どうにか勝利を収めた彼ら。今回はヴィランを倒すのではなく、全員更生させるというか、善人に戻してあげるという、およそヒーロー映画ではみかけない展開になっている。これも斬新だが、メイ叔母さんの教えは、こうして息づいている。

最後には、失敗した魔術を封じ込めるため、ピーターは全ての人々から自分の記憶を消してもらうことを決意し、ドクター・ストレンジに依頼する。愛しいMJも、愛する彼のことを忘れてしまうのだ。

『仮面ライダー電王』の相棒、戦うたびに忘れられていく宿命のライダー・ゼロノス『時をかける少女』をブレンドしたような、なんとも切ないエンディング。

ラスト、彼を忘れたMJやネッドとの再会と彼の行動は、少年を大人に成長させた。そして今日も、町の平和のために警察無線を傍受するピーター。

ホーム三部作完結編、きれいに決まった。もうこれでシリーズは完結でいい。これ以上のエンディングは望めないよ。

連携作品や次回作紹介が多いので、エンドロール後にもおまけがつくが、本作は美しいラストの余韻に浸っていたかった。ありがとう、歴代ピーター・パーカー!ありがとう、ジョン・ワッツ監督!