『ねらわれた学園』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ねらわれた学園』今更レビュー|みんないつもと同じ。でも誰かがこの学園を

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『ねらわれた学園』

40年の時を隔てても色あせないアイドル映画の金字塔。終盤からは違う映画と割り切って世界に浸ろう。西新宿の高層ビルもまだ少ない。大林監督は、この頃からすでに反戦映画を撮っているのだ。角川映画の黄金時代。

公開:1981 年  時間:90分  
製作国:日本
  

スタッフ 
監督:       大林宣彦
原作:        眉村卓

      『ねらわれた学園』

キャスト
三田村由香:  薬師丸ひろ子
関耕児:      高柳良一
高見沢みちる: 長谷川真砂美
星の魔王子:     峰岸徹
有川正一:      手塚真

勝手に評点:3.5(一見の価値はあり)

あらすじ

高校2年生の三田村由香(薬師丸ひろ子)は、自分が超能力を持っていることに気づく。

そんな中、由香のクラスに高見沢みちる(長谷川真砂美)という少女が転入してくる。みちるは怪しい力を使って生徒会長の座につき、自分の思うままに学園を支配していく。

やがて由香は、すべての元凶が謎の魔王子(峰岸徹)率いる「英光塾」にあることを突き止める。

レビュー(ネタバレあり)

大林宣彦監督を偲んで、何十年ぶりに本作を観返してみた。監督以外にも、原作の眉村卓魔王子役を怪演した峰岸徹、父親役のハナ肇ほか、すでに他界された方も多い。40年の重みを感じる。

歴史の古さを感じさせつつも、アイドル映画としての輝きは全く色褪せていないところがさすが大林作品だ。

正直、今更この作品を観ても懐古主義でしかないかとやや高をくくっていたのだが、冒頭の角川映画のフェニックスのアニメと音だけでタイムスリップし、ユーミンの曲が流れる頃には、喰いつくように画面をみてしまうほど、反応してしまった。

新宿中央公園で高校の新入生勧誘、各クラブの生徒たちが大勢でダンスする中心で制服姿でダンスするシーン。ボーイフレンドの関耕児(高柳良一)の剣道の試合でみんなに混ざって声援を送るシーン。

どれも薬師丸ひろ子の姿に視線が釘付けになり、予告編やポスターにもってこいのカットばかりだ。

本作や相米慎二『翔んだカップル』あたりから、薬師丸ひろ子はアイドル女優として不動の地位を築きだしたのではなかったか。

両監督は俳優陣への接し方がまるで正反対のように思えるが、結果としてはともに彼女の魅力を最大引き出すことに成功している。

同時上映は『ブルージーンズメモリー』。同時に上映するはずがないのに、当時はそう呼んでいた(今なら併映か)。

男女アイドル映画対決だったのだ、映画館はどうなっていただろう、あまり思い出せない。

眉村卓の原作も読んだしTVシリーズも見た記憶が朧げにあるが、映画はまったく違うテイストだ。

特に後半部分。生徒たちが集まっては洗脳されている英光塾に関が乗り込んでいってから後の特撮中心の展開は、正直ハチャメチャである。

こういうのが好きな御仁もいるのだろうが、この乗り込んでからのシーンは一切忘れて前半の余韻だけで本作を語るのが、大人の対応のような気がする。

改めて発見したことがいくつかある。まず、大規模なオーディションを勝ち抜いて本作の相手役に抜擢された高柳良一

『時をかける少女』での演技とは異なり、デビュー作の本作では同じ監督でありながら、結構自然な動きと台詞回しで、やんちゃな剣道部員を演じているではないか。これは大いに好感。

それから、ガリ勉君の有川(手塚真)の演技も、当時はオーバーアクトだと思っていたが、これだけコテコテの演出の作品だと、あのくらい過剰にやらないと負けてしまうのだと理解した。

彼もまた、一般公募のオーディションでこの役を得たと対談で語っていたが、これには驚き。

そして大林監督。高見沢の発案で学校の風紀を取り締まるパトロールがみな軍服をきて学内を行進し、熱血教師(三浦浩一)は、「これでは正義の名のもとに支配者が生まれ、戦争になってしまう」と反旗を翻すのだ。

ここ何年かの作品では反戦のメッセージ性が強くなっていた大林監督だが、本作でも平和を反戦を願うメッセージは織り込まれていたのだと気づかされた。

80年頃の西新宿は高層ビルもまだ少なく、まばらだ。関の実家である町の酒屋というのも、今や都心では少ない。

新宿が舞台ゆえ、魔王子がジャックするのも渋谷スクランブル交差点ではなく新宿アルタの大画面。西新宿の夜空に光る星が、本当に☆のように五つの頂点の星型になっているのは、思わず笑ってしまった。

大林組の得意とするカラーとモノクロを混在させる絵は、本作でも随所にみられる。技術の進んだ今日ではたやすく模倣できるのかもしれないが、反発した生徒が魔王子や高見沢に攻撃されてモノクロになって倒れていく特撮描写は、今観ても新鮮で美しい。

校内で由香がみんなとカルピスソーダの自販機を囲んでソーダを飲む作為的な映像は、いかにもCM業界出身の監督らしく、また彼女が当時同飲料のCMをやっていたのを思い出させてくれた。

さて、忘れてしまおうと言っていた後半の魔王子と由香のバトル(といっても両者直立で語り合うのががメインだが)。

勝負のあと、勝ち残った生徒たちをみると、ネグリジェの由香、剣道着の関、レオタードの高見沢、軍服のパトロール隊。まるでコスプレ同好会の集まりのようで驚く。

ここまでやりたい放題の作品で、40年経ってもファンを惹きつけるところが、さすが大林監督だ。