『プロミシング・ヤング・ウーマン』 考察とネタバレ:米国にもあったかデスノート、不条理な世の中に向けた復讐劇。

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『プロミシング・ヤング・ウーマン』 
Promising Young Woman

前途有望なはずの彼女たちを変えてしまった者たちへの復讐劇が始まる。キャリー・マリガンの渾身の演技に圧倒。ネタバレ最小限で語ります。

公開:2021 年  時間:113分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督・脚本:      エメラルド・フェネル
製作:         マーゴット・ロビー
キャスト
キャシー・トーマス: キャリー・マリガン
ライアン・クーパー:   ボー・バーナム
マディソン:       アリソン・ブリー
スタンリー:      クランシー・ブラウン
スーザン:   ジェニファー・クーリッジ
ウォーカー学長:   コニー・ブリットン
ゲイル:       ラバーン・コックス
アル・モンロー:    クリス・ローウェル
ジェリー:       アダム・ブロディ
ジョーダン:   アルフレッド・モリーナ
ミセス・フィッシャー: モリー・シャノン

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)2019 PROMISING WOMAN, LLC / FOCUS FEATURES, LLC

あらすじ(公式サイトより引用)

30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。

その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。

ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。

レビュー(まずはネタバレなし)

見た目に騙されてはいけない復讐劇の奥深さ

MeToo運動が一気に広がって数年が経過しても、女性同士の強い連帯と、セクハラ・パワハラが横行する男社会に喝を入れるフェミニズム映画が多く公開され、勢いが止まらない。

本作は、キャリー・マリガン演じる、前途有望な文字通り<プロミシング・ヤング・ウーマン>だった主人公キャシーによる復讐劇であるが、見た目の派手さだけがウリではなく、なかなか奥が深い

アカデミー賞では作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞しているのも納得の出来栄えと思う。

女優として活躍するエメラルド・フェネルの書き下ろした脚本に、近年はプロデューサーとしての活躍もめざましいマーゴット・ロビーが惚れ込み、フェネルの初監督作品として撮られた作品。

そう思うと、本国では同年に公開されているマーゴット・ロビーのヒット作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』とイメージは重なる。

ドラッグストアでライアンとふざけるシーンとか(あっちはスーパーの店内か)、ナース服と七色ヘアのコスプレはモロにかぶせている。

ちなみに、監督のエメラルド・フェネルは、本作では男性の目を引くメイクアップのビデオ映像に登場しているとか。これは気づかなかったわ。

(C)2020 Focus Features

お持ち帰り男に制裁で手帳に記録

キャシーもハーレイ・クイン風のはじけたバイオレンス大好きキャラなのだろうか。

冒頭、酒場でひとり泥酔しソファーで酔いつぶれている彼女。周囲の連中は、男漁りの女だぜとか言いながら、一人が彼女を巧みに口説き、部屋に持ち帰る。

だが、行為におよぶ寸前にキャシーは酔ったフリをやめ、男に制裁を加える。そして手帳には男の名前と正の字(こういうヤツ↓)を一本書き加える。

なんだか『“隠れビッチ”やってました。』で佐久間由衣がやってた、「告白させるまでがゲーム」の女みたいだ。

キャシーは普段は冴えないカフェの店員をしているのだが、店に偶然、旧知だったライアン(ボー・バーナム)がやってくる。かつて二人は医大生だったが、優秀だった彼女は、なぜか学校を中退してしまったのだった。

「そのキミが、何でこんな所で働いてるの」とつい口走り、「お詫びに何でもしていい。コーヒーに唾吐いてもいいよ」と言うライアン、本当に唾を入れるキャシー。まじかよ、ノーランの『メメント』以来の衝撃シーンだわ。

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過去を断ち切っていたキャシーは、こうして次第にライアンと親しくなっていく。どうにもココリコ田中直樹に見えてしまうが、今は小児科医をしているこのライアン青年はなかなか善人キャラでいい。

キャシーは別に、趣味でお持ち帰り男たちの制裁を続けているわけではない。大切な友人であるニーナのために、草の根運動で、この社会の浄化作業を実践しているのだ。

だが、ライアンから聞いた話では、医大生時代に同窓だったアル・モンロー(クリス・ローウェル)が、結婚のために帰国するという。ここから、キャシーの復讐計画がついに動き始める

変幻自在のキャリー・マリガン

それにしても、変幻自在にキャシーを演じるキャリー・マリガンに圧倒される。

『17歳の肖像』での強い印象から始まり、ライアン・ゴズリングと共演の『Drive』やカズオ・イシグロ原作の『わたしを離さないで』など、女優として高い評価を得てきたが、本作のキャシーのような振り切ったキャラは、彼女のフィルモグラフィでは珍しい。

でも、今後、こういう役柄が増えてくるかも。ワインスタインのセクハラ事件を描いた最新作『She Said(原題)』にも主演するみたいだし。

ファッションについても、ナース服に七色ヘアのインパクトが大きいが、カフェに勤めているときのパステルカラーのラフな服装や、両親の趣味でどうにも古めかしくデコラティブな家具に囲まれた自宅でのガーリーな装い、はたまた夜の繁華街に獲物を漁りに行くボディコンシャスな格好など、見ているだけで飽きない。

さて、キャシーの復讐劇とはどういうものなのか、そしてライアンとのラブ・ロマンスはどう発展するのか、ジャンルが不明なだけに先行きが見通せない面白さがある。

そして彼女の標的は、欲望をおさえきれない男どもだけではない。「将来有望な若い男性の未来を奪うの?」と臆面もなく言い放つような、現状を是としている<わきまえた>女どもにも攻撃の矛先は向いているのだ。

(C)2020 Focus Features, LLC.

レビュー(ここからほんの少しネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

キャシーが語るべき復讐計画だもの

復讐計画はキャシーが語るべきストーリーなので、ネタバレはしないでね」と公式サイトで念を押されている。なので、具体的な記述はなるべく控えようと思う。

キャシーの親友であるニーナは、在学中に悲しい事件に巻き込まれた。泥酔のうえに、医学生の男どもに輪姦されたようだ。

だが事件は証拠不十分だったか、或いは「泥酔した女性の方も悪い」とか「ワキが甘い」とかの不条理な理屈で、不問にされる。

彼女もまた<プロミシング・ヤング・ウーマン>だったのに、これを苦に学校を去り、そして自殺してしまう。

本作で大学のウォーカー学長(コニー・ブリットン)は、こんな事件は毎月のように発生していて、残念ながら覚えていないと語っている。

数年前に海外メディアが取り上げていた、モンタナ大学のレイプ事件を思い出した。大学のアメフト選手(地元では英雄だ)による複数レイプ事件。

その町が保守的であればあるほど、騒ぐ被害者が悪いという同調圧力があったことは想像に難くない。本作のような泥酔レイプ事件報道も記憶にある。

(C)2020 Focus Features, LLC.

獲物は必ず仕留めるキャシーのデスノート

だからといってジェンダーバイアスがあってよい筈がない。キャシーは容赦なく、そして用意周到に標的を追い詰めていく。

その一人は、同級生の女・マディソン(アリソン・ブリー)だ。彼女はニーナの事件の際、いつも泥酔する女の方も悪いとする、<わきまえた>女だった。

その彼女を頭脳プレーで巧みに攻め込んでいくキャシーの手口は実にスマートだ。なお、生きる気力もないニーナの母親を演じていたモリー・シャノンアリソン・ブリーとは、NETFLIXの『ホース・ガール』に続く共演。

キャシーは最終ターゲットに至るまでに、次々と獲物に制裁を加えては、デスノートに消し込みを入れていく。それは決してスカッと爽快な復讐劇ではなく、死んだニーナが望んだものではないのかもしれない。

そして、宿敵アル・モンローの結婚パーティの日は近づいてくる。ここは米国。披露宴の前夜にあるのは、お決まりのバチェラーパーティ

ここからの詳細は控えるが、私の想像を超えていた。さすがアカデミー賞脚本賞だ。爽快ではないが、正解