『ミッションインポッシブル』一気通貫レビュー①

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『ミッション:インポッシブル』 
 Mission: Impossible

長寿シリーズとなったトム・クルーズ主演のスパイアクション第1作。ブライアン・デ・パルマ監督作品。『スパイ大作戦』からのファンのおメガネにかなったかは微妙だが、興行成績的には大成功!

公開:1996 年  時間:110分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:   ブライアン・デ・パルマ

キャスト
イーサン・ハント: トム・クルーズ
ジム・フェルプス:ジョン・ヴォイト
クレア・フェルプス:
      エマニュエル・ベアール
ジャック・ハーモン:
       エミリオ・エステベス
サラ・デイヴィス: 
 クリスティン・スコット・トーマス
ハンナ・ウイリアムズ: 
     インゲボルガ・ダクネイト
フランツ・クリーガー:ジャン・レノ
ルーサー・スティッケル: 
        ヴィング・レイムス
マックス: 
    ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ユージーン・キトリッジ: 
        ヘンリー・ツェニー

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

あらすじ

秘密組織IMFの諜報員に新たな指令が下る。東欧に潜入しているCIA情報員のリストを盗んだプラハの米国大使館員とその買い手を逮捕せよ。

ジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)以下、イーサン・ハント(トム・クルーズ)らは作戦を実行するが、あろうことか情報が敵に漏れ、イーサンを除く全員が殺されるという事態に。

ひとり生き残ったイーサンは裏切り者を捜し出すべく動き出す。

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一気通貫レビュー(ネタバレあり)

スパイはつらいよ

『ミッション・インポッシブル』のシリーズは、1996年公開の本作からトム・クルーズが主役のイーサン・ハントを演じ続け、今なお継続している長寿シリーズになっている。

彼が何歳までこのタフな役を続けられるのか、ある意味興味深いが、7作目の公開に備えて、のんびり全作品を振り返ってみようと思う。

第1作にあたる本作は、その複雑なストーリーゆえ、数年ぶりに観ると細かい点はすっかり忘れており、何度でも楽しめるという特典がある。

ブライアン・デ・パルマが監督ということで公開当時は大いに期待したのだけれど、私の勝手な評点としては今一つだった。

最初の発射角がこんなに低くて、全作レビューまで持つのか不安になるが、確か次第に完成度が上がってきたと記憶するので、何とか持ち直してくれると思う。

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スパイ大作戦へのレスペクトなし

本作が期待はずれだった点は、オリジナルのTVシリーズ(邦題は『スパイ大作戦』)へのレスペクトがまるでないことに尽きる。それどころか、徹底的にズタズタに引き裂いてしまっている。

昔の海外ドラマなので、シニア層にはご記憶の方も多いと思うが、オリジナルはこんなに豪華絢爛なアクションや破壊工作は少なく、むしろチームワークで敵を罠にかけて追い詰めるような、心理戦やコンゲームのような面白味が売りだった。

勿論、大規模予算で派手にやること自体は、映画作品として悪くない。

ただ、チームプレイを大事にし、不可能なミッションを全員無事で成し遂げることが前提となっていたはずのドラマに、仲間同士の裏切りや殺し合い、そして絶対的な存在であったジム・フェルプスに、あのような卑劣な役を与えることは、あってはならないことだ。

このドラマで仲間を信頼できないものにしたのは、禁じ手ともいえるし、それで面白味が増したとも思えない。

結局、トム・クルーズイーサン・ハントという、IMFの新たな諜報員を主役に据えたかったが、それには古参のフェルプスが邪魔だった。ならば悪役にしてしまえ、ということなのだろう。

ミッションを告げた後に煙をあげて消滅するテープとお馴染みのテーマ曲だけを拝借した<換骨奪胎>なのだ。

映画『ミッション・インポッシブル』は『スパイ大作戦』とは別物です。類似品にご注意ください。そう言ってくれれば、失望せずに済んだかもしれない。

見応えのあるシーンもある!

TVシリーズに特段の思い入れがない観客層には、本作を高く評価する人もいるとは思う。私にも、いくつか興奮できるシーンはあった。

例えば、最初に指名されたチームメンバーでプラハのパーティに潜入し、ターゲットから極秘情報のNOCリストを奪おうとするミッション。これぞIMFのチームプレイというワクワク感。それぞれに持ち場がある。

このシーンが全員のキャラ紹介を兼ねるのだと思っていたら、なんとイーサンクレア(エマニュエル・ベアール)を残して全滅するなんて。

これは『スパイ大作戦』ではあり得ない展開。エレベーターでの惨殺シーンはオリジナルのファンにはトラウマになりそう。

このメンバーにしたって、エミリオ・エステベスクリスティン・スコット・トーマスジョン・ヴォイトといった名だたる俳優陣が、ミッション開始早々に姿を消すとは、驚きだ。

かくしてチームは全滅し、イーサンには本部のキトリッジ(ヘンリー・ツェニー)から、内通者容疑がかけられる。イーサンはCIAに追われながら、仲間を殺した本当の内通者をみつけだし、借りを返さなければならない。

宙づりシーンだけでも満足感あり

本作最大の見せ場は、何といってもCIAの本部に潜入し、二重三重の多要素認証がかけられたマシンルームに天井ダクトからぶら下がってアクセスし、データを奪う有名なシーン(フロッピーディスクや、メール受発信の画面とかに、時代を感じるのはご愛嬌)。

CIA職員の出入りのタイミングから、イーサンの地べたスレスレでの静止、滴る汗とかネズミとか、このシーンは編集も含めて文句なしの出来栄えだ。

話は前後するが、人手が足らず、イーサンは解雇職員リストからクリーガー(ジャン・レノ)ルーサー(ヴィング・レイムス)を仲間に加える。

ルーサーはその後、本シリーズに連続出場を果たす頼れる仲間となるが、クリーガーははじめから胡散くさい。なので、前述のぶら下がりシーンでは仲間の一体感が多少はあったものの、その後は、いつ裏切るのだろうという見方になってしまう。

お約束の身体を張ったアクション

ここから更にネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

一番おカネがかかっていそうなのは、データ交換取引をするために乗り込んだTGV(フランスの高速列車)の走行車両の上のアクションシーン。風が強すぎて、アクションどころではないのだが、迫力はある。

イーサンがフェルプスを追い詰め、そこにヘリコプターで現れたクリーガーが、イーサンの敵側につき参戦する。

ただ、後にシリーズに登場するトム・クルーズが体を張った数々のスタントシーンに比べると、正直、若干リアルさに欠ける気がする。ハラハラ感ならぶら下がりの方が格上だ。

ちなみに、シリーズお馴染みのマスクを剥がして実は変装してました的なシーンも、本作ではマスクが妙に分厚く、まだ洗練されていない。年々進歩しているのだと分かる。

裏切り者が多すぎる

結局、振り返れば、内通者のフェルプスは妻のクレアと組んで、チームを全滅させて奪ったNOCファイルを武器商人マックス(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)に売り渡そうとしていたのだ。

そしてクリーガーもフェルプスの一味だった。こんなにスパイが大勢出てきて、イーサンの仲間はルーサーしか残っていない。何とも寂しい話だ。

しかも、イーサンとクレアの恋愛感情まで匂わせるような見せ方は、どうにも取って付けたようでいただけない。

イーサンは、マックスとのメールの暗号に使う聖書が、フェルプスの泊まるホテルのものであることに気づき、彼を疑い始めた。

それは良いとして、生きていたフェルプスと再会したときのイーサンの回想シーンで、すでにフェルプス、クレア、クリーガーが裏切り者であることが示される。こんな早い段階で推理を明かす必要があっただろうか

観客に真犯人を明かすのは、電車が動き出すまで待つのがセオリーではないか。難解な構成ゆえ、早めに種明かししてくれたのか。つまらなくなるのを承知で。

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ジェームズ・ボンド対比でどうか

本作は仮想敵である007シリーズ同様に、特殊ガジェットが登場する。今回は見たままの映像が送れるメガネと、爆発するチューインガムだ。

このメガネは、イーサンの機転で、フェルプスが生きていることを本部のキトリッジに知らせ、「おはよう、フェルプス君」の名フレーズを引き立たせてくれる。

ここで思わずグッと盛り上がってしまったのだが、ちょっと待て。キトリッジって、イーサンの家族も平気で逮捕するような憎まれ役だったのでは? 

最後にいいとこ持っていかれたようで、ちょっとスッキリしないぞ。あれか、ボンドに出てくるレイフ・ファインズみたいに、はじめ嫌な上司だけど、実はいいヤツなのか?

本作は、オープニングとエンディング、そして劇中でCIA本部に潜入する絶好のタイミングに絞ってテーマソングを挿入している。これは効果絶大。

この曲のおかげで、映画を観終わったときの満足度は星一個分くらい稼げているに違いないと、私はにらんでいる。