『007 カジノ・ロワイヤル』 ダニエル・クレイグ版ボンド一気通貫レビュー①:金髪碧眼のボンド若気の至り

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007 カジノ・ロワイヤル』 
 Casino Royale

ダニエル・クレイグの起用により、金髪碧眼のジェームズ・ボンドが登場。原点回帰で引き締まったストーリーとアクション。エヴァ・グリーンとのラブ・ロマンス度合いも濃厚。

公開:2006 年  時間:144分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:      マーティン・キャンベル
原作:        イアン・フレミング

キャスト 
ジェームズ・ボンド:
         ダニエル・クレイグ
ヴェスパー:      エヴァ・グリーン
ル・シッフル:   マッツ・ミケルセン
ディミトリオス:シモン・アブカリアン
ソランジュ:    カテリーナ・ムリーノ
マティス:ジャンカルロ・ジャンニーニ
ホワイト:イェスパー・クリステンセン
フィリックス:  ジェフリー・ライト
M:         ジュディ・デンチ

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

Casino Royale (C)2006 Danjaq,LLC,United Artists Corporation,Columbia Pictures Industries,Inc

あらすじ

英国諜報部MI6のスパイである00(ダブルオー)の地位に昇格したジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、最初のミッションとして国際テロ組織のネットワークを絶つ任務を課される。

テロ組織の資金源であるル・シッフル(マッツ・ミケルセン)と接触を命じられたボンドは、モンテネグロのカジノでル・シッフルと高額の掛け金のポーカー対決を開始する。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

お待たせ、金髪碧眼のボンド

登場前は、青い瞳とブロンドのボンドなんてあり得ないと往年のファンに叩かれたダニエル・クレイグだったが、本作から始まった新シリーズは、原点回帰、いやそれ以上のリアルな作品内容が評価され、瞬く間に新ボンドとしてのイメージが定着したように思う。

イアン・フレミングの原作同様、『カジノ・ロワイヤル』からボンドの成長を描こうというのだから、まさにリブートだ。勿論、パロディとして作られた1967年の作品とは違い、シリアス路線である。

導入部分、ダブルオーに昇格前のボンドのまだ少々青臭い初仕事ぶりがモノクロの粗い画面で流れる。そして最近の映画には珍しい、やや長めのテーマ曲フル演奏と、トランプカードをあしらった、レトロなアニメーション。

主役は若返っても、アヴァンタイトルまでの決まり事は、『男はつらいよ』同様にしっかり順守されているのは、さすが長寿作品。

荒っぽい仕事さばきと伊達男ぶり

本作のボンドはまだ功名心にはやるというか、前半は特に仕事が荒っぽい。

建築中の高層ビルやクレーンでのパルクールっぽさも交えたファイトは躍動感あって素晴らしいが、相手が爆弾持っている男で、しかも大使館を爆破して追い詰めるのは、ちょっと過激すぎ。

Mでなくても、「あなたバカなの?」と言いたくなる。でも、威勢の良さと胸板の厚さ、時折見せる捨て犬のような哀しげな表情のアンマッチが、この男の魅力なのだ。

そして早くも伊達男ぶりの本領発揮。武器商人ディミトリオス(シモン・アブカリアン)から、クラシックなアストン・マーティンDB5と奥様のソランジュ(カテリーナ・ムリーノ)を巻き上げてしまう展開は面白い。

今回のボンドガールは随分派手目な人妻だなと思っていたら、本命はこの後に登場した。

そしてカジノ・ロワイヤルへ

世界各国のテロ組織から預かった資金を運用している、血も涙もない、ではなく血の涙を流す男、ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)が今回のターゲット。

ボンドが新型飛行機の爆破を阻止したことで、空売りで儲ける計画が頓挫し、資金稼ぎのため高額のポーカーゲーム大会を開催する(テロ+空売りはこの手の映画ではすっかり常套手段だ)。

そこに参加するボンドに融通する資金の監視役として派遣されたヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)が本命ボンドガール。所属は財務省かと思ったら、マネロン対策で有名なFATFだった。

映画は前半に建築現場やマイアミ空港で派手なアクションはあるが、中盤以降はカジノ・ロワイヤルでのル・シッフルとのカード対決が中心になる。

途中に殺し合いも入り、ヴェスパーとボンドは次第に惹かれ合っていく。脅える彼女をシャワールームでずぶぬれになりボンドが抱擁するシーンが印象的だ。

本作は、007シリーズにしてはラブロマンス色が強い。

アクションでは『ミッション・インポッシブル』との差別化が難しく、あちらがチームワークの面白さでくるのなら、こちらは伝統ある格式と恋愛要素で勝負しようということか。

なお、本作でも存在感のある役を演じていたマッツ・ミケルセンエヴァ・グリーンは、その後に西部劇『悪党に粛清を』でも共演している。

(C)2006 Danjaq,LLC,United Artists Corporation,Columbia Pictures Industries,Inc

そりゃないぜ、ル・シッフル

続いて、愛すればこそのダメ出しに移りたい。ここからネタバレに入りますのでご留意ください。

まず、今回の敵であるル・シッフルのキャラがあまりにショボすぎる。

テロ組織から集めた資金を空売り失敗。起死回生のポーカーでも最後はボンドに大敗する。そこはお約束だからよいが、大会で負けた後にボンドを拉致して、裸にして睾丸叩きの拷問だ。これは衝撃的である。

かのボンドが、こんな卑劣漢の睾丸責めで苦痛に喘いでいることも、この敵役がボンドの失神している間に別人の銃弾に倒れてしまうことも、シリーズでは前代未聞ではないか。

しかも、ボンドが生還できたのは、ヴェスパーが彼を救出するためにカネを支払ったからなのである。最後に彼女はまるで自殺のようにボンドの眼前で溺死してしまう。なんというビターエンドだろう。

そりゃないぜ、アストン・マーティン

カードゲームの展開はそれなりに面白かったが、ポーカーならマックイーンの『シンシナティキッド』、或いは真田広之の『麻雀放浪記』などの賭博系の名作に比べると、勝負の緊迫感は少し物足りない

私がいちばん唖然としたのはボンドカーの処遇だ。アストン・マーティンDBSの登場には興奮したが、何の活躍もないまま、夜道でヴェスパーを轢きそうになり、すぐに横転、大破である。

抑えのエースが9回に登板し、初球でサヨナラを浴びたような呆気なさ。旧型のDB5と二台合算でも映画では100メートルも走っていないのは寂しすぎる。

お馴染みのタイアップも、オメガはまだ可愛いものだが、配給会社がソニーだからってPCのVAIOから携帯のソニエリ、ウォークマンまでみんな目立たせるのはやや興ざめ。

イアン・フレミングの原作も読んでみた

『カジノ・ロワイヤル』は、原作でもボンドのデビュー作となる。私が受け容れ難かった睾丸責めや、何者かにル・シッフルが殺される点も含め、基本プロットは、意外と原作に沿っていた。

なるほど、イアン・フレミングの原作が枯渇しても、亜流のパロディ版以外では本作が映画化されなかった理由は想像できる。

なお、原作には映画のような派手なアクションはないが、ボンドのキャラクターの原型が窺えるのは楽しく、また、結婚まで考えたヴェスパーとの悲恋に読み応えはあった。

ところで、本作は興行成績も作品評価もなぜかよい。不思議なものだ。新ボンドへのご祝儀相場かな。

次回作は本作の1時間後からスタートする設定。とりあえず、次に評価を委ねよう。原作もぜひ。