映画『ゴールデンカムイ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

映画『ゴールデンカムイ』考察とネタバレ|キングダムから金カムへ

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『ゴールデンカムイ』

実写化不能と言われた野田サトルの大ヒットコミックを、山﨑賢人主演で堂々映画化。

公開:2024 年  時間:128分 
製作国:日本

スタッフ 
監督:        久保茂昭
脚本:         黒岩勉
原作:       野田サトル
          『ゴールデンカムイ』
キャスト
杉元佐一:      山﨑賢人
アシㇼパ:      山田杏奈
白石由竹:      矢本悠馬
鶴見篤四郎:      玉木宏
土方歳三:      舘ひろし
尾形百之助:    眞栄田郷敦
月島基:      工藤阿須加
二階堂浩平/洋平:  柳俊太郎
谷垣源次郎:     大谷亮平
牛山辰馬:        勝矢
永倉新八:      木場勝己
後藤竹千代:  マキタスポーツ
フチ:       大方斐紗子
オソマ:       永尾柚乃
大叔父:       秋辺デボ
梅子:        高畑充希
寅次:        泉澤祐希

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

ポイント

  • 主演がかぶる『キングダム』とどうしたって比較しちゃうけど、こっちも負けてない面白さと世界観があった。山﨑賢人のアクションや肉体のキレも、山田杏奈の圧倒的な存在感も、けしてあちらに引けをとるものではない。観ておいて損はない。

あらすじ

日露戦争での鬼神のごとき戦いぶりから「不死身の杉元」の異名を持つ杉元佐一(山﨑賢人)。ある目的のため一獲千金を狙う彼は、北海道の山奥で砂金採りに明け暮れていた。

ある日、杉元はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った「のっぺら坊」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、その在処を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って彼らを脱獄させた。

金塊を見つけ出すべく動き始めた杉元は、野生のヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシ(山田杏奈)に救われる。彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、その仇を討つため杉元と行動をともにすることになる。

一方、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉(玉木宏)と、戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三(舘ひろし)も、それぞれ金塊の行方を追っていた。

レビュー(最後に若干ネタバレ)

野田サトルの大ヒットコミック『ゴールデンカムイ』も、実写化不可能といわれてきたコミックのひとつらしい。

壮大な世界観と長大なボリュームで、とても映画化できそうにない作品だって、これまでいくつも映画化されてきたし、中にはあまりの変わりように爆死した異色作もあったが、はたして本作はどうなのか。

はじめにお断りしておくと、私は原作未読なので、元ネタとの比較は今回できていない。

そういう意味では『キングダム』『るろうに剣心』といった作品の本サイトでの扱いと同様、あくまで映画作品単体でのレビューになっていることをご承知おきいただきたい。

ああ、映画の雰囲気におされて、つい堅苦しい文体になってしまったが、本作の埋蔵金をめぐるサバイバルバトルは、原作知らずの素人目には、予想以上に楽しめた。

冒頭でさっそく繰り広げられる日露戦争203高地でのロシアとの戦闘シーンの迫力が凄く、久保茂昭監督をはじめ、製作者一同の本作に関するこだわり本気度の高さ、ついでに予算の潤沢さが感じ取れる。

203高地が死屍累々の過酷な戦場であったことは、司馬遼太郎『坂の上の雲』はじめ多くの歴史ドラマでも描かれているが、本作もその地獄のような場面から始まる。

主人公の杉元佐一(山﨑賢人)<不死身の杉元>の異名を持つ青年であること、また、自分の犠牲となり旧友で同じ部隊の寅次(泉澤祐希)が戦死したことなどを、予備知識のない観客に伝えてくれる。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

山﨑賢人の主演とあって、当然『キングダム』とイメージがかぶる。特に、こういう一兵卒として戦っているシーンはもろに。

だが面白いことに、スケールはあちらが上かもしれないが、こと山﨑賢人のアクションに関しては、こちらの方が出来がいいように思えた。

アクションの派手さには劣るが、キレはあるし緩急の付け方もうまい。久保茂昭監督が『HiGH&LOW』シリーズで鍛えたスキルだろうか。アクションのリアルさは本作が優る(熊や狼とのバトルは別にして)。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

日露戦争が終わり、北海道の山奥で砂金採りの杉元は、川辺に居合わせた飲んだくれの男(マキタスポーツ)から面白い話を聞く。

アイヌ民族を殺戮し強奪した莫大な金塊の存在。その首謀者で網走刑務所にいる「のっぺら坊」と呼ばれる男は、隠した金塊の在処を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って、彼らを脱獄させたという。

熊に襲われて死んだその男の刺青を見て、杉元はその話を信じ、必要なカネを手に入れるため、残りの刺青の持ち主を探し始める。随分強引なストーリー展開だが、こうして危険な旅が始まる。

舞台は北海道の雪山中心で相当ロケは大変だっただろうが、その苦労の甲斐がある映像になっている。小樽の町も運河などではなく、北のウォール街と呼ばれた町並みが中心。

『金カム』なので、当然アイヌ文化も多く紹介され、こだわりがありそうだが、そこもアクション映画としては結構頑張って取り込んでいた。

昨年、登別のクマ牧場に隣接されたアイヌコタンというアイヌ文化遺産の保存施設に偶然訪れたのだが、まさに本作にはそこに展示されているような生活の場が再現されていて、興味深く観た。

特に本作での最大の拾い物はアイヌの娘アシㇼパ(リは小さい字)を演じた山田杏奈。原作キャラもアイヌの本来の顔立ちも良く知らないけど、見えるよ見える、本物のアシㇼパに。

山田杏奈は、アクション女優のイメージなかったけど、本作の凛とした感じはいい。劇場予告では、ただの杉元の味方側につくヒロインなのかと思ったが、想像をはるかに上回る存在感。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

『キングダム』でいえば暗殺一族に育ったヒロイン羌瘣を演じた清野菜名のように、主人公をも上回るほどの戦闘能力を持つ女性キャラ。

そうかと思えば、杉本が戦うたびに「殺してはダメ!」などと『るろうに剣心』のヒロイン薫どの(武井咲)のようなことをいう二面性もある。

さて、本作はどうやら、この脱獄囚の24人の刺青の持ち主をみつけては、皮を剥いで集めて宝探しをする物語のようだ。

刺青の持ち主はみな殺されて皮を剥がれるが、脱獄の名人、白石由竹(矢本悠馬)だけはうまい具合に杉元とアシㇼパの懐に入り、仲間のようになる。矢本悠馬の持ち前のコミックリリーフ的なキャラが、本作に活きている。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

本作の残念な点といえば、敵陣営の層の弱さだろうか。

首謀者の「のっぺら坊」は監獄の中だが、その代わりに脱獄囚の頭領として暗躍しているのが、舘ひろし演じる、新選組の鬼の副長・土方歳三

彼に捕まり、協力するようになる不敗の巨漢・牛山辰馬(勝矢)。この辺の連中はみな暗号の刺青を背負っている。

一方、陸軍最強の第七師団もこの刺青を集めており、それを統率するのが中尉の鶴見篤四郎(玉木宏)。彼の配下には尾形(眞栄田郷敦)月島(工藤阿須加)谷垣源次郎(大谷亮平)に双子の二階堂兄弟(柳俊太郎)といった面々。

ラスボス的な土方と鶴見は、本作ではともに金塊をねらう対立関係にある。舘ひろしがこの手の作品に出るのは珍しいが、石原軍団がひとりいるだけで、作品に風格が漂う。ただ、見せ場となるアクションシーンが少なかったのは寂しい。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

一方の玉木宏も、この脳みそに戦傷を受けているクレイジーな中尉を、楽しそうに演じているのがいい。

ただ、同じ山﨑賢人『キングダム』では、玉木宏呂不韋(佐藤浩市)の配下役に収まっている印象が強く、クレイジーキャラだけではやや線が弱い。

過剰演技もギリギリでシリアスに踏みとどまるが、もう一歩進むと、『るろ剣』香川照之の悪ノリキャラのように、映画の雰囲気を台無しにしかねない。

(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

勝矢なんて、完全にお笑い演出に走っていたが、あの体躯を活かして、怖いキャラのままでよいのに。

『るろ剣』といえば、同作でも過激なメイクの敵役で判別できなかった柳俊太郎が、本作では双子の二階堂兄弟役を演じているのだが、いつものロン毛イケメンじゃないので、今回も気づけずじまい。

あとは、『東リベ』でもナイスキャラだった眞栄田郷敦演じるスナイパー緒方が本作ではあっさり倒されてしまったのは残念。

本作は総じて好印象なのだが、杉元とアシㇼパのオソマ(うんこ)ネタは、原作はしらぬが、映画では多用しすぎで興ざめだ。あのネタはワンカットだけで止めた方が効果的だった。使うほどに、作品が軽薄に見えてくる。

また、囚人が24人いる時点で自明だったが、本作はどうしたって一作目では完結しない。まずは白石も含め無事に三人が冒険をはじめ、敵陣営も本格的に動き出すところで序盤戦は幕を下ろす。

エンドロールに井浦新の名を発見し、はてどの役だったかと思ったが、その後に解明される。『仕掛人藤枝梅安』でもこのパターンだったな。

必然的に、続編を待つことになるが、心配なのは、山﨑賢人が、まだまだ壮大なスケールで話が続く『キングダム』シリーズを抱えていることだ。

似たようなカテゴリーの両シリーズ掛け持ちでは、スケジュール調整が大変なのは勿論、さすがに演じる方も観る方も飽きてきてしまうのではないか。

まあ、彼のファンには待ち遠しいことだろうけど。