『プライドと偏見』考察とネタバレ !あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『プライドと偏見』今更レビュー|やっぱ「高慢と偏見」のがよくね?

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『プライドと偏見』
 Pride & Prejudice

ジェイン・オースティンの「高慢と偏見」をジョー・ライトが初監督作で見事に映像化、主演はキーラ・ナイトレイ


公開:2005年  時間:127分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:          ジョー・ライト
脚本:          デボラ・モガー
原作:      ジェイン・オースティン
             『高慢と偏見』
キャスト
<ベネット家>
エリザベス:     キーラ・ナイトレイ
ジェイン:      ロザムンド・パイク
メアリー:       タルラ・ライリー
キティ:       キャリー・マリガン
リディア:       ジェナ・マローン
ベネット氏:   ドナルド・サザーランド
ベネット夫人:   ブレンダ・ブレッシン
<その他>
ダーシー氏:  マシュー・マクファディン
ビングリー氏:     サイモン・ウッズ
キャロライン・ビングリー:
            ケリー・ライリー
ウィッカム氏:    ルパート・フレンド
キャサリン夫人:    ジュディ・デンチ
コリンズ氏:      トム・ホランダー
シャーロット: クローディ・ブレイクリー
ガーディナー氏:    ピーター・ワイト
ガーディナー夫人:ペネロープ・ウィルトン

勝手に評点:3.5
 (一見の価値はあり)

あらすじ

18世紀末、英国の田舎町メリトン。ベネット夫人(ブレンダ・ブレッシン)は、年頃の娘たちの誰かが早く結婚することを願っていた。

娘には相続権がなく、このままでは誰も家の財産を受け継げないのだ。だが聡明な次女エリザベス(キーラ・ナイトレイ)は、そんな理由での結婚に疑問を抱いていた。

ある日、近くに越してきた大富豪ビングリー(サイモン・ウッズ)を囲む舞踏会が催され、エリザベスは彼の親友ダーシー(マシュー・マクファディン)と出会う。

彼女は人を見下すようなダーシーの高慢さに強い反感を覚えるのだが…。

今更レビュー(ネタバレあり)

ジェイン・オースティンの代表作『高慢と偏見』を、本作が長編映画初監督となるジョー・ライトが映画化。18世紀の英国の田舎町を舞台にした、年頃の姉妹たちの恋愛譚。

階級社会の中で、娘を上流階級の資産家の子息に嫁がせることが、何よりも重大時だという家庭のなかで、そんなものに興味がなく、自我を貫き溌剌と生きる主人公エリザベスキーラ・ナイトレイが好演。

また、その相手役である、家柄的には結婚相手に最高だが、高慢な若者ダーシーマシュー・マクファディンが演じている。

(C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.

英文学の古典である原作は何度となく映像化されている。日本では劇場未公開だったが、ダーシー役をローレンス・オリヴィエが演じたアメリカ映画『高慢と偏見』(1940)が有名らしい。

人気を博したのは、1995年の英国BBC製作によるテレビドラマで、こちらのダーシー役はコリン・ファース

レネー・ゼルウィガーのヒット作『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)も同原作にインスパイアされた作品だが、ここにもコリン・ファースがダーシー役で登場する。

その後、『高慢と偏見とゾンビ』(2016)などという二次創作まで映画化された『高慢と偏見』だが、『プライドと偏見』としたのは、本作が初のようだ。

原題が” Pride & Prejudice”なのだから誤りではないし、この方が動員できそうだが、作中でのネガティブな意味合いを考えると、<プライド>よりは<高慢>のほうがフィットしているように思う。

本作は原作に忠実に作られている印象。勿論、二時間程度の尺に収めるために、大きく簡素化する部分は随所にみられるが、ポイントは押さえているし、メリハリもあるので味気ないダイジェスト版のような感じにはなっていない

初監督作で、時代背景も含めてここまできっちり映像化できるのは、ジョー・ライト監督の才能なのだろう。古き英国での恋愛映画に新たな旗手登場。

本作に続いてキーラ・ナイトレイと同スタッフで撮った、イアン・マキューアン原作の『つぐない』(2007)も、傑作だった。

さて本作。主人公一家は英国郊外のメリトンに暮らすバネット家。隣の邸宅に裕福な青年紳士ビングリー(サイモン・ウッズ)が引っ越してくると知り、5人の娘たちは大騒ぎ。

長女は気立ての優しいお人好しのジェイン(ロザムンド・パイク)、次女は勝気で自由奔放なエリザベス(キーラ・ナイトレイ)。三女メアリー(タルラ・ライリー)、四女キティ(キャリー・マリガン)、末娘リディア(ジェナ・マローン)と続く。

あの手この手で娘を婚約させようと企む狂信的な母(ブレンダ・ブレッシン)と、それを冷静に見守る父(ドナルド・サザーランド)

母がこれほど娘の嫁ぎ先に執着するのには理由がある。当時のイギリスの上流階級は、貴族とそれ以外のジェントリと呼ばれる大地主階級に大別された。

ジェントリは労働をしないことを誇りとしており、相続財産の少ない男子・女子はいずれも裕福な結婚相手を血眼になって探す必要があった。

加えて、不動産は男子限定の相続となっており、ベネット家の娘たちはわずかな持参金で結婚を目指さなければならなかったのだ。

隣家にやってきたビングリーは年収5000ポンドの財産を持ち、その親友であるダーシーは年収1万ポンドの資産家、ジェントリとはいえ親族に中流階級もおり年収2000ポンド程度のベネット家は、下に見られているのである。

そしてこのビングリーに長女ジェインは舞踏会で見初められ二人は相思相愛になり、一方、高慢で見下した感じが強いダーシーと鼻っ柱の強いエリザベスはぶつかり合う

そのジェインにはビングリーの妹キャロライン(ケリー・ライリー)の邪魔が入って恋仲は疎遠になる。

また男子のいないベネット家の相続権を得た牧師のコリンズ(トム・ホランダー)という、「私の幸福のために結婚しなさい」という、見た目も中身も冴えない男が現れる。

更に、ダーシーの父の使用人家の息子ウィッカム(ルパート・フレンド)という、何やら彼とは確執のありそうなルックスだけの若者が登場し、こいつが末娘のリディアと駆け落ち

主人公のエリザベスは、なぜか高慢なダーシーに求婚されるが、彼がジェインとビングリーの仲を引き裂いたことを知り、これを拒絶。

その後、このエリザベスとダーシージェインとビングリーの二組の男女がどういう結末を迎えるのかが物語の焦点となる。

この時代、本来は英国もナポレオン戦争の影響を受けているはずであるが、政治や戦争の動きとは全く無縁に、恋愛と相続に特化して話を進めているところが、良くも悪くもジェイン・オースティンの原作の特徴となっている。

人数こそひとり違うが姉妹たちの恋愛小説という点で、オルコット「若草物語」やそれを映画化した『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(以下SML)と共通する部分が多い。

主人公は不条理な慣習に縛られない男勝りな次女キーラ・ナイトレイ、SMLはシアーシャ・ローナン愛に走る優しい長女ロザムンド・パイク、SMLではエマ・ワトソン)、そして自分勝手に暴走する末娘ジェナ・マローン、SMLではフローレンス・ピュー)。

そもそもSMLの主演シアーシャ・ローナンは、ジョー・ライト監督の『つぐない』の少女役で一機に注目された女優であり、そこにも何か縁を感じる。

(C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.

主人公エリザベス役のキーラ・ナイトレイ『ベッカムに恋して』で注目されたあと、『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』アミダラ姫の影武者だった娘じゃん、という印象。

女優としての地位は本作と続く『つぐない』で急上昇。本作もそうだが、端整な顔立ちに眼力が特徴的。

長女ジェイン役のロザムンド・パイクはおとなしい役なのであまり目立たない。

ジョー・ライト監督と婚約までいくくらいなのだから、魅力的に撮られているのだが、その後の彼女の『ゴーンガール』『パーフェクトケア』での悪女ぶりを知ると、この役ではちょっと物足りないかな。

駆け落ちする末っ娘リディアは、まだ幼いくせに生意気なところが際立っていて、可愛い小悪魔ジェナ・マローンの演技が見もの。こちらも『インヒアレント・ヴァイス』『パブリック 図書館の奇跡』など近年の活躍はだいぶ路線変更。

また、あまり目立たなかったが四女のキティには『プロミシング・ヤング・ウーマン』キャリー・マリガン。本作がデビュー作。

とにかく娘を良家に嫁がせたい母親のブレンダ・ブレッシンは、呆れるほどのバカ親ぶりだが、これは原作由来のキャラ。そして反対に娘思いの父に重鎮ドナルド・サザーランド。さすがの存在感。

花婿候補の方はと言うと、ダーシー役のマシュー・マクファディンジョー・ライト監督の『アンナ・カレーニナ』(2012)でもキーラ・ナイトレイの兄役で共演。

ビングリー役のサイモン・ウッズは俳優業を引退した模様。

ウィッカム役のルパート・フレンドは一時期キーラと交際していたが破局。最近では『アステロイド・シティ』(2023)のイケメン・カウボーイ役で登場。

コリンズ牧師役のトム・ホランダー『キングスマン:ファースト・エージェント』で歴史上の人物三役をコミカルに演じ分けていたのが記憶に新しい。

内容詳細については触れないが、原作には映画では十分に伝えきれなかった部分、具体的にはエリザベスとダーシーの高慢と偏見の心理過程や諸般のアクシデントの意味の重みが、より詳しく書いてあり読みごたえがある。未読の方には、ぜひお薦めします。

それにしても、エリザベスと対決する大物キャサリン夫人役のジュディ・デンチは迫力があった。やはり、彼女はジェームズ・ボンドの上司よりはこういう憎まれ役がいい。