『るろうに剣心 最終章 The Beginning』考察とネタバレ:これで終わる、ここから始まる

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『るろうに剣心 最終章
The Beginning』

これで終わる、ここから始まる。長い沈黙を破って、ついに2012年に映画化が始まって以来の頬の十字傷の謎が解き明かされる。


公開:2021 年  時間:137分  
製作国:日本

スタッフ 
監督: 大友啓史
原作: 和月伸宏
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』

キャスト
緋村剣心: 佐藤健
雪代巴:  有村架純
桂小五郎: 高橋一生
高杉晋作: 安藤政信
斎藤一:  江口洋介
沖田総司: 村上虹郎
近藤勇:  藤本隆宏
土方歳三: 和田聰宏
辰巳:   北村一輝

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

あらすじ(公式サイトより引用)

動乱の幕末。緋村剣心は、倒幕派・長州藩のリーダー桂小五郎のもと暗殺者として暗躍。血も涙もない最強の人斬り・緋村抜刀斎と恐れられていた。

ある夜、緋村は助けた若い女・雪代巴に人斬りの現場を見られ、口封じのため側に置くことに。

その後、幕府の追手から逃れるため巴とともに農村へと身を隠すが、そこで、人を斬ることの正義に迷い、本当の幸せを見出していく。しかし、ある日突然、巴は姿を消してしまうのだった。

レビュー(まずはネタバレなし)

終わりのはじまり

久しぶりに続編が作られたシリーズ最終章の二作品も、本作をもって完結となる。エヴァが長い歴史の幕を閉じたその同じ年に、佐藤健の<るろ剣>もまた終わってしまうというのは、また寂しいものだ。

前作の『The Final』 では公開後わずか数日で、都内ではコロナ禍により映画館が閉館を余儀なくされたことは記憶に新しい。

最終章の二作の製作や宣伝・上映に関わった多くの方々の心労を思うと胸が痛むが、本作公開時には映画館も再オープンできて良かった。

本作はこれまでの過去4作品とはやや毛色が異なる

冒頭、捕らわれの身となり敵陣に囲まれた剣心が、後ろ手に縛られながらも口に咥えた刀ひとつで大勢の敵を次々となぎ倒す。

これまでにも見慣れたはずの光景だが、何かが違う。部屋中が相手の血しぶきで真っ赤に染まっているのだ。そう、これは、逆刃刀とも不殺の誓いともまだ無縁の、剣心が<人斬り抜刀斎>だった時代を描いた作品なのである。

こんな剣心は見たことがない

これまでと異質な点は、そこだけではない。時代の違いについては、『The Beginning』と謳っているくらいだから、ある意味分かりやすい。

だが、本作は、これまでの本シリーズの最大の特徴であった、リアルでスピード感のある時代劇アクションをだいぶ控えめにしている。

その代わりに、剣心(佐藤健)雪代巴(有村架純)との出会いからの宿命を、まるで夫婦の人情噺のように、丁寧に、静かに描いていく

その静謐さと、舞い散る雪の水墨画のような美しさは、本作が『るろうに剣心』であることを忘れてしまうほどだ。

幕末のドラマをメインにした作りだからこそ、高橋一生の演じる桂小五郎や、安藤政信高杉晋作なども、派手に剣術を使って暴れまわったりはしない。長州藩において、それは人斬り抜刀斎の仕事だからだ。

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

新撰組にしたところで、池田屋を中心に刀を振り回しはするが、例えば村上虹郎演じる若き沖田総司には途中で喀血させ、前作の神木隆之介のような活躍の場は与えない。

その気になれば同じようなアクションは作れるだろうが、あえて活劇トーンを落としている

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

剣心以外でシリーズ全作に登場するのは新撰組の斎藤一(江口洋介)くらいだが、彼とてお馴染みの構えで戦いはするが、咥え煙草も決め台詞もない。警察の制服ではなく羽織袴というのも新鮮だ。

そして、全ては剣心と巴の悲恋物語を邪魔しないように、計算されているのだろう。

観終わって感じたこと

余談だが、『最終章The Final/ The Beginning』の劇場予告は、軽薄なノリでタイトルを連呼するスタイルで、作品のイメージとはだいぶかけ離れていたと私は思う(いくつかパターンがあるのかもしれないが)。

アクション重視の『The Final』だって、もっと重厚な作品だったし、本作はしっとりしたトーンのドラマなら、尚更あの予告編とは合わない。過去作品観たことない人が作ったのだろうか。

さて、本作の評価は、そのドラマメインの方針転換を好むかどうかで分かれるだろう。躍動感にあふれ、壁を蹴って飛び上がる空中戦を期待する御仁には、『The Final』の方が向いていると思う。

一方で、前作ではチラ見せだけの剣心と巴のエピソードや、剣心がなぜ人斬りをやめたのかを、薫や左之助が出てこなくても、じっくり観たいというのなら、やはり本作は見逃せない。

レビュー(若干ネタバレあり)

ここから若干ネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

そうは言ってみたものの

すでに『The Final』をご覧になっている方であれば、率直にいって、新たなサプライズはないように思う。

祝言を上げる直前の清里明良(窪田正孝)を、剣心が夜道で斬殺し、死に際に頬に傷を付けられたシーンは第1作から数え切れないほど繰り返されている。

窪田正孝も、こんなにリピート再生されると知っていたら、出演しなかったのにと思っているかもしれない。

そして、その許嫁が巴であり、彼女がふとしたことから剣心と知り合い、やがて双方が心を開いていく。

本作ではそのような展開になるが、一方で我々は過去作品から、巴は殺されてしまったこと、そして殺めたのは他ならぬ剣心であることを知っている。だから、これは純粋にネタバレとは言い難い。

剣心を仕留めようと辰巳(北村一輝)が登場し、敵の策略にはまり精魂尽き果てた剣心が殺されそうになる。

そこを助けようと身を乗り出した巴だったが、剣心が辰巳に放った必殺の一太刀は、最愛の女性をも巻き添えにしてしまう。

このシーン自体はとても美しく、良い出来だった。異論はない。だが、我々はこの光景と、この悲劇のダイジェスト版を、すでに『The Final』1か月ほど前に観たばかりだ。なので、正直感動は薄らぐ

なぜ、大友啓史監督は、『The Final』 を文字通り完結作にし、その前に本作を公開しなかったのだろう。前日譚なのだから、どこにだって挟めるし、ネタバレの観点からも、公開順は逆であるべきではないか

この公開順にした理由は探せば見つかるのかもしれないが、感動の大きさを犠牲にするだけのものではないだろう。

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

次第に表情が和らいでいく剣心

本作における剣心は、新しい時代のために、刀を差した幕府の役人ならすぐに成敗しようとする血に飢えた人斬りだ。心は荒みきったまま、安らぐ暇もない。

京都で新撰組の目を盗み暮らす毎日のなかで、片時も笑顔をみせない険しい顔の剣心には、これまでに維新後に薫たちに見せていた優しそうな表情が結びつかない。

そんな剣心が、薬売りを装って巴と二人で田舎暮らしを始めるうちに、人間らしさと穏やかな表情を取り戻していく。

幼馴染であった婚約者を殺した男に復讐を果たそうと近づく女が、いつの間にか気が付けば、その男に惚れている。殺す標的を愛してしまう話は珍しくないが、これは、毎度回想で斬殺されている清里明良にはあまりに酷な展開。

とは思ったものの、清里が剣心に付けた頬の傷に、死ぬ間際の巴が更に刃をあてて十字傷にするシーンは美しく、細かいことは気にならなくなる。

この傷は、新しい時代が到来したら、もう人を殺めず、人を活かす剣を使うという誓いの十字架なのだ。十字ではなく反対側の頬にほうれい線のように傷を付けてたら、冴えないビジュアルになってしまうところだった。

長いサーガの幕切れにふさわしい

映画の最後に、鳥羽・伏見の戦いが現れる。剣心と斎藤が第一作で最初に対戦したシーンに戻っていくのだ。ここはまさに、新時代の幕開けであり、人斬り抜刀斎が、人を殺める剣を捨てる重要な瞬間である。

この日を境に、剣心は人斬りではなく、流浪人るろうにに生まれ変わるのだ。などと思いを巡らせていると、ここで初めてタイトルがでる。

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

エンドロールで初めてタイトルを出す映画が随分前から増えているが、その意図がよく分からん、と個人的には思っている。

だが、本作には意味があった。このラストの瞬間まで、剣心は人斬り抜刀斎として生きてきて最後にようやく流浪人になるからだ。

本作にはドラマとしての不満はいくつかあったものの、最後はキレイに決まった。勿論、最後はONE OK ROCKの曲で締める。長いサーガの幕切れにふさわしい。ここから、第一作を観返したくなる人が出てきてもおかしくない。