『るろうに剣心』『京都大火編』『伝説の最期編』: 劇場版三編を一気通貫レビュー

はじめに

累計興行収入125億円のメガヒットを誇る同シリーズ。 待望の『最終章 The Final』そして『最終章 The Beginning』もいよいよ公開。新作鑑賞前に過去作品三作を一気におさらいしておきたいと思います。

01『るろうに剣心』
02『るろうに剣心 京都大火編』
03『るろうに剣心 伝説の最期編』

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『るろうに剣心』

公開:2012 年  時間:134分  
製作国:日本

スタッフ 
監督: 大友啓史
原作: 和月伸宏
  『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』

キャスト
緋村剣心:  佐藤健
神谷薫:   武井咲
高荷恵:   蒼井優
相楽左之助: 青木崇高
斎藤一:   江口洋介
鵜堂刃衛:  吉川晃司
武田観柳:  香川照之
外印:    綾野剛
戌亥番神:  須藤元気
明神弥彦:  田中偉登
山県有朋:  奥田瑛二

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

あらすじ

幕末の動乱に揺れる京都に名を轟かせる、凄腕の暗殺者・緋村剣心。

剣心は、その神速の剣技と驚異の暗殺成功率から<人斬り抜刀斎>の通り名を持ち、幕府要人や佐幕派の武士達を震撼させていた。

それから10年の月日が流れ、時は明治11年。剣心は、以前とは打って変わって、「不殺の誓い」を掲げて人々を剣の力で守り助ける流浪人として、穏やかな日々を送っていた。

だが、剣心が東京に流れ着くと、中毒性の高い新型阿片<蜘蛛の巣>の密売が蔓延り、<神谷活心流 人斬り抜刀斎>を騙る辻斬りが世間を賑わしていた。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

佐藤健という人斬り

伝説の<人斬り抜刀斎>こと緋村剣心が明治維新以後、不殺の誓いをたて、人を斬ることのできない「逆刃刀」を携えて町から町へ流浪の旅を続ける。

この映画第1作は何度か観返しているが、アクションを中心に、作り手の作品にこめる強い情熱とこだわりを感じる。10年近く経過しても、続編を、それも二作も同時に作り上げようという姿勢も、何となく納得できる。

本作の公開当時、まだ私の中では、佐藤健は、仮面ライダー電王の主人公・野上良太郎だった。

電王は多数映画化もされ、平成ライダーのシリーズでも、特に人気の作品だったと思う。子どもと夢中になって観ていたので、私も思い入れが強い。

だが、佐藤健は早くに、電王から訣別し、役者として次のステージを目指した。当時から、一人五役を演じ分けたり、軽快なダンスを披露したりと、彼は多才だった。

そんな彼が、新たな代名詞といえる緋村剣心という役に出会い、そしてここまで観客を魅了するとは、一人のファンとして嬉しい思いだ。

電王では敵に出会うとすぐに変身し、アクションはスーツアクターにバトンタッチだったので、本作で彼がここまで切れ味のある剣さばきを見せてくれるとは、意外な発見でもあり感動でもあった。

「逆刃刀でござるよ」、「腹が減ったでござるよ」 
他の役者が口にすれば、つい忍者ハットリくんのように聞こえ、「ニンニン」と続けたくなるような台詞回し。

これを涼やかな表情で言い、アクションもこなし、スケール感のあるひとつの作品として完成させるなどという無茶ぶりに応えられるのは、佐藤健しか考えられない。

このキャスティングは大友啓史監督の慧眼といえるのだろう。

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際立つアクションのキレとスピード

大友監督は、NHK所属時代の『ハゲタカ』『龍馬伝』で注目を浴びていたものの、本作のようなアクション巨編を手掛けたのは初めてだったのではないかと思うが、堂に入った演出だったと思う。

売り物であるアクションについては、大友監督が白羽の矢を立てた香港アクション映画界で活躍する日本人谷垣健治がアクション監督を一手に担う。

このアクションが、本作を他の作品とは一線を画す本物感を出している。日本の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』を目指そうという当初の目標は、現実のものになった。

生憎、本作のアクションの素晴らしさについて饒舌かつ専門用語で語れるほど、私はこの分野に精通してはいない。

ただ、公開時期が重なっている『アベンジャーズ』ハイテクにより作りこまれたアクション(それはそれで凄い技術水準なのだが)やハリウッド映画に比べれば、この映画の本物感は際立つ。

やはり、谷垣イズムのおかげか、香港映画に近いノリを感じる。大友監督は、『るろうに剣心』をVFXで撮るつもりはないのだ。その姿勢は、最終章にも貫かれているようである。嬉しいことだ。

魅力的な仲間たち、敵役たち

リアルな演出で攻める本作で唯一、デフォルメで笑いを取っていたのが、阿片による世界的な支配を企む武田観柳(香川照之)だったが、あえてコミックリリーフ的に起用したのはなぜなのだろう。

何となく竹中直人路線になってしまっている。「俺にひれ伏せ」と芝居がかって強要するさまは『半沢直樹』の大和田常務のようだが、考えたら、こっちの方が古いのだ。

本作において、剣心の最大の敵となるのは、武田観柳のもとで人斬り抜刀斎の名を騙って悪事を重ねていた鵜堂刃衛(吉川晃司)であり、この二人の対決もなかなか迫力があってよい。しっかりと時代劇のようにも見える。

妖術使いのような設定は鵜堂刃衛には不要ではないかと思っていたが、終盤で薫(武井咲)を巡っての戦いになると、この設定が活きてくる。

怒り心頭に発し、「不殺の誓い」を破りそうになる剣心とそれを制する薫は、本シリーズの重要なテーマを維持する。そして、最後に「お前も所詮人斬りよ。地獄で待っている」と自害する、鵜堂刃衛の散り際も渋い。

吉川晃司以外の対戦相手も豪華だ。まずは外印綾野剛。のちに『亜人』で再タッグを組む二人である。はじめは面をつけていて、誰だか分からなかった。拳銃とナイフの使い手で、アクションに変化をもたらす。

そして、武田観柳の用心棒、戌亥番神須藤元気。今や政治家であるが、本来総合格闘家であり、ある意味、素手なら一番強そうなキャラ。ジェームズ・ボンドに襲いかかる役で出てきそう。本作では、喧嘩名人の相楽左之助(青木崇高)が彼の相手をし、剣心と対戦する機会は与えられず。

斎藤一(江口洋介)は剣心が人斬りに戻ることを心待ちにしているような警察の男で、本作では敵か味方か判然としないところを残す。その意味では、まるで後の『コンフィデンスマンJP』の赤星のような役だが、本作の方が精悍である。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

相手方はそんなところだが、味方陣営も、本作が1作目のため、すべて出会いから始まる。父の遺した道場を健気に守る神谷薫(武井咲)と、阿片製造に加担したものの観柳から逃げ延びてくる高荷恵(蒼井優)

相楽左之助も、剣心との出会いは喧嘩を売ろうとしたところから始まったのだなあと、懐かしく思う。

武井咲は出産を挟み先日3年ぶりにドラマ復帰を果たしたところ。映画には『最終章 The Final』で復帰となるようだ。

更に時の流れを感じさせる、道場にいた明神弥彦少年の田中偉登もいまや21歳の青年。『のぼる小寺さん』『朝が来る』などに出演し、活躍中だ。

広がる世界観、高まる期待感

思えば、大友啓史がチーフ演出した大河ドラマ『龍馬伝』と本シリーズはキャスティングの関わりが多い。

本作だけでも、人斬り以蔵の佐藤健が人斬り抜刀斎、その他、香川照之青木崇高蒼井優も重なる。次作以降では福山雅治伊勢谷友介も登場する。時代背景も重なるので、混乱しそうになる。

ついアクションばかりに目が行きがちだが、本作の真骨頂は、剣心が破りそうになる「不殺の誓い」を、薫が自分の命を顧みずに思いとどまらせる点であり、これは本シリーズを貫く背骨である。

新作につながる知識として覚えておくべきは、剣心の顔の傷の話。

かつて新しい時代のためにと、請われて人斬りをやっていた剣心が、祝言をあげたばかりの清里明良(窪田正孝)を斬殺した際の向こう傷。その後、その許嫁にも傷をつけられ十字になったと語っている。

これは、最終章と何か絡んでくるのだろうか。