『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』
Guardians of the Galaxy Vol. 3
三作目でも、ガーディアンズたちの魅力と勢いは衰えず。本作では愛すべきロケット・ラクーンの悲痛な半生が明らかに。
公開:2023 年 時間:150分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督・脚本: ジェームズ・ガン キャスト ピーター・クイル: クリス・プラット ロケット:ブラッドリー・クーパー(声) ガモーラ: ゾーイ・サルダナ ドラックス: デイヴ・バウティスタ グルート: ヴィン・ディーゼル(声) ネビュラ: カレン・ギラン マンティス: ポム・クレメンティエフ クラグリン: ショーン・ガン コスモ: マリア・バカローヴァ(声) ハイ・エボリューショナリー: チュクウディ・イウジ ウォーロック: ウィル・ポールター アイーシャ: エリザベス・デビッキ スタカー: シルヴェスター・スタローン
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の恋人ガモーラを失ったショックから立ち直れないスター・ロードことピーター・クイルと、ガーディアンズの仲間たち。
そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケットが命を失う危機にさらされる。
固い絆で結ばれた大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、ロケット自身の知られざる過去にあった。
レビュー(まずはネタバレなし)
独立リーグで暴れるのが丁度いい
MCUも32作目を数え、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の名を冠した映画作品がこれで三作目。シリーズの他の作品やDisney+の特別番組なども含めれば、このメンバーの活躍は相当数観ているが、不思議と飽きは来ない。
その辺がジェームズ・ガン監督の才能なのだろう。ツボを押さえた懐かし目のロックの選曲と、メンバーたちのどんな危機的状況でも余裕綽々で当意即妙な会話を続けるカッコよさ。
◇
アベンジャーズたちとの共闘は勿論盛り上がったし、話の流れとして必然性もあった。
だが、こうして彼らの単体作品を改めて観ると、無理してコラボしなくても、ガーディアンズの連中はメンバーも多いし、独立リーグで十分やっていける魅力があることを再認識した。
マルチバースの世界に頭を悩ませる必要もないし、『ソー:ラブ&サンダー』のようにカメオ出演のような絡み方をすることもない。
ホリデー・スペシャル、意外と重要かも
本作の舞台は惑星ノーウェアから始まる。Disney+で配信された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』で、ガーディアンズが購入した惑星だ。
ついでに、本作でも活躍の喋る犬・コスモもこの時にお目見え。マンティスとピーターが異母兄妹というネタも、ホリデー・スペシャルなしでは分からなかったと思う(特に支障はないが)。
◇
そして、突然現れた全身が金色の謎の男アダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)にガーディアンズが奇襲される。
メンバー個々人の戦いぶりが堪能できて、序盤のアクションとしては申し分ない。だが、ウォーロックは滅法強く、応戦するもロケットが重傷を負ってしまう。
治療しようとするもロケットの体には、創造主である何者かがキルスイッチを埋め込んでおり、下手に治療を試みると彼を死なせてしまうことになる。
ロケットの生命を救え
本作のメインミッションは、大事な仲間であるロケットの生命を救うために、必要なパスコードを創造主を探して奪ってくること。
これまで、まるで『X-MEN』のウルヴァリンの体内にアダマンチウムが埋め込まれた過去のように、ロケットの生い立ちもほとんど語られることがなかったが、ついにヴェールが剥がれることとなる。
◇
いつも威勢のよいロケットの大暴れが中盤まで殆どみられない(何せ瀕死で意識不明なので)のは残念だが、その代わりに、彼が小さなアライグマの時代に戻り、いかにしてあの身体になり、そして傭兵になったのか等、回想シーンで語られていく。
ロケット以外にはピーター、ドラックス、グルート、ネビュラ、マンティスといつものガーディアンズのメンバー、そして亡きヨンドゥからヤカの矢を継承したクラグリン、念力の使い手の名犬コスモ。
あれ、一人足りないぞ。グリーンの顔が足りない。そう、ガモーラだ。サノス退治の際に犠牲になった彼女は、その後2014年当時のガモーラとして復帰はできたものの、どうやらピーターと愛し合っていた記憶などすべて失っている。
今ではガーディアンズではなく、スタカー(シルヴェスター・スタローン)とともにラベジャーズに属しているのだ。
敵陣営の顔ぶれ
一方敵陣営はどうなっているか。冒頭でロケットに瀕死の重傷を負わせた金色に輝く男。
全身金色のキャラといえば、思い出すのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』に出てきた美しきソヴリン人の女王アイーシャ(エリザベス・デビッキ)。どうやらウォーロックは彼女の息子らしい。
そして、この信用ならない母子を牛耳る神のような存在がハイ・エボリューショナリー(チュクウディ・イウジ)、本作のメイン・ヴィランとなっている。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
ロケットだけが天涯孤独だった
思えば、ガーディアンズのメンバーにはそれぞれ家族がいた。
ピーターは地球人でありながら、母を亡くした直後にヨンドゥに拉致されラベジャーズの一員となり、実の父である天界人エゴを倒した経緯がある。マンティスとは、同じ父を持つ兄妹であることも判明した。
ガモーラとネビュラは巨悪の根源サノスを義父に持つ姉妹であり、ドラックスは、サノス一味に愛する妻と娘を殺された悲痛な過去がある。
グルートは、第1作目で戦死した初代グルートを父に持ち、ベビー・グルートが思春期を経て今の若者に成長したキャラだ。
「ラクーン(アライグマ)って呼ぶんじゃねえよ」
そう言い続けているロケットだけが、天涯孤独だった。
その彼が、ハイ・エボリューショナリーによって実験動物のように創り出された。かつて、同じように不遇な目に遭っている心を許した仲間たちがおり、その彼らを救えなかった悔しさと憎しみが、今のロケットを鍛え上げた。
◇
ピーターを筆頭に、ガーディアンズの仲間たちが必死になってロケットを救おうとし、そのロケットは、かつての自分ができなかった、檻に入れられた実験動物たちを救い出そうとする。
「もう、逃げるのはやめた」
危険を顧みずに敵陣に飛び込んでいく彼らの姿には今回も胸アツになる。
そしてラストの展開は
本作で拾い物だったキャラは、全身金色のウォーロック。はじめは敵だったが、最後にはグルートに命を助けられ、彼自身もちょっとしたお返しをする。演じるのはウィル・ポールター。
彼が出演する異色ホラー『ミッド・サマー』について、以前、私の拙レビューに、「まるでグルートとロケットが敵にやられたみたいな殺され方だ」と書いている。その彼がこの作品に出演しているとは感慨深い。
さて、映画は無事に平和が戻ってきた時点で、ピーターが地球に帰ると言い出し、他のメンバーも新たな人生を歩みだすことに。ガーディアンズは解散するのかと思いきや、新たにロケットがリーダーとなる。
残留組は彼とグルート、あとはクラグリンとコスモ、そして救出した子どもたちの中から頭角を現した少女。このメンバーで新作ができるのかは定かではないが。
◇
エンドロール後のエピソードに備えて、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』でケヴィン・ベーコンについて復習しておけばよかった。
私の脳内では、『X-MEN ファーストジェネレーション』での彼のヴィラン役と混同してしまい、笑い損ねた。