『スペンサー・コンフィデンシャル』
Spenser Confidential
マーク・ウォールバーグの警察もの。コメディタッチだが、基本は悪徳警官吊るし上げ系のマジメな話。
公開:2020年 時間:1時間51分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ピーター・バーグ
原作: エース・アトキンス
『Robert B. Parker's Wonderland 』
キャスト
スペンサー: マーク・ウォールバーグ
ホーク: ウィンストン・デューク
ヘンリー: アラン・アーキン
シシー: イライザ・シュレシンガー
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
ボストン警察の元警官スペンサー(マーク・ウォールバーグ)は上司ボイランへの暴行罪で5年間服役していた。
出所して戻った部屋では、先住者の大男ホーク(ウィンストン・デューク)をルームメイトに息苦しい同居生活。その矢先に、ボイランが惨殺される。
警察は自殺した警官テレンスによる犯行だと断定するが、スペンサーはホークを巻き込んで事件に首を突っ込む。
レビュー(まずはネタバレなし)
意外にもマジメ路線
マーク・ウォールバーグの警察ものはなぜか『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』の印象が強い。
おまけにNETFLIXではアクションコメディものに分類されていたので、もっとふざけた路線かと思っていたら、これはちゃんとしたアクションもの。
ちょうどいい具合にコメディタッチが入るが、基本は悪徳警官吊るし上げ系のマジメな話で、予想以上に気軽に気持ちよく楽しめる映画だった。
◇
なるほど、スペンサーって、ロバート・B・パーカー著作のハードボイルドシリーズのスペンサーのことだったのか。
パーカーの死後にシリーズを引き継いだエース・アトキンスの作品が原作らしい。見落としていた。
◇
事件が起こるまでの、主要な人物がひととおり登場されるテンポがよい。
刑務所から出所する元警察官スペンサー(マーク・ウォールバーグ)、大家でボクシングジムオーナーの旧友ヘンリー(アラン・アーキン)、気性の激しい彼女シシー(イライザ・シュレシンガー)。
警察時代に相棒だったドリスコル(ボキーム・ウッドバイン)、そして歓迎されないルームメイトのホーク(ウィンストン・デューク)。
悪徳警官に立ち向かう新バディ
スペンサーがなぜ、上司ボイラン(マイケル・ガストン)に殴りかかったのかは劇中で明かされる。
そのボイランが惨殺され、しかも自殺した警察官の犯行だとなれば、元相棒のドリスコルとコンビを再結成して調査を開始するのだろう。そう思っていたが、スペンサーは現役警官じゃないので、そんなはずはなかった。
◇
新しいバディはホーク、はじめは打ち解けない大男に見えたが、次第に、格闘家志望で腕力もあり頭も切れ、相棒にもってこいの人材と分かる(彼は『アベンジャーズ/ インフィニティ・ウォー』でも頼りになる存在だった)。
更に調査が進展すると、父親のような友人ヘンリーや、仲違いしていたシシーも加担し、チームとして機能し始める。
この辺は、単身で戦うのがお約束のハードボイルドであれば邪道になるのかもしれないが、気軽に楽しむ分には全然OKだ。
無謀な戦いをするスペンサーを、シシーがバットマンに例えて呆れるところで、ホークが「俺はロビンじゃねえ」、ヘンリーが「俺は執事じゃねえ」とそれぞれ反論するところがウケた。
レビュー(ここからネタバレ)
バトル・イン・ワンダーランド
さほどネタバレや考察する余地がない作品ではあるが、原作のタイトルでもある<ワンダーランド>とは、昔はドッグレースの会場だった場所をさすようだ。
だが、今やカジノの建設予定地。ここに政治家やマフィアや、警察まで含めた関係者の利権が絡み合っていて、そこにスペンサーが追っている事件も関係している。
日本も能天気にクリーンなイメージだけでカジノを誘致しようとしている場合ではないよと、アメリカに言われてしまった気がする。
ほどよいコメディタッチ
冒頭でも述べたが、ほどよいコメディタッチだと思ったのは、例えば次のようなシーン。
- 獄中でスペンサーが、出所したら全身舐めまわしてもらうと言っていたパールという女は実は飼い犬
- 敵の黄色いコルベットにホークがナイフで描く猫の絵
- 麻薬取引捜査で標的を泳がすFBIの鼻持ちならない男のキャラ
- スペンサーがメキシコ料理屋で襲われても、ヘッドフォンで聞こえないホーク
- ハイウェイの上からハンマーを投げて、クルマを停めさせるホーク
- シシーの家にいる犬の前職は麻薬探知犬
- 大型トラックを暴走させ、待ち構える敵陣に突っ込むスペンサー(これは痛快)
これらに比べて、ちょっとはずし過ぎと思えた点。
- スペンサーが黄色いコルベットを追いかける途中で飼い犬に襲われるシーン
- レストランのトイレでシシーと当初敵対しながらも、最後には激しくコトに及ぶシーン
まあ、ハードボイルドには、探偵がモテるシークエンスが必要なのは分かるが。
ピーター・バーグ監督はマーク・ウォールバーグとのコンビ作品も多いので、さすがに安定感のある演出。格闘家志望のホークだけでなく、スペンサーも体を張ってのバトルが結構あり、これも意外といい線行っていた。
重い事件を軽く扱うバランス感覚が良かったので、気軽に観るにはという条件なら、オススメの作品。