『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 考察とネタバレ:女主人公は結婚するか死なないと本は売れない?

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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 
 Little Women

原作を尊重しつつ、古臭さを感じさせないアレンジは見事。四姉妹それぞれの持ち味と家族愛に感極まる。グレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンの息の合ったタッグは勿論、他の配役もみなすばらしい。

公開:2020 年  時間:135分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督: グレタ・ガーウィグ
原作: ルイザ・メイ・オルコット 
          『若草物語』

キャスト
次女ジョー:  シアーシャ・ローナン
長女メグ:    エマ・ワトソン
四女エイミー: フローレンス・ピュー
三女ベス:    エリザ・スカンレン
母ミセス・マーチ: ローラ・ダーン
マーチおば:  メリル・ストリープ
ローリー:    ティモシー・シャラメ
老ローレンス: クリス・クーパー

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

あらすじ   公式サイトより引用

ジョーはマーチ家の個性豊かな四姉妹の次女。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかりながら、小説家を目指して執筆に励む日々。控えめで美しい姉メグを慕い、姉には女優の才能があると信じるが、メグが望むのは幸せな結婚だ。

また心優しい妹ベスを我が子のように溺愛するも、彼女が立ち向かうのは、病という大きな壁。そしてジョーとケンカの絶えない妹エイミーは、彼女の信じる形で、家族の幸せを追い求めていた。

共に夢を追い、輝かしい少女時代を過ごした四人。そして大人になるにつれ向き合う現実は、時に厳しく、それぞれの物語を生み出していく。

小説家になることが全てだったジョーが、幼馴染のローリーのプロポーズを断ることで、孤独の意味を知ったように─。自分らしく生きることを願う四人の選択と決意が描く、四つの物語。

レビュー(まずはネタバレなし)

女性主人公は結婚するか、死なないと売れない

1868年に出版された、ルイザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語」の実に七度目の映画化。題材は古典なのかもしれないが、それに多少の現代風アレンジを加えただけで、こんなにもみずみずしく感性豊かで、胸躍る作品になろうとは、正直驚きだ。

「女性が仕事だけで自立するなんてとても無理よ。売春宿の主人か女優くらいしか道はないわ」

資産家のマーチおばさん(メリル・ストリープ)が言うように、まだまだ女性の独り立ちが難しく、結婚して家庭に入るのがあたりまえの南北戦争時代。

そんな中で、自分は結婚する気はなく、小説家として世に出たいと努力する次女ジョー(シアーシャ・ローナン)。原稿を出版社に売り込むが、
「女性主人公の小説は、結婚するか、死ぬかの結末でなければ売れない」
と編集者に言われ、不本意ながら作風を変える。

原作は古くても、本質的なテーマは普遍的

このような世間の結婚観や女性の幸福とはといったステレオタイプの発想、さらには小説の著作権をめぐるやりとりなど、現代にも十分通じるテーマが随所に織り込まれている。

「若草物語」は女子が読むものとの思い込みもあり、恥ずかしながら読んだことがなく原作と比較のしようもないが、もし本作が原作に忠実なのだとすれば、オルコットの小説の普遍性・先見性には、瞠目するものがある。

舞台はマサチューセッツ州コンコード。作者オルコットが育った町で、従軍牧師である父が家を離れている間、慈善活動に励む母(ローラ・ダーン)と四人の姉妹が暮らしている。

ロケ地の街並みや豊かな自然が美しく、また彼女たちの、色とりどりで気分も明るくなる衣装も、この背景とよく調和している。アカデミー衣装デザイン賞受賞も納得だ。

四姉妹それぞれのキャラクターに応じたストーリーが交錯する展開であり、そこに大人になった現在と、思春期の頃の彼女たちの日々の思い出が、めまぐるしく行ったり来たりする。

だが、不思議と混乱するような編集ではなく、衣装や言動で容易に見分けがつく。時系列をいじくって難解にする風潮がみられる昨今においては、良心的だと思う。

一気に登場人物とキャスティング紹介

主人公は次女ジョー、演じるはシアーシャ・ローナン。小説家を目指す、気丈で快活な女性だが、おそらくは作者オルコット自身が投影された人物であり、また、そこに女優でもあるグレタ・ガーウィグ監督のキャラクターも被っているように思う。

イアン・マキューアン原作『つぐない』の頃のシアーシャ・ローナンは、本作の四女エイミーのような、姉に嫉妬する小悪魔的な役だったが、今や一家の柱のような存在。

『レディ・バード』に続きグレタ・ガーウィグ監督とのタッグとなる。彼女にジョー役はピッタリはまるし、何より旧弊に縛られず自由に生きるサマが格好いい。

長女メグエマ・ワトソン『ハリーポッター』のハーマイオニーから『美女と野獣』、本作まで、プリンセス役が似合うことは今回のドレス姿でも証明済。

メグは仲のよいジョーに慰留されながらも女優になる道を捨てて、愛する男性と結婚する。だが、新婚家庭は貧しくて生計が苦しいのに、ハイソな友人たちに押されて高価な生地を買わされてしまうのだ。あー、ハラハラする展開。

四女エイミーにはフローレンス・ピュー。監督の目に留まったのは『レディー・マクベス』らしいが、有名どころは『ミッドサマー』か。もうじき公開の『ブラックウィドウ』にも出演。『ファイティング・ファミリー』の印象で、どうにも武闘派に見えてしまう。

今回は末っ子ならではの立ち回りの巧さを発揮し、画家をめざしちゃっかりマーチおばさんに付き、欧州で絵を学んでいる。叔母の教えに従い、資産家男性を射止めるのが目標。

三女ベスエリザ・スカンレン。ベスはピアノを愛する心優しい娘だが、気の毒なことに、近所の貧しい子供たちの世話をするうちに猩紅熱をもらってしまう。一旦は回復するも、その後も闘病生活を続けることになる。

隣の屋敷に住むローレンス氏(クリス・クーパーとは気づかなんだ)は、亡くした娘のようだと可愛がってくれる。エリザ・スカンレンは、『悪魔はいつもそこに』でも、不幸な女の子役で出ていたのを思いだす。

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父親不在の家庭で四姉妹を育てる強く慈悲深い母にローラ・ダーン。今回の役は、気丈な女性が似合う彼女にはピッタリで好演だった。

記憶に新しいのは、グレタ・ガーウィグ監督のパートナーであるノア・バームバック監督の『マリッジストーリー』で演じた剛腕離婚弁護士。

最後に男性陣からは、四姉妹の良き理解者で資産家の放蕩息子ローリー(ティモシー・シャラメ)。ジョーに告白しフラれるも、みんなのそばで見守っているイケメンなのに気立てのいいヤツ。

ノーラン監督の『インターステラー』で、父親が宇宙に飛び立つ時の息子役だった彼か。ヴィルヌーブ監督の未公開新作『DUNE/デューン 砂の惑星』では主役。ブレイクの予感が。

以下、ネタバレとなりますので、未見の方はご留意願います。

レビュー(ここからネタバレ)

大人になってからのジョーと姉妹たち

今更、著名な作品の内容についてネタバレもなにもないのだが、映画の構成自体は何も奇をてらうことなく、正攻法で組み立てられている。

冒頭に、友人の作品と偽って小説を出版社に売り込むジョーが、殆どのページにバッテンを付けられながらも二束三文で買ってもらい、刺激的な作品を書けば買うと言われる。

しばらくは自分を曲げて売れる小説を書くジョー、それを彼女のために批判する男友達フレッド(ルイ・ガレル)とは喧嘩別れになる。

小説の売り込みだけでなく、現実の世界は厳しい。実家で闘病生活のベスの具合が悪化する。駆け付けるジョー。フラッシュバックする楽しい思春期の思い出を除けば、その後の展開はあっけない。

メグも戻って来るが、結局姉妹で一番思いやりのあるベスは、みんなの願いも空しく、亡くなってしまう。

一方、久々に実家に戻ったジョーは、かつてプロポーズを断ったものの、もしもローリーがもう一度求婚してきたら、受けようと思うと母に語る。

ここは死亡フラッグのような不吉さだが、案の定、そのローリーは、欧州でエイミーと婚約して実家に帰ってくるのだ。なんという運命。

ただ、「私はだれとも結婚しない」と、あれだけバッサリとローリーの求婚を断ったジョーが、その後付き合うのはやはり納得できない。ここは、冒頭で彼女の作品を批判してくれた好男子フレッドの再登場で当然正解である。

ジョーは、姉妹の話を書こうと思い立つ

結局、<女性は結婚するか死なないと売れない>と言っていた物語は、皮肉なことに四姉妹ともその法則にあてはまろうとしている。

さて、しばらく時間を経て、ジョーは自分たち姉妹が泣いたり笑ったりして過ごした、楽しい毎日を小説にしようと考える。

それを売り込みに行くと編集者は、刺激的でないからボツだというが、男の家では捨ててあったその原稿を読んだ娘たちが、続きを読ませろとせがむのだ。ここは感動的。

そして、ジョーが著作権を譲らずに好条件を勝ち取った、待望の本が出版される。表紙には、「Little Women」 と金文字が入る。かくて、少女たちを夢中にさせた小説が出版された。結末がキレイに決まった。

以上、お読みいただきありがとうございます。私も娘に借りて読んでみます。