『ミッション:インポッシブル フォールアウト』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ミッションインポッシブル フォールアウト』一気通貫レビュー⑥

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『ミッション:インポッシブル フォールアウト』 
Mission: Impossible – Fallout

歴代最高の出来栄え。スタントなしのアクションが凄すぎて、ジャッキー・チェンと張るサービス精神のトム・クルーズ。

公開:2018 年  時間:147分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:    クリストファー・マッカリー

キャスト
イーサン・ハント:    トム・クルーズ
ベンジー:         サイモン・ペグ
ルーサー:      ヴィング・レイムス
ウォーカー:     ヘンリー・カヴィル
イルサ:     レベッカ・ファーガソン
ソロモン・レーン:   ショーン・ハリス
スローン長官:   アンジェラ・バセット
ホワイト・ウィドウ:
                ヴァネッサ・カービー
ジュリア:         ミシェル・モナハン
エリック:      ウェス・ベントリー
ゾラ:     フレデリック・シュミット
ハンリー長官:アレック・ボールドウィン
ジョン・ラーク:      リャン・ヤン

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

あらすじ

盗まれたプルトニウムを回収するミッションについていたイーサン・ハントと仲間たちだったが、回収目前で何者かによりプルトニウムを奪われてしまう。

事件の裏には、秘密組織シンジケートの残党が結成したアポストルが関与しており、手がかりはジョン・ラークという名の男だった。

ラークが接触するという謎めいた女、ホワイト・ウィドウに近づく作戦を立てるイーサンとIMFだったが、イーサンの動きに不信感を抱くCIAが、監視役として敏腕エージェントのウォーカーを送り込んでくる。

イーサンは疑惑の目を向けるウォーカーを同行しながら、ミッションを遂行する。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

歴代最高作といってよいかも!

全盛期からは動きにキレはなくなってきたのかもしれないが、イーサンは依然、体力の衰えを感じさせない。このシリーズも長くなってきたが、回を重ねるごとに、面白味もアクションのレベルも増してきている

前作に続き監督はクリストファー・マッカリー。それもあって今回は前作の『ローグ・ネイション』からの繋がりも多い。

『ローグ・ネイション』は完成度は高かったが、世界各国を目まぐるしく渡り歩き、ユーモアの入れ方なども、どこかジェームズ・ボンドの模倣感がつきまとった感は否めない。MI6が絡んできたからかもしれない。

その点、今回はシリアス度が増している。イーサンがジュリアと結婚式を挙げる冒頭のシーンは、いーさんか寅さんかという夢落ちで笑いを取ったが、その後は笑いをベンジーに任せて、ひたすらシビアに行く。

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

ソロモン・レーン(ショーン・ハリス)の逮捕から二年、敵のシンジケートの残党がアポストルと名乗りテロ活動を続けている。新たな雇い主はジョン・ラークという謎の男。

彼らは、東欧マフィアが盗んだプルトニウムを手に入れ、核兵器にしようと企んでいる。ジョン・ラークは、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)という仲買人を通して売買しようとしていると知り、IMFのメンバーはその現場に侵入する。

今回は、真剣にストーリーを把握しようとすると、結構難解だ。冒頭の早口の指令だけでは、なかなか事情が頭に入らない。

ただ、マフィアからプルトニウムを先に購入してしまおうとしたイーサンたちが取引に失敗し、誰も素顔を知らないジョン・ラークになりすまして、ホワイト・ウィドウからプルトニウムを横取りしようという話はおぼろげに分かる。

ちなみにメンバーの一人、ジェレミー・レナはマーベル映画の撮影に忙しく本作は欠席、ブラック・ウィドウと共演している頃だ。

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

まずはヘイロージャンプで

前回CIA長官だったハンリー(アレック・ボールドウィン)は今やIMFのトップに降格。

そしてIMFをマスク変装好きのハロウィン集団だとディスるCIAの新長官スローン(アンジェラ・バセット)と、その敏腕エージェントでイーサンの監視役となるウォーカー(ヘンリー・カヴィル)が新たなキャラクター。

お約束のガチなアクションでは、まずは上空7600mからのヘイロージャンプと呼ばれる高速降下。これが度肝を抜く。

本当にスタッフが開発したというヘルメット内部のLEDライトが美しくSF映画のようで、つい全体が特撮に見えてしまうが、なんとトムも撮影隊も、本当に落下しているのだ!

酸素欠乏は勿論、死亡事故も当然ありえる危険なシーンだが、長期にわたる過酷な訓練でモノにしている。この高度を降下したメジャー俳優など、他にはいないそうだ。さすがトム・クルーズ

一緒にジャンプしたウォーカーは墜落死寸前をイーサンに救われるのだが、それにも気づかない、強いけどちょっとマヌケキャラのようだ。やがて二人にも連帯感が芽生えるものと期待したのだが…。

男性トイレでガチバトル

ホワイト・ウィドウのいるパーティ会場でジョン・ラークになり替わろうと、男性トイレで拉致しかけるイーサンとウォーカーだが、このアジア人(リャン・ヤン)がカンフーの使い手で、べらぼうに強いし、カッコいい

この2対1のアクションシーンは、シリーズ随一の迫力だった。私には歴代で最も印象に残るバトルと言える。スタント俳優のようだが、リャン・ヤンのクレジットは、もっと目立たせてあげたかった。

しかも、強豪二人が力を合わせても、この男に勝てないなんて。彼の最期は、突如現れたイルサ(レベッカ・ファーガソン)の射殺によるものだ。対戦成績として負けはついていない。

イルサとの再会にイーサンは動揺する。だって、前作であれだけ苦労して、彼女がMI6から足抜けするのを手助けしたのだから。

だが、彼女は未だにMI6から裏切り者の疑惑を持たれ、他国にMI6の実情を口外される前に、捕らわれのソロモン・レーン(今回はヒゲ面で前作のメガネのインテリ風な面影なし)を始末して身の潔白を示せと言われていたのだ。

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

複雑な組織の相関関係

こうして前作同様に、IMFとその母体CIA、そして英国のMI6、さらにはテロ組織シンジケート(本作ではその残党のアポストル)という組織がからみあう話になっている。おまけに、ホワイト・ウィドウの仲介組織もいっちょ噛みしてくる。複雑度合いは前作の比ではない

ソロモン・レーンの身柄を中心に話を整理しよう。アポストルは彼を奪還したい。MI6はイルサを使い彼を始末して口封じしたい。また、正体不明のジョン・ラーク(アジア人はダミーだった)は核兵器、アポストルはプルトニウムを持っている。

ラークのもとにプルトニウムが渡らないようにミッションを遂行しているのがイーサンらIMF。その上部組織CIAも目的は同じだが、彼らはイーサンこそ実はラーク本人ではないかと疑っており、ウォーカーに監視させている。こういう構図だ。

ホワイト・ウィドウは商売としての仲介屋で、誰の味方かは不明。ただ、彼女は懐かしいマックス(第1作に登場した女武器商人)の娘のようだから、信用はおけないかも。

人間的な弱さがイーサンの魅力

本作は話は複雑でも、ドラマとしてのポイントはきっちり抑えている。行動力と身体能力は抜群でも、人間的な弱さで窮地に立つイーサン。

序盤ではルーサー(ヴィング・レイムス)を救うためにプルトニウムを奪われ、巻き添えの女性警官を救うためにホワイト・ウィドウの仲間を撃つ。

またレーンを殺させる訳にいかず、わざとイルサのバイクにクルマを(死なないと確信し)正面衝突させた。前作ではイルサをよける為に自分のバイクを転倒させたというのに。

そして、終盤では、自分との関係を断ち切って安全圏に置いた筈の妻ジュリア(ミシェル・モナハン)と、その夫(再婚してた!)にまで、敵の魔の手が及ぶのだ。

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

悪人顔の男が犯人だ!

さて、IMFのハロウィン攻撃にまんまと騙されて自白してしまうが、ジョン・ラークの正体はウォーカーなのだ。さすが悪人顔のクラーク・ケント、ヘンリー・カヴィル。彼がラスボスなら映画が締まること請け合い。

彼が、イーサン悪人説を流布しスローン長官を手玉に取る。この女はオフィスからリモートアクセスで「全てお見通しよ」的な余裕をみせるが、無能上司

IMFのメンバーまで包囲させた部下にアポストルが紛れ込み、まんまとラークとレーンが逃げられてしまう。ハンリー長官も、せっかくの見せ場のあとで刺殺されてしまい、非常に無念だ。

ところで、ラークはアポストルの雇い主のはずだが、プルトニウムを譲り受けるのにどうしてホワイト・ウィドウの仲介が必要だったのかが、いまひとつ理解できない。

イーサンをはめることが狙いだったということか。ちょっと説得力に欠ける。これは、撮りながら脚本を書いていく、本シリーズのシステムの弊害かもしれない。

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

クリフハンガーなのはよく分かった!

ドラマにまけじと、中盤以降のアクションシーンも凄まじい。

バイクアクションは言わずもがなだが、ロンドンの建造物の屋根から屋根へと跳び移るトム・クルーズ骨折したというシーンも、そう聞くと改めて凄い。

自らヘリの操縦までできるようになってしまったというトムにしか撮れないヘリコプターバトルのアクションも、驚異でしかない。

だって、スタントも使わずに全部自分でこなしてしまい特撮も不要って、もはや誰にも超えられない世界ではないか。これだけのアクションのテンコ盛りでは、文句のつけようがない。

ああ、でも、ひとつだけ言わせてほしい。<フォールアウト>って別に人間の落下ではなく放射性降下物のことなのだ

だから最後の最後で核兵器をストップさせる、文字通りクリフハンガーのバトルアクションは本作にふさわしい。それは分かる。

けれど、カウントダウン残り1秒、というかジャストで制止というのは、あまりに出来すぎではないか。ここはもう数秒余裕があってもよかったかな。

今回久々登場のジュリア、ラストのイーサンとの会話は、胸を打つ。互いが大切だからこそ、別れる二人。彼がこれまで愛した二人の女性の、もう一人はイルサで合っている?(2作目のナイア・ホールじゃないよね)

それにしても、もはや007越えの風格がある本作。このまま爺さんになってもやってほしい、イーサン。