『キングダム』(2019)
『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)
『キングダム 運命の炎』(2023)
『キングダム 大将軍の帰還』(2024)
『キングダム』
キングダムの最新作公開にあたり、シリーズを一気通貫レビューでふりかえり。
公開:2019 年 時間:134分
製作国:日本
スタッフ 監督: 佐藤信介 原作: 原泰久『キングダム』 キャスト <王派> 信: 山﨑賢人 嬴政/漂: 吉沢亮 河了貂: 橋本環奈 昌文君: 高嶋政宏 壁: 満島真之介 <山の民> 楊端和: 長澤まさみ バジオウ: 阿部進之介 タジフ: 一ノ瀬ワタル <王弟派> 成蟜: 本郷奏多 竭氏: 石橋蓮司 魏興: 宇梶剛士 肆氏: 加藤雅也 朱凶: 深水元基 ムタ: 橋本じゅん 左慈: 坂口拓 ランカイ: 阿見201 <王騎軍> 王騎: 大沢たかお 騰: 要潤
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
紀元前245年、春秋戦国時代の中華西方の秦の国。戦災孤児の少年・信と漂は奴隷の身分から天下の大将軍になることを目標に掲げ、日々の剣術の鍛錬に励んでいた。
ある時、漂(吉沢亮)は王都の大臣・昌文君(高嶋政宏)に召し上げられて王宮へ入ることなり、信と漂はそれぞれ別の道を歩むこととなる。
違う場所にいても、誓い合った夢をともにかなえようと信じていた二人だったが、王宮では王の弟・成蟜(本郷奏多)がクーデター起こし、その混乱の中で漂は命を落とす。
やがて信(山﨑賢人)は、漂が王座を追われた若き王・嬴政(吉沢亮)の身代わりになったことを知り、生き延びた王に対して怒りを覚えるが、漂の遺志を受けて嬴政と行動をともにすることになる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
将軍の姿に目を輝かせる少年
シリーズ三作目の公開を控えて、過去作品のおさらいをしておこうと思う。壮大なスケールで中国の春秋戦国時代を描いた原泰久による原作は、その人気の高さから実写版のキャスティングの不安などが取り沙汰された。
だが、蓋を開ければ山﨑賢人と吉沢亮という魅力ある若手実力派俳優の抜擢と、大沢たかおをはじめとするツボを押さえた豪華メンバーの揃い踏み。これならファンも文句なしだろう。結果としては公開年度の最大ヒットを叩きだし、続編決定へと繋がっていく。
監督は『図書館戦争』や『GANTZ』のシリーズで知られる佐藤信介。『デスノート Light up the NEW world』や『BLEACH 死神代行篇』『いぬやしき』等々、コミック原作ものでも着実に実績を重ねている人物で、本作では脚本も手掛けている。
◇
冒頭、戦災孤児の少年・信が大平原で遭遇する将軍王騎(大沢たかお)と見渡す限りの軍勢。この瞬間に時代と舞台が脳内に明確にインプットされる。
同時に、その将軍の姿に目を輝かせる少年は、やがて漂と出会い、二人はいつか天下を取る日を夢見て、剣の鍛錬に明け暮れる。
その日々が何年も続き、信(山﨑賢人)と漂(吉澤亮)はともに若者に成長。通りがかった王都の大臣・昌文君(高嶋政宏)はなぜか漂の腕前だけを高く買い、彼を召し上げていく。
お前がはばたけば、俺もそこにいる
違う人生を歩むことになる二人は、次にいつ出会うことになるのか。ここまでは単純明快に話が進むが、しばらくして、その漂が刀傷を負って信のもとに転がり込んでくる。死ぬ間際に地図を託す。
「ここに向かえ。お前がはばたけば、俺もそこにいる。信、一緒に天下に連れて行ってくれ」
メインの吉沢亮がこんな序盤で死ぬはずがないと思っているから、「こいつは偽物だ」という追っ手の声をつい真に受けてしまう。
だから、地図の場所で信を待っていたのは本物の漂だと思い込んでいたが、彼こそ、王座を追われた若き王・嬴政(吉沢亮)だったのだ。
原作未読の私は、ここでやっと、本作は天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年と中華統一を目指す若き王の物語なのだと理解する。だが、感情移入していた漂が早くも姿を消してしまう喪失感は大きい。
漂は嬴政に似ているがゆえに、影武者として召し抱えられ、敵に殺された。信は嬴政を快く思わないが、直接の仇は、王の嬴政にクーデターを仕掛けた腹違いの弟・成蟜(本郷奏多)とその家臣たち。
まずは成蟜を倒すために、二人は手を組むこととし、そこに金目当てで手を貸す山の民の末裔・河了貂(橋本環奈)も加わる。こうして戦いの陣営は固まっていく。
魅力あるキャスティング
成蟜の放つ刺客たちと信との対戦がなかなか魅せる。
ダークサイドのジェダイのような朱凶(深水元基)、毒矢を吹く姿が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の青い顔のヨンドゥみたいでちょっと滑稽なムタ(橋本じゅん)、ハルク並みの巨漢ランカイ(阿見201)に敵の切り札・左慈(坂口拓)。
ワイヤーアクションとCGが目につく場面もあるが、怒りに任せて力一杯剣を振り回す信のアクションが実に爽快であり、見応えもある。
◇
王弟の成蟜の配下には竭氏(石橋蓮司)、魏興(宇梶剛士)、肆氏(加藤雅也)と言う顔ぶれ。石橋蓮司は出てきただけで敗戦が目に浮かぶが、宇梶剛士は頑強そうで心強い。
ただ、第一作のラスボス的な存在が本郷奏多の演じる成蟜というのは、ちょっとスケール感に乏しい気はする。
いや、本郷奏多は好きな俳優だし、人間の卑小さも良く出ていた演技だったが、この布陣で最後に倒すのがこの人物というのは、シリーズ序盤とはいえ、ちょっと物足りない。原作由来だから、これで正しいのかもしれないが。
◇
山民族の長である楊端和がものものしい仮面を脱いだら長澤まさみというのは、着ぐるみ取ったら橋本環奈と同じようなインパクトがあり楽しい。
ただ、メンバー的には、長澤まさみ、橋本環奈、吉沢亮、ついでに一ノ瀬ワタル(今回顔見せてないけど)という顔ぶれが、あまりに『銀魂』シリーズと重なっている。
福田雄一つながりで、更に『斉木楠雄のΨ難』に進めば、そこには山﨑賢人と吉沢亮がいて、そしてこの二人の共演といえば、他には『オオカミ少女と黒王子』、あるいは土ドラの『水球ヤンキース』。
『水球ヤンキース』の吉沢亮なんて、アイドル橋本環奈の熱烈ファンの役だよ。それがあなた、まさか若き王になり、彼女と戦う日が来るとは。
大物感溢れる大沢たかお
出演者にいろんなリンケージが思い浮かぶ本作だが、敵か味方かも判然とせず、最後まで謎めいていたのは王騎(大沢たかお)とその腹心の騰(要潤)だろうか。
勿論、次作以降での活躍が想定されるが、本作での存在はただ大物感が伝わるのみ。
しかも笑みを絶やさず、悠然と語る様子は、一歩間違えば内村光良のコントか『半沢直樹』の片岡愛之助演じる検査官のようだが、ギリギリ笑いにならずに踏みとどまっている。この不気味な余韻がさすが大沢たかおたる所以だ。
「次は、本物の戦場で会いましょう」
王騎がにやりと信に笑う。さあ、中華統一、天下取ったる!