『荒野の誓い』 考察とネタバレ:ウェスタン・ノワールの面白味も邦題も、私には難しい

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『荒野の誓い』 Hostiles

クリスチャン・ベールのノワールな西部劇。宿敵のシャイアン族の首長を居住地まで護送する危険な旅。そして家族をコマンチ族に殺された女。人はみな、過去の感情を捨て、前に進むことができるのか。

公開:2017 年  時間:135分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      スコット・クーパー

キャスト
ジョー・ブロッカー大尉: 
        クリスチャン・ベール
ロザリー・クウェイド:  
         ロザムンド・パイク
イエロー・ホーク首長:  
         ウェス・ステュディ
ブラック・ホーク:    
           アダム・ビーチ
チャールズ・ウィルス軍曹:
          ベン・フォスター
ルディ・キダー少尉:   
        ジェシー・プレモンス
フィリップ・デジャルダン:
        ティモシー・シャラメ

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

(C)2017 YLK Distribution LLC. All rights reserved.

あらすじ

1892年、アメリカ・ニューメキシコ州。インディアン戦争の英雄で、現在は看守を務めるジョー・ブロッカー(クリスチャン・ベール)は、かつて宿敵関係にあったシャイアン族の酋長イエロー・ホーク(ウェス・ステュディ)とその家族をモンタナ州の居留地へ送り返す任務を命じられる。

ニューメキシコからコロラド、そしてモンタナへ。その道中でコマンチ族の虐殺によって家族を失った過去を持つロザリー(ロザムンド・パイク)と出会い、彼女も旅に加わることとなる。

一行はなんとか厳しい辺境地を乗り越えたが、危険に満ちた旅をとおして、お互いが協力しないことには生きてはいけない状況に置かれていることを知る

レビュー(まずはネタバレなし)

ウェスタン・ノワールなのだった

『ファーナス/訣別の朝』でタッグを組んだクリスチャン・ベールスコット・クーパー監督による、産業革命後の開拓地を舞台にした西部劇。

『悪党に粛清を』『ある決闘 セントヘレナの掟』に続く、ウェスタン・ノワールの第3弾と公式サイトにあったが、残念ながら、どれも観ていない。

配給会社の独自企画だろうか。西部劇には疎いのだ。そもそも、『ファーナス/訣別の朝』だって観ていない。スコット・クーパー監督で思い出すのは『クレイジー・ハート』『ブラック・スキャンダル』だが、西部劇となると、どういった作風になるか。

導入部分の話の運びはうまい。まずは、ロザリー・クウェイド(ロザムンド・パイク)の夫や子供たちがコマンチ族に襲撃される。いきなりの残虐シーンだ。

森の中で追っ手から隠れ息を潜める彼女の緊張感が伝わる。これは当然、コマンチ族に仇を討つドラマだと思ったものの、話はそう単純ではない。さすが、ノワールたる所以である。

そして、舞台は変わり、かつて原住民を殺しまくった英雄ジョー・ブロッカー(クリスチャン・ベール)が登場。

何の因果かかつての宿敵であるシャイアン族の酋長イエロー・ホーク(ウェス・ステュディ)と家族を居留地まで護送する役を引き受ける羽目になる。

そして護送の途中でジョーの一行は、惨劇のあった家で呆然自失のロザリーに遭遇し、彼女も旅に加わることになる。

はじめはイエロー・ホークを敵対視していたジョーだったが、コマンチ族の襲撃を警戒する中で、彼らの戦闘能力を認めて協力を求めざるを得ない状況だ。こうして、宿敵同士に不思議な関係が生まれ始める。

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短命も多いが粒ぞろいのキャスティング

散々に原住民を殺めてきたかつての英雄ジョーを演じるクリスチャン・ベール。今回は『バットマン』のブルース・ウェインの清潔感や『フォードVSフェラーリ』の時の口の悪さもない、ひげ面の寡黙なガンマンだ。まあ、何でもサマになる役者である。

イエロー・ホークを演じたウェス・ステュディは、純血のチェロキー族であり、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『ラスト・オブ・モヒカン』の頃から、この手の役柄では第一人者といえる。

ロザリー・クウェイド役のロザムンド・パイクは、コマンチ族への怒りと家族を失った悲しみのひとだったが、後半ではライフル片手に気の強さを発揮。『ゴーン・ガール』さながらの勇ましさを見せる。

途中で一緒に連行することになる、昔のジョーをよく知る軍曹。今は囚人のチャールズ・ウィルスに『最後の追跡』ベン・フォスタークリスチャン・ベールとは、『3時10分、決断のとき』でも共演。この西部劇は面白かった。

そして、ジョーが率いる護衛隊のメンバーには、『もう終わりにしよう』ジェシー・プレモンスや、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』ティモシー・シャラメなど。結構売れ筋の若手俳優を配しているのだ、みんな短命だけど。

レビュー(ネタバレあり)

原住民の部族と西部劇

さて、インディアンで思い出す映画といえば何だろう。本作のウェス・ステュディも出演、ケヴィン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』スー族の話。

懐かしいダスティン・ホフマンの『小さな巨人』シャイアン族。本作ではブラック・ホークを演じたアダム・ビーチ出演のニコラス・ケイジ『ウィンド・トーカーズ』ではナヴァホ族。

また、西部劇の傑作として知られるジョン・ウェインの『捜索者』コマンチ族。ジョーはアパッチ族を捕獲する仕事をしていたが、『駅馬車』をはじめ、アパッチ族の西部劇も本数が多い。

部族による差異が分かっていると、もっと映画が楽しめるのかもしれないが、本作では、コマンチ族が最も野蛮に描かれているようだ。

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勧善懲悪ではない、複雑な組み立て

以下、ネタバレになりますので、未見の方はご留意願います。

本作では昔ながらの西部劇や時代劇のように、中盤までドラマを思い切り盛り上げておいて最後に雌雄を決する大勝負がある訳ではない。

いや、終盤にガンファイトはあるのだが、当初にラスボスと思われたコマンチ族は早々に成敗されるし、イエロー・ホークに至っては、寄る年波に勝てずに旅の途中で死んでしまう。

ドラマの骨格になるような対戦相手は残っていないのだが、最後には、原住民から土地を取り上げたアメリカ人が突如現れ、ジョーは、死に際で握手をして心を通わせた酋長のために、白人相手に銃を向けることになるのだ。

この流れを、西部劇の新たな潮流と感じられる人には、本作は馴染むかもしれない。私は、まだ勧善懲悪でスカッとするガンファイトに、少し未練がある。

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罪を認め、前に進む勇気

白人と先住民との対立が激しかった時代に、それぞれに多くの敵を殺してきたジョーとイエロー・ホーク。だが、そんな対立は終わらせなければいけないと、思う市民が現れ始めた。

護送任務もそのような社会情勢を反映したものであり、これまでの原住民への行為を悔い改め、謝罪する者もいた。イエロー・ホークはジョーに語りかけ、握手を求める。

「俺もあなたも、多くの友を失った。前に進もう」

扱いにくそうなテーマを正面から採り上げた姿勢を評価したい。

襲撃してきたコマンチ族を返り討ちにしたのは誰か、或いはラストシーンでロザリーと少年を乗せた列車が動き出す駅で、別れたあとのジョーが取った行動は。

これらの重要なシーンも、台詞は少なく、また役者の動きも抑え目なので、下手をすると見過ごしてしまう。

その意味でも、分かりやすい西部劇とは一線を画した、ウェスタン・ノワールなのであった。