『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 MCU一気通貫レビューvol.23:そうか、もうスタン・リーのカメオ出演は見れないのだ

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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 
  Spider-Man: Far From Home

トニーがいなくなったのは寂しいが、ピーターの自立と成長を促す結果となるとは。エンドゲーム後の疲れた心と体にはもってこいのエンタメ作品。指パッチン後の世界はこうなるのか。

公開:2019 年  時間:129分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:         ジョン・ワッツ

キャスト 
ピーター・パーカー / スパイダーマン:
            トム・ホランド
クエンティン・ベック / ミステリオ: 
        ジェイク・ギレンホール
ミシェル・ジョーンズ(MJ):ゼンデイヤ
ネッド・リーズ: ジェイコブ・バタロン
ベティ・ブラント:アンガーリー・ライス
ブラッド・デイヴィス:  レミー・ハイ
フラッシュ:    トニー・レヴォロリ
メイ・パーカー:    マリサ・トメイ
ハッピー・ホーガン:ジョン・ファヴロー
フューリー:サミュエル・L・ジャクソン
マリア・ヒル:  コビー・スマルダーズ

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)Marvel Studios 2019. (C)2019 CTMG. All Rights Reserved.

あらすじ

夏休みに学校の研修旅行でヨーロッパへ行くことになったピーターは、旅行中に思いを寄せるMJに告白しようと計画していた。

最初の目的地であるベネチアに着いたピーターたちは水の都を満喫するが、そこに水を操るモンスターが出現。街は大混乱に陥るが、突如現れた謎のヒーロー、ミステリオが人々の危機を救う。

さらに、ピーターの前には元「S.H.I.E.L.D.」長官でアベンジャーズを影から支えてきたニック・フューリーが現れ、ピーターをミステリオことベックに引き合わせる。

ベックは、自分の世界を滅ぼした「エレメンタルズ」と呼ばれる自然の力を操る存在が、ピーターたちの世界にも現れたことを告げる。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

消化試合などではない面白さ

『アベンジャーズ/エンドゲーム』での敵味方両者総力戦で、『アイアンマン』から始まった壮大なスケールのインフィニティ・サーガが幕を閉じたと普通は思うだろう。

だが、MCUのフェーズ3のラストを飾るのは、親愛なる隣人・ピーター・パーカーなのだ。すでにエンドゲームに決着がついたあとの、文字通り消化試合かと思った学園ヒーローものが、意外と面白い

MCUでは、過去にも、重苦しい結末で終わった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のあとに、映画自体がコミックリリーフな『アントマン&ワスプ』を差し込む戦略をとったが、本作もそれと同じ路線とみられる。

エンドゲーム後の世界を初めて描いている訳だが、その表現方法も痛快だ。

指パッチンで消えていた半分の生徒が突然五年後に当時の年齢のまま戻ってくる。五つも低学年だった生徒が、学校一のモテ男(レミー・ハイ)になって今や自分と同級生。

なるほど、この指パッチン後の社会影響を分かりやすく、かつ軽妙に伝えるとなれば、ピーターが通う高校を舞台にするのがMCUの中では最も効果的だろう。

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ご近所の監視と恋の行方

ピーターが夢中になっている、いつもクールなキャラがいいクラスメイトのMJ(ゼンデイヤ)に、夏休みの研修旅行で告白するとかしないとか、学園ラブコメ要素に相当に比重が置かれていることも、スパイダーマンらしい特徴といえる。

何せピーターは、アベンジャーズの一員として地球の平和を取り戻してからは、ご近所の監視とMJとの恋の行方が何より大事な高校生に戻りたいと嘆いているのだから。

本作で初登場の謎の男・ミステリオことベック(ジェイク・ギレンホール)。家族を含め大勢の民族を滅ぼされた<エレメンタルズ>なる風・水・火の怪物を追って、別の地球からやってきた男

神話からやってきたような衣装で、巨大な敵と立ち向かう。元「S.H.I.E.L.D.」長官のニック・フューリーやマリア・ヒルも、彼とは旧知のようだ。

確かに、『ドニー・ダーコ』で懲りたのか、ジェイク・ギレンホールほどの大物が、MCUにもDCコミックにも参加していないのは、不思議だ。ここから、新レギュラーヒーローの登場かと思うのも無理はない。

以下、ネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

ゲロよりE.D.I.T.H.いいです

ミステリオが巨大な敵とベネチアの街やロンドンで繰り広げる圧倒的なスケールの戦いは見応えがある。

およそ映画というものの中では、観客はそれがCGで作られた映画の中での作り事だと分かってそのシーンを現実のものとして観ている。だから、ミステリオの戦いに、嘘くささはない。

だが、それが精巧に作られたホログラムとハイテクドローンのなせる業だとしたら。

トニーからハッピー経由で託された新AI防衛システムのメガネE.D.I.T.H.を、ピーターは、自分は適任ではないからミステリオに譲り渡してしまう

ピーターが去った後のバーで、徐々にホログラムの映像が消えていき、仲間と共に正体を現わすミステリオ。このシーンは、本作の白眉だ。

ミステリオことベックは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でトニーが紹介していた記憶をホログラム映像化するシステムB.A.R.F.の開発者。だがトニーにコケにされ、作品もゲロ(B.A.R.F.)と命名される屈辱を。

ベックのブレインであるウィリアム・ギンター・リヴァ(ピーター・ビリングスリー)は、MCU第1作『アイアンマン』に登場したオバディア・ステインの元部下。「私はトニー・スタークのような天才じゃありません」って泣き言を言ってた人だ。

一体、どれだけ前からネタを仕込んでいるのか。感心する。

トニーが過去にしでかした自分勝手な行為で恨みを買った敵に攻撃されるのは、今回が初めてではない。だが、ピーターにとっては親の因果が子に報い、といったところだ。

ピーター・パーカーの自立と成長

ここから先は、ピーターがE.D.I.T.H.をいかに奪還し、ミステリオを撃退するか。

『スパイダーマン:ホームカミング』をはじめ、MCUの過去作品では完全にトニーの舎弟だったピーターだが、師匠を失った今となっては、孤軍奮闘するしかない。

ハッピーやニック・フューリーの応援もあるように見えるが、大した役には立っていない。結果的にピーターが必死で仲間たちを守る姿から、彼の自立と成長が伝わる。これは頼もしい。主人公が一人だけで戦うのは、近年のMCUでは珍しいことだ。

(C)Marvel Studios 2019. (C)2019 CTMG. All Rights Reserved.

ミステリオの誰かに擬態する特殊能力は、『マイティ・ソー』のロキや『キャプテン・マーベル』のスクラル人でお馴染みだが、ホログラムを使えば、同じような効果が得られるというのは面白い。架空世界を作り出して、相手を混乱させる手法は、むしろドクター・ストレンジに近いか。

惜しまれるには、ミステリオの造形、特にあの金魚鉢を被ったようなデザインだ。あれはどう考えても、いただけない。

ジェイク・ギレンホールの顔がいくら濃いといっても、あれでは金魚鉢の中の表情が見えない。テルテル坊主のような外見は、『20世紀少年』を思わせる。

スパイダーマンの正体を巡る騒ぎ、要る?

タイトル通り遠くアメリカから離れ、ベニスからプラハ、ベルリン、オランダを挟んでロンドン。007シリーズのような豪華なロケ地巡りだが、ベースとなるのは先生が付き添う研修旅行という団体行動で、しかも今回の敵は、超人の血清を打ったわけでもない、普通の人間の集まりという、スパイダーマンらしいスケール感もいい。

ラストではピーターとMJのマンハッタンでの初デート。やはり空中をクルクルと飛び回るスパイダーマンに(彼女は絶叫してたけど)、このビルだらけの街並みは良く似合う

(C)Marvel Studios 2019. (C)2019 CTMG. All Rights Reserved.

などとのん気に思っていると、ベックの最後っ屁のような報復で、ミステリオがピーターに惨殺されるフェイク映像とともに、スパイダーマンの正体が顔写真入りでニュースに公開されてしまう。

しかも嬉しいことに、ニュースでこれを問題ありげに語っているのが、サム・ライミ版でもお馴染みのJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)ではないか。これは上がる

とはいえ、この特ダネは今後次回作にどう影響するのか、しないのか。スーパーマンやバットマンといった往年のヒーローと違い、アベンジャーズのメンバーたちは殆ど面が割れている。ピーターは例外的なのだ。

「ボクの本当の姿は~」という、ダンがアンヌに正体を告げた名シーンははるか昔の話。今や正体をカミングアウトすること自体、騒ぐ話ではないのかも

更には、ポストクレジットに明かされるニックとマリアの正体にも驚いたが、だからニック・フューリーともあろうものが、まんまとベックに騙されたのかと納得できついニヤリとしてしまう。

さて、なんとか『ブラック・ウィドウ』公開までに、MCU一気通貫レビューを書き終えることができた。お付き合いいただいた方、ありがとうございました。あとはディズニープラスでワンダやファルコンを観ながら、劇場公開を待ちましょう。