『プレステージ』  考察とネタバレ:どんと来い、瞬間移動。まるっとお見通しだ!

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『プレステージ』 
 The Prestige

ノーラン監督といえば、こういう作品がやっぱり好き。二人の天才マジシャンが意地とプライドをかけ瞬間移動で勝負する。そんなのありかと思いつつも、観客は心のどこかで騙されたがっている。これぞグレイテスト・ショーマン対決だ。

公開:2006 年  時間:128分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:  クリストファー・ノーラン
原作:  クリストファー・プリースト
             『奇術師』

キャスト
ロバート・アンジャー:  
       ヒュー・ジャックマン
アルフレッド・ボーデン: 
       クリスチャン・ベール
ハリー・カッター:    
         マイケル・ケイン
オリヴィア:       
     スカーレット・ヨハンソン
ニコラ・テスラ:     
        デヴィッド・ボウイ
サラ:          
         レベッカ・ホール
ジュリア・マッカロー:  
        パイパー・ペラーボ

勝手に評点:4.5
(オススメ!)

(C)2006 TOUCHSTONE PICTURES All rights reserved.

あらすじ

19世紀末のロンドン。ボーデン(クリスチャン・ベール)はライバルであるアンジャー(ヒュー・ジャックマン)の瞬間移動マジックを調べるため、彼のマジックの最中に舞台下に侵入する。

するとアンジャーはボーデンの目の前で、水槽に落ちて溺死。そばにいたボーデンはアンジャー殺害の容疑で逮捕される。

かつて、若きアンジャーとボーデンは、奇術エンジニアのカッター(マイケル・ケイン)の下で互いに修行していた。

ある時、助手であったアンジャーの妻ジュリア(パイパー・ペラーボ)が水中脱出マジックに失敗し溺死する。その原因はボーデンが結んだロープであった。

二人は決裂し、アンジャーは復讐のためにボーデンの手品を失敗させる。以後、二人は互いの邪魔をしながら激しく競い合う。

レビュー(まずはネタバレなし)

だまされたいヤツはみんな集まれ

この作品の世間的な評価はよく知らないが、クリストファー・ノーラン監督の作品の中でも、私のお気に入りの一本。

『ダークナイト』『インセプション』以降の超大型製作費のメジャー作品に設定のスケールでは劣るかもしれない。

だが、観客が気持ちよく騙される点においては何より優るし、トリック頼りではない人間ドラマが描かれている点でも愛すべき作品なのである。

何より、初見でない、つまりトリックが分かってしまった後の再観賞でも、面白味がまったく損なわれないところがいい。

映画全体が、一つのネタバレで瓦解する脆弱な構成にはなっていないのだ(本項ではまずネタバレなしで行きますが)。

そもそもマジックとは何ぞや

水槽脱出マジックの失敗で妻を亡くしたアンジャーが、縄を危険な二重縛りにした同僚ボーデンに復讐を誓う。そこから、二人の天才マジシャンは、意地とプライドを賭けて戦いを繰り広げる。

だが、序盤のシーンでボーデンは、アンジャーの瞬間移動マジックの舞台下で彼を水槽に閉じ込め、溺死させた容疑で裁判にかけられている。これが、戦いの結果なのか。

マジックとは、

まず、 ①確認(Pledge) で、相手に鳥かごの中を見せて、

次に、 ②展開(Turn)  で、かごの中の鳥を消す。だがここで拍手はない。

そして、③偉業(Prestige)で、その鳥を生きて戻す。ここで拍手喝采となる。

マイケル・ケインが語るこの内容は映画に再三登場するが、その度にそういうことかと発見がある。彼の声を聞くだけでノーラン濃度が上がる気がする。

同じ天才マジシャンでも、日々の生活も犠牲にひたすら技を磨くストイックなボーデンと、ステージを沸かすことに長けた、まさに<グレイテスト・ショーマン>のアンジャーは、マジックへの考え方もアプローチも異なる。

そして、どちらにも肩入れさせず、勝敗も、どちらが善悪かも、分からせない作りで映画は仕上げられており、最後まで緊張感は途切れない。

豪華キャスティングのヒーロー対決

豪華なキャスティングについては、今更語るまでもないが、ボーデンを演じたクリスチャン・ベールと、カッター役のマイケル・ケインは、本作の前に大ヒットを飛ばした『バットマン・ビギンズ』からのノーラン組常連となる二人である。

ボーデンのストイックさは、バットマンのブルース・ウェインともどこか相通じる。

一方のアンジャーを演じたヒュー・ジャックマンは、ノーラン作品には初参加。今回はワイルドさ控えめで清潔感のある英国紳士。

中盤以降には、助手役として二人のライバルの間を行き来するオリヴィア役のスカーレット・ヨハンソンまで登場。

バットマンと執事、ウルヴァリンにブラックウィドウという、DCとX-MEN、MCUのボーダーレスな夢の競演のよう。

(C)2006 TOUCHSTONE PICTURES All rights reserved.

以下、ネタバレに入りますので、未見の方はご留意願います。

レビュー(ここからネタバレ)

どんと来い、超常現象

本作では二人のライバル同士が研究に励む序盤から互いの邪魔をしあう中盤戦までの展開も面白いが、各エピソードが終盤の伏線となっているのも見事だ。

物語の中心は二人がトリックを探り合う瞬間移動マジック。大技となっているトリックは2つある。

まずは、アンジャーが遠くコロラドまでテスラ(デヴィッド・ボウイの怪演!)を訪ねて、こしらえさせた瞬間移動機。

ボーデンの偽の日記を解読して騙されてテスラにたどり着いたアンジャーだったが、なんと装置は完成してしまうのだ。それも、クローン複製機として。

つまり、アンジャーは瞬間移動のショーで床下に落ちるたび、水槽で溺死していたということだ。

そんなのありか。初見の際は、この人間複製機は禁じ手じゃないかと思ったが、改めてみると、さほど突飛なものではない。どんと来い、超常現象 (© 上田次郎)

冒頭にでてくる、裏庭に転がる大量のシルクハットのカットで、鋭い人は気づくのかもしれない(なわけないか)。

中盤で小鳥が生き返るマジックに、実は都度小鳥は圧死し、差し替えられていたというトリックがあった(少年が見破って泣くヤツだ)。これは、テスラの発明を暗示していたのだ。

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全部まるっとお見通しだ

大技トリックのもう一つは、ボーデンにはファロンという興行のパートナーがいたが、彼が一卵性双生児だったというものだ。

ファロンは変装しているが、どちらが誰というのではなく、双生児が頻繁に入れ替わってボーデンとファロンの二役で暮らしている。

そんな容易な手かと、真相にアンジャーは嘆く。あれはただの入れ替えだと、カッターが当初に見抜いた通りだった。まるっとお見通し(© 山田奈緒子) だったわけだ。

だが容易な手ではない。アンジャーが<弾丸つかみ>のショーでボーデンの指を撃ったために、ファロンも自ら指を失わなければならなかった

また、双生児の入れ替えは周囲にも明かさなかった為、愛情に疑いを持った妻サラ(レベッカ・ホール)は自殺し、愛人だったオリヴィアも去っていった。犠牲は大きい。

私生活を犠牲にしても周囲を欺き、マジックにつなげる。中国人マジシャンが健康な足を常時引き摺って歩く姿は、このトリックへの伏線だったのだ。

完全なる勝者はいない

技術志向とストイックさで、アンジャーの妻を二重縛りで水槽に溺死させてしまったうえに、妻も自殺に追い込んだボーデン。

観客の驚きと喝さいのために演出の腕は磨くが、苦労を好まないアンジャー。犠牲を好まない男が、テスラの悪魔の発明により最大の犠牲を払う羽目になったのは、皮肉なものだ。

本作に完全なる勝者はいない。

アンジャー殺しの容疑で監獄に入り絞首刑に送られたボーデンは、自ら認めたように敗者だろう。死刑執行寸前にテスラの機械で救われるのかと思っていたら、そんなに甘くなかった。

一方のアンジャーは、妻の復讐を果たしボーデンを打ちのめしたものの、伏兵ファロンに撃たれて、大量のクローン死体とともに焼かれてしまう。こちらも、悪魔に魂を売ってしまったのだ。

生き残ったファロンは、ボーデンの姿に戻り、娘を引き取って生きていくことになる。彼も失ったものは大きいが、全体バランスでは僅差で辛勝したといえるかもしれない。

最後まで見応えのある作品だった。やはり、この手のドラマは本物のマジックと同様に、見破ろうとしないほうが、面白い。本作の中でも言われるように、観客は騙されていたいのだ。

なお、プリーストによる原作は世界幻想文学大賞を受賞。二人の戦いやテスラをはじめ登場人物や奇術のトリックなどは、概ね原作と重なるのだが、筋書きは微妙に異なる点が多い。

話としての面白味やキレは映画の方が上と思ったが、深みは原作が一歩優るといった印象。小説の当時の解説に、ジュード・ロウとガイ・ピアースで映画化される予定と書いてある。それはそれで、観てみたい。