『間宮兄弟』考察とネタバレ|見てごらん、いまだに一緒に遊んでるじゃん

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『間宮兄弟』

森田芳光監督が江國香織の原作を映画化。大人になっても仲良く暮らす間宮兄弟の日常生活と大胆な計画。

公開:2006年  時間:119分  
製作国:日本
 

スタッフ 
監督・脚本:   森田芳光
原作:      江國香織
          『間宮兄弟』

キャスト
間宮明信:    佐々木蔵之介
間宮徹信:    塚地武雅
葛原依子:    常盤貴子
本間直美:    沢尻エリカ
本間夕美:    北川景子
大垣賢太:    高嶋政宏
大垣さおり:   戸田菜穂
安西美代子:   岩崎ひろみ
浩太:      佐藤隆太
玉木:      横田鉄平
犬上:      桂憲一
間宮順子:    中島みゆき
お祖母ちゃん:  加藤治子

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

ポイント

  • 大した事件は起きないけれど、いい歳しても仲良く楽しくきちんと生活する間宮兄弟の日常が見ていて心和む。
  • 変わり者のオタク兄弟と思いきや、常盤貴子にエリカ様、北川景子に囲まれて、なにげにリア充じゃなのだ。森田芳光作品は、この路線もなにげに好き。

あらすじ

下町のマンションで同居生活をする間宮兄弟は、二人ともオタクで30代が近づく今も大の仲良し。

兄の明信(佐々木蔵之介)はビール会社に勤務、弟の徹信(塚地武雅)は小学校の用務員をしているが夜はいっしょにDVD鑑賞の日々。

ある日、ガールフレンドがほしい二人は、弟の働く学校の教師・葛原依子(常盤貴子)と、二人が通うDVDレンタル店のアルバイト本間直美(沢尻エリカ)を招いてカレーパーティを開くことを思いたつ。

  

今更レビュー(ネタバレあり)

いい歳こいても仲良し兄弟

森田芳光監督作品にしては、これといった事件は何も起きない、平和な日常ドラマだ。だが、退屈はさせず、心に安らぎを与えてくれる。

江國香織の同名小説を映画化したもので、大人になっても仲の良い兄弟が楽しく暮らす日々を、原作の良さをしっかりと生かしながら映像化に成功している。

冒頭、新幹線の車両が数多く並んでいる大井車両基地を陸橋から眺めている間宮兄弟。兄の明信(佐々木蔵之介)ビール工場に勤務、弟の徹信(塚地武雅)小学校の用務員。ともに独身で一緒の部屋に仲良く暮らしている。

部屋を写す場面でヘリの音が聞こえ一瞬『家族ゲーム』を思わせるが、こちらには不穏な雰囲気は皆無。

趣味の書籍や模型や紙飛行機などが秩序正しく配置された部屋で、仲良く映画を鑑賞したり、ベイスターズ戦をスコア付けながら観戦の毎日。美術スタッフの気合いなのか、書架に並ぶ本までこだわりを感じる。

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弟・徹信に塚地武雅

いい歳して、こんなに仲良しの兄弟いるのかよとも思うが、羨ましくもある。この兄弟のキャスティングを生み出した森田芳光監督は、さすがの先見の明。

ぽっちゃり体型と丸顔で憎めないお人好しキャラの弟・徹信に、ドランクドラゴン塚地武雅を大抜擢。映画初主演だが、彼の存在なしではこの作品は成り立たなかっただろうと思わせるフィット感。

本作の活躍から、『ハンサム★スーツ』(2008、英勉監督)でも不細工な非モテ男役で主演するが、これは主役とは言え、塚地の演技力からすれば役不足だった。

役者としての力量は、近作『梅切らぬバカ』(2021、和島香太郎監督)でも伝わってくる。だが、やはり、今でも一番似合っていたのは本作の弟役だろう。

【映画】間宮兄弟 予告

兄・明信に佐々木蔵之介

兄・明信には佐々木蔵之介。助演男優としての活躍が目立っていたが、映画の主演としては本作が初となる。弟とはまるで似ていない細身の体型と、いかにも京都の造り酒屋の倅っぽい端整な顔立ち。

兄が弟と似たルックスだと、ただの非モテなオタク兄弟に見えてしまうが、見た目は対照的な組み合わせで、趣味には意気投合しているというのが、本作の妙味。その意味で、佐々木蔵之介の起用もまた、大正解だったと思う。

京成立石の下町情緒溢れるアーケード商店街を、グリコ・チョコレート・パイナップルと、じゃんけんで競争する微笑ましい姿は、佐々木蔵之介がやるからこそ意外性があって面白いのだ。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

葛原依子先生に常盤貴子

さて、そんな間宮兄弟だって、彼女はほしい。あれこれ計画をたてて、二人の自慢のカレーライスをふるまうホームパーティを企画し、さりげなく知り合いの女性を誘う。

まずは弟の勤務する小学校の教師・葛原依子(常盤貴子)。どこか鈍くさく、学校でも浮いた存在に見える。同僚の犬神先生(桂憲一)と交際しているが、相手は煮え切らない。

つまらない葛原は、カレーパーティの誘いに乗る。学校での冴えない感じと、プライベートのセクシーな格好とのギャップがいい。主演女優ポジションの常盤貴子が、こういう役を受けるのは珍しい。

常盤貴子佐々木蔵之介といえば、『20世紀少年』ユキジフクベエだなあ、いや『アフタースクール』もか、などと思いながら観ていた。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

本間姉妹に沢尻エリカと北川景子

そしてもう一人の女性客は、常連レンタルビデオ店のバイト・本間直美(沢尻エリカ)。その程度の接点で家に誘っちゃう兄弟の行動力も凄いが、応諾する直美も凄い。はじめに冗談で「断る!」というのが、迫力あって沢尻エリカっぽかった。

「お姉ちゃん、そんな見ず知らずの男の家に上がり込んで、襲われたらどうすんのよ」

言っていることはまともだが、行動はぶっ飛んでいる妹の夕美(北川景子)

間宮兄弟と違い、本間姉妹は顔立ちもどこか似ている美人姉妹だ。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

沢尻エリカは前年の『パッチギ!』(2005、井筒和幸監督)で注目を浴び始めた伸び盛り、北川景子は映画初出演の初々しさ。

沢尻エリカはその後、何度か世間を騒がせることとなるが、年齢等を無視すれば、北川景子との配役は逆さの方が似合いそうな気がしたなあ。

さらに広がるネットワーク

妹の夕美には何でも言うことを聞く下僕のような彼氏・玉木(横田鉄平)がおり、また姉の直美には、恋人をほったらかしの草野球バカ・浩太(佐藤隆太)と、一応それぞれ交際相手がいる。

だが、はじめのカレーパーティには姉が、続いて企画した浴衣で花火パーティには妹とその彼氏も加わり、間宮兄弟のパーティのネットワークは広がっていく。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

基本的には、この一組ずつの兄弟と姉妹、それに女教師の5名が、ドラマを動かしていく。といっても、誰と誰が好きになってとか別れてといった恋愛関係は、この中ではほとんど生まれないところが本作のユニークな点だろう。

このメンバーの外で絡んでくるのが、まずは兄・明信のビール会社の同僚の大垣賢太(髙嶋政宏)安西美代子(岩崎ひろみ)

二人は不倫中で、大垣の妻さおり(戸田菜穂)が離婚に応じるよう、明信は協力する羽目になる。そして、それを知った弟・徹信は、兄を非難すると同時に、さおりに惚れてしまうのだ。

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声が大きく、がさつで迷惑かけまくりだが本人自覚なしの能天気キャラ・大垣髙嶋政宏が似合いすぎる。森田作品は『悲しい色やねん』(1988)以来。

一方の戸田菜穂は1996年の『(ハル)』以来の参加か。同作では、ヒロインの妹役という、今回の北川景子的な役だった。

その他のメンバーも個性的

その他、謎の仲良し兄弟を育てた母・間宮順子中島みゆきという配役の不思議さ。

夫を亡くし田舎で祖母(加藤治子)と暮らしながら、衝動買いした中古のロールスロイスを運転して、里帰りした二人を迎えにくるという突飛な人物は、中島みゆきくらいのインパクトがないと説得力がないのかもしれない。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

風変りな人物という意味では、夕美の彼氏の玉木(横田鉄平)もそうだ。

オタク度濃厚な間宮兄弟の部屋に誰よりも関心を持ち、神経衰弱やボードゲームにも滅法強く、フランス語を操り、しまいには彼女を置いてパリに留学してしまう。

実は玉木を演じた俳優だけは、原作を読み直しても思い出せなかったのだが、この役者は一般人だそうで、ならば無理もない。

パーティ・イズ・オーバー

二度のホームパーティで、若い女性3名と親密にはなれたものの、結局どれも立ち消えになり、さらに徹信は大垣さおり(戸田菜穂)にもきっぱりとフラれる(そりゃそうだろ)。

「二人で静かに暮らそう。今まで通り」

橋の上から新幹線を眺めながら、昭信が弟に語る。そして夜の東京湾岸を、トリビアクイズを出し合いながら二台の自転車で滑走する二人『の・ようなもの』(1981)を思わせる原点回帰。

(C)2006「間宮兄弟」製作委員会

さおりにフラれた徹信を、彼氏に置き去りにされた夕美が校庭で慰め、しゃがんで作業をしている彼に背後からおぶさって抱きしめる。

「これは、愛じゃなくて友情の抱擁だからね」

説明しなくても、分かってるって。でも羨ましいぞ、イカ大王!

懲りずにクリスマスだけどおでんパーティを企画する間宮兄弟。「あの兄弟、きっとクリスマスパーティっていうのが恥ずかしいんだよ、お姉ちゃん」と鋭い夕美。

シーソーで遊ぶ本間姉妹。姉妹でこんな風にしていられるのも、もう卒業かもねと心配する姉に、
「何言ってんの、お姉ちゃん。間宮兄弟を見てごらんよ。いまだに一緒に遊んでるじゃん」

ああ、最後まで仲良く、楽しく暮らしている間宮兄弟。さすがに枕並べて寝るのはどうかと思うが、こういう歳の取り方もありかも。

森田芳光は、仕事以外で大人が仲良くしている、こういう関係が好きなのだという。

本作は江國香織が続編を書かない主義なので、続編の企画は実現しなかったそうだが、そのテイストは森田監督の遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』(2012)がしっかり受け継いでいる。