『マイノリティ・リポート』今更レビュー|あんた、36時間後に人殺すよ

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『マイノリティ・リポート』
 Minority Report

スピルバーグがトム・クルーズと組んで贈りだす、犯罪を予知し逮捕する捜査官のSFサスペンス

公開:2002年 時間:145分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:   スティーヴン・スピルバーグ
原作:    フィリップ・K・ディック
      『マイノリティ・リポート』
キャスト
ジョン・アンダートン: トム・クルーズ
ダニー・ウィットワー:コリン・ファレル
アガサ:      サマンサ・モートン
バージェス: マックス・フォン・シドー
ハイネマン博士:    ロイス・スミス
ソロモン医師:  ピーター・ストーメア
ララ・クラーク:  キャスリン・モリス
ギデオン: ティム・ブレイク・ネルソン
フレッチャー:   ニール・マクドノー

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

あらすじ

西暦2054年。ワシントンDCでは予知能力者を利用して凶悪犯罪を予知する画期的なシステムが開発され、犯罪予防局が犯人を事前に逮捕することで、犯罪件数は激減していた。

そんなある日、犯罪予防局の凄腕捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は、自分が36時間後に殺人事件を起こすと予知されたことを知る。

しかもその被害者となるのは、ジョンとは全く面識のない見ず知らずの男だった。同僚たちから追われる身となった彼は、真相を解明して自らの容疑を晴らすべく奔走する。

今更レビュー(ネタバレあり)

スピルバーグトム・クルーズが組むのだから、もっとド派手でエンタメ感たっぷりのSFアクションを想像するだろう。実際、本作から3年後に公開された『宇宙戦争』は、そんな作品だった。

でも、この作品はクールだけど、地味でマニア好みのSF作品に仕上がっている。カネはかかっているが、全体が暗いトーンで抑えられている。そりゃそうか、フィリップ・K・ディックの原作ものなのだから。

この作品は何度も観ているが、今回初めて原作を読んでみた。そして驚いた。原作は短編なのだ。

こんな複雑怪奇な物語を短いページで鮮やかに描き切るディックの筆力も凄いが、犯罪を予知して未然に逮捕するというそのユニークな設定を生かし、145分にまで話を広げて破綻なく映画化するスピルバーグもまた大したものだ。

ディック原作映画といえば、レプリカントを見つけては始末する『ブレードランナー』の特別捜査官も魅力的なキャラだったが、犯罪予防局の敏腕捜査官というのもまた相当クールな役どころ。

三人の予知能力者(プリコグ)によって犯罪を事前に察知する防犯システムが実用化され、犯罪直前の現場に捜査官が現れて犯人を逮捕する。

トム・クルーズ扮する主任捜査官ジョン・アンダートンが、オーケストラの指揮者のように両手を虚空に振りかざし、システム画面を華麗に操作して現場を突き止める姿が実に絵になる。この動きの美しさと先進性は四半世紀経っても色褪せない。

このアンダートンには、何年も前に幼い息子がプールで誘拐され行方不明のままという過去を抱えており、悲しみを癒すために違法ドラッグに手を染めている。

そしてある日、防犯システムのモニターに、自分が殺人を犯す映像が登場したことで、所属組織から追われる立場となるのだ。こうしてサスペンスタッチの物語が転がっていく。

ディック原作映画でいえば、消された過去を追う『トータル・リコール』『ペイチェック』と違い、こちらは、予知された未来を追う話といえるか。

そういえば、網膜の虹彩モニターで人物が特定され、所在管理されたりパーソナライズ広告が蔓延する社会や、用意した小道具が全て未来で使われる展開など、ディックの世界観が共通していると感じられる部分も多い。

殺人予知の対象となったアンダートンがどのように逮捕の手から逃れ、また殺人そのものから回避するのかが物語のキモなのかと思いきや、実はそれよりも更に大がかりな謀略が本作には描かれている。

  • プリコグの中の女性アガサ(サマンサ・モートン)がアンダートンに見せてきた、初老女性が殺される殺人予知映像は、システム内で発生する雑音(エコー)であると説明される。
  • 或いは、三人のプリコグの観る予知夢で一人だけ異なる場合、その少数報告(マイノリティ・リポート)はシステムの信頼性を疑われないように破棄されてしまう。

こんなような次々に登場するエピソードの意味がつかめないうちは、単純明快なSFアクションのはずが随分難解な映画だと感じるかもしれない。だが、観終わる頃にはそんな謎も氷解しているはず。その辺はスピルバーグならではの親切設計だから。

トム・クルーズの役柄へののめりこみようはいつもと同じ。古巣の組織に追われながら反撃する様子は『ミッション・インポッシブル』のようでもある。

アンダートンを追い詰めようとする司法省調査官のダニー・ウィットワー(コリン・ファレル)が結構カッコいい。コリン・ファレルは熱血漢よりこういう役のが似合うのだ。真相に近づいたのにあっさり伏兵に射殺されちゃう情けなさもいい。他のディック作品には、『トータル・リコール』のリメイク版に主演。

そういえば、アンダートンの妻ララ役のキャスリン・モリス『ペイチェック 消された記憶』に出演しており、ディック原作映画には縁がある。

プリコグのアガサを演じたサマンサ・モートンも印象的な演技だったが、やはり本作で圧倒的な存在感を放つのは、犯罪予防局のラマー・バージェス局長を演じたマックス・フォン・シドーだろう。言わずと知れた『エクソシスト』の神父さんだ。

主人公の上司で組織の長が実は一番悪いヤツというパターンも、問わず語りでつい知らない筈のことまで口を滑らせて悪事が露見してしまう展開も、ありきたりではあるが、この名優のおかげで何とか緊張感を保っている。

以下、ネタバレになるので、未見の方はご留意ください。

このおっさんは犯罪予知システムを確立し、局長のポストに居座るために、システムのバグである「エコー」を悪用アガサをプリコグとして利用するために、彼女の母親を予知システムの裏をかいてひそかに銃殺したのだ。

だが、窮地のアンダートンは妻に助けられ、土壇場で息を吹き返し形勢逆転で勝利をもぎとる。

アンダートンの息子を誘拐し殺害した犯人は結局分からずじまいだし、犯罪予知システムのお告げ通りに、その犯人になりすました男をアンダートンは殺してしまう点は、納得がいかない気もするが、短篇からここまで話を盛り上げたのは立派。

それにしても、犯罪に手を染める前に逮捕されちゃうのは怖いなあ。