『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』今更レビュー|脱力系刑事たち

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『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』
 Hot Fuzz

エドガー・ライト監督がサイモン・ペグ、ニック・フロストの黄金トリオで贈るコメディ三部作の第二弾。

公開:2007 年  時間:121分  
製作国:イギリス
 

スタッフ 
監督・脚本:      エドガー・ライト
脚本:         サイモン・ペッグ

キャスト
ニコラス・エンジェル: サイモン・ペッグ
ダニー・バターマン:  ニック・フロスト
バターマン署長:  ジム・ブロードベント
カートライト刑事:   レイフ・スポール
ワインライト刑事: パディ・コンシダイン
フィッシャー刑事:  ケヴィン・エルドン
ウォーカー巡査:   カール・ジョンソン
サッチャー巡査: オリヴィア・コールマン
トム・ウィーバー連絡係:
        エドワード・ウッドワード
サイモン・スキナー:ティモシー・ダルトン
メッセンジャー記者: アダム・バクストン
ロイ・ポーター(パブ):ピーター・ワイト
メアリー・ポーター:ジュリア・ディーキン
ブロワー: デイヴィッド・スレルフォール
イヴ(市役所勤務):  ルーシー・パンチ
シューター牧師:   ポール・フリーマン
レズリー・タイラー(花屋):アン・レイド
ジェームズ・リーパー: ケネス・クラナム
ハッチャー:  スチュアート・ウィルソン
ジョージ・マーチャント:  ロン・クック
ケネス警部:         ビル・ナイ

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

あらすじ

優秀すぎて上司や同僚から煙たがられたロンドンの警察官ニコラス(サイモン・ペグ)は、田舎町サンドフォードの警察署に左遷される。

そこは事件らしい事件が起きない平和な町で、署員たちにも緊張感はまったく感じられなかった。

署長の息子ダニー(ニック・フロスト)と組むことになったニコラスは、町内で相次ぐ不審な死亡事件が事故として処理されそうになることに驚く。

そこで彼はダニーと共に独自の捜査を続け、やがて町に隠された秘密を突き止める。

今更レビュー(ネタバレあり)

コルネット三部作の第二弾

エドガー・ライト監督にサイモン・ペグ、ニック・フロストの主演という最強トリオによる愛すべきB級コメディ。

ゾンビ愛に溢れたコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)から本作、そして『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)と続くエドガー・ライトの作品群は<スリー・フレーバー・コルネット三部作>と称されている。

発端は監督が語ったジョークらしいが、どの作品にも味の違うコルネット・アイス(商品名)が登場することにちなんでいる。

本作は日本ではファンの署名により2008年の公開に至った作品。

一方、前作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』は日本では当初DVD販売のみで劇場公開されたのは2019年だったため、製作順に三部作を観ているひとは少ないのかもしれない。連続ドラマではない独立作品なので、特に支障はないが。

田舎に左遷された敏腕刑事

本作は冒頭、頭脳優秀で射撃も一流、ロンドン警視庁で検挙率トップのムチャクチャ優秀な堅物刑事、ニコラス・エンジェル(サイモン・ペッグ)が、上層部の命令で田舎町サンドフォードに転勤させられる。

「君ばかり活躍するから、周囲が無能に見えてしまって、目障りなんだよ」

ビル・ナイが演じる警部の発言が笑える。こうして分かり易く、エリート刑事は鉢植えひとつ抱えて田舎町に赴任する。

小さな法律違反も許せないニコラスは、パブの未成年客を追い出し、飲酒運転の男を着任早々留置所に。だが、その男ダニー・バターマン(ニック・フロスト)は当地の警察署長の息子であり、皮肉なことにニコラスのバディになる。

そして、保守的で長年平和だったこの街で勃発する連続殺人を、なぜか同僚や市民たちに睨まれながら、この二人が捜査していく。

(C) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

終始おバカな行動ばかりを観客が笑うまでこれでもかと畳み掛ける類のコメディではない。刑事ものとしては一応それらしい筋が通っており、それを微妙に崩すところで笑いを取りに行くスタイル。

町のゆるい雰囲気に溶けこまない堅物のニコラスは、まじめ一本槍だからこそ存在意義があるし、そこにダニーがボケを挟んでくるから面白くなる。

小ネタの会話で笑かす系でもないし、ストーリーを破綻させてまでコントに傾倒しない。イギリス製のコメディというのは、こういう雰囲気なのかもしれない。

コメディだけどグロいところは本物

抱腹絶倒には程遠いが、それでもお寒い感じはなく、コメディとしてきちんと楽しめる。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』で印象深かったのは、コメディであるにもかかわらず、ゾンビのメイクや動きを含めた描写に関しては一切手抜きがなかったことで、そこだけを切り取ればホラーとして成立するほどだった。

本作でも、次々と人が死んでいく場面はそこだけまるでA24製作のゴア作品にでもなったような別物感があり、およそコメディの描写ではない。

それを事件性はないと警察の同僚たちが無理に事故で片付けようとする中、ニコラスはダニーを巻き込みながら真相に近づいていくのだ。

FBI捜査官(キアヌ・リーヴス)と銀行強盗(パトリック・スウェイジ)の対立する主人公の友情を描いた『ハートブルー』(1991)、マーティン・ローレンスウィル・スミスのマイアミ市警もの『バッドボーイズ2バッド』(2003)。

数ある刑事ドラマの中で、ダニーがお気に入りの二本は、本作の終盤でもちょっとした伏線として登場する。刑事ドラマのヒーローに憧れるダニーを、現実は違うと言って諭すニコラスとの凸凹コンビ。

サイモン・ペグといえば、今や『ミッションインポッシブル』シリーズでイーサンの右腕ともいえる活躍をみせる敏腕エージェントだ。だが本来の得意分野である、この手のゆるいコメディではどこか生き生きしているように見える。

金髪ショートヘアで制服姿のサイモン・ペグが、どことなくダニエル・クレイグのボンドに見えるなあ、などとのんきに構えていたら、なんと本物が身近にいたぞ。

初めから怪しさ満点のスーパー経営者、サイモン・スキナーを演じているのは、蟹江敬三かと思ったらティモシー・ダルトンその人ではないか。全然元ボンドっぽくないけど。

ニック・フロストは、登場しただけでほっとさせる何かがあり、いつもおバカな役なのだけれど、安心して笑っていられる。サイモン・ペグとの共演はコルネット三部作のほかに、監督は異なるが、これも面白かった『宇宙人ポール』(2011)。

笑いはそこそこ、物語はキッチリ収まる

以下、ネタバレになるので未見の方はご留意願いたい。犯人探しの本格ミステリーというわけではないので少し触れさせていただく。

本作で起きる事件は、結局町ぐるみで昔から暮らすシニア層が中心となって行っている自警行為のようなものだ。町おこしに邪魔になる連中の浄化活動といってもよい。

それ自体は、犯罪映画のオチとしてはさほど目新しくはないが、どうみてもただの老人にしかみえない住民たちが、次々とニコラスたちに銃口を向けて襲い掛かってくる展開は、なかなか新鮮で見応えがある。

敵か味方か判然としなかったダニーとの友情や信頼関係、そして刑事もののDVDを思い出し刑事魂に火が付くニコラス。きちんと伏線が回収されていく律儀な展開も嬉しい。

最後にはジョン・ウー監督ばりの横っ飛び二丁拳銃乱れ撃ちまでとびだして、さすがスーパーポリスメンの名に恥じない活躍ぶりだ。

笑いの濃度は軽めではあるが、やはりこのメンバーのコメディはどこか愛さずにはいられない。近年はコメディから距離を置いているエドガー・ライト監督だが、そろそろこの系列の新作も観たい。