『スティング』
The Sting
ジョージ・ロイ・ヒル監督がポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビで撮った詐欺師映画の傑作
公開:1973年 時間:129分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジョージ・ロイ・ヒル
脚本: デヴィッド・S・ウォード
キャスト
ヘンリー・ゴンドルフ:ポール・ニューマン
ジョニー・フッカー:
ロバート・レッドフォード
ドイル・ロネガン: ロバート・ショウ
スナイダー警部補:チャールズ・ダーニング
ルーサー: ロバート・アール・ジョーンズ
ロレッタ: ディミトラ・アーリス
勝手に評点:
(何をおいても必見!)

コンテンツ
あらすじ
1936年のシカゴ。フッカー(ロバート・レッドフォード)とルーサーの詐欺師コンビは、通りすがりの男から金を騙し取る。
ところがその男はマフィアの手下で、賭博の上がりを運んでいる途中だった。マフィアのボスは激怒し、ルーサーは殺されてしまう。
相棒の復讐を誓ったフッカーは、ベテラン賭博師でルーサーの友人ゴンドルフ(ポール・ニューマン)に協力を求める。
ゴンドルフは仲間を集め詐欺のプロジェクト・チームを結成、マフィアを破産させる大掛かりな詐欺を仕掛ける。
今更レビュー(あえてネタバレなし)
このトリオで再び傑作が生まれるとは
先日、ロバート・レッドフォードの訃報が届いた。ご冥福をお祈りします。
彼は晩年には『さらば愛しきアウトロー』という、実に彼らしい洒脱な作品を残し、引退を表明。引き際にまで美学を感じさせる大スターだった。
彼の代表作として必ずあげられるものが、『明日に向って撃て!』と、この『スティング』だろう。いずれも兄貴分のポール・ニューマンとの共演、監督はジョージ・ロイ・ヒル。
ロバート・レッドフォードの出世作となった『明日に向って撃て!』はアメリカン・ニューシネマの傑作だったが、同じ布陣で撮ったまったくジャンルの異なる映画が、前作に劣らぬ傑作になるとは、驚きだった。

私が洋画の面白さに目覚めたのは、子供の頃にテレビの洋画劇場で見たこの二作品の影響だったと思う。
『スティング』は詐欺師たちを描いた作品であり、観客を鮮やかに騙すことに主眼が置かれている。だから、いくら古い映画とはいえ、不用意にネタバレをすることは避けたい。
ニューマンとレッドフォード
舞台は30年代のシカゴ。主人公は若くてダンディな詐欺師のフッカー(ロバート・レッドフォード)。
手慣れた手法で、通りすがりの男を騙して、財布をかすめ取ったところ、中には唸るような大金。それは賭博の売上金で、詐欺師が手を出してはいけない、マフィアのカネだった。
やがてフッカーが師事していた老詐欺師のルーサー(ロバート・アール・ジョーンズ)がマフィアに殺されてしまう。

フッカーは敵のボスであるドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)の鼻を明かして復讐してやろうと、ルーサーの友人で賭博師のゴンドルフ(ポール・ニューマン)のもとを訪ねる。
こうして、大がかりな復讐計画が幕を開けるのだ。
テーマ曲にはラグタイムの祖スコット・ジョプリンの代表曲” The Entertainer”を採用。てっきりこの映画のための書き下ろしかと思っていたが、古くから知られた曲だったようだ。
この音楽と、本編の合間に挟まる紙芝居のような絵が、独特のノスタルジックな雰囲気を醸し出す。
太いストライプのスーツにキャスケット帽が決まっているロバート・レッドフォード。鼻の下に髭をたくわえ、タキシードがサマになるポール・ニューマン。
そして、強面のマフィアのボス、ロネガンを演じたロバート・ショウは、『007 ロシアより愛をこめて』でショーン・コネリーを苦しめた殺し屋ですな。

コン・マン映画の金字塔
本作の影響を受けた詐欺師(コン・マン)の映画は数多いが、近年でいえば、映画にもなったドラマ『コンフィデンスマンJP』などはその系統にあるといえ、詐欺師集団が楽しそうに罠を仕掛けるあたりは、よく似ている。
確か、ドラマの第1話だったと記憶するが、そのトリックが『スティング』のエンディングとまったく同じだったので、インスパイアされていることは自明だろう。
◇
映画はたまに思い出したように観返しているので、さすがにもう騙されることはないが、よく出来た脚本だと感心する。
同じデヴィッド・S・ウォードの脚本で、実は本作の続編『スティング2』が1983年に公開されているらしいのだが、監督も出演者もみな異なるせいか、まったく知らずにいた。『新・明日に向って撃て!』の方はよく覚えているのだが。

ゴンドルフは賭博師だから、ポール・ニューマンのカードさばきは実に見事なものだ。
訓練の賜物だろうと感心していたが、これはプロのマジシャンのボディダブルだと知ってがっかり。『ブラック・ショーマン』の福山雅治も、この程度はやってのけるのか。
ロネガンとのポーカー勝負で、ゴンドルフが手札を周囲に見られないように隠し見る演出も憎い。
詐欺師たちの団体戦が楽しい
半地下の空き事務所を借りて、そこにノミ賭博の場外馬券場を作り上げる。
勝ち馬の情報が打電される前に、それを入手できるとフッカーがロネガンをうまく信用させ、大金で馬券を買わせる。そしてまんまとそのカネを巻き上げるという作戦だ。
殺されたルーサーの弔い合戦だと、大勢の詐欺師仲間たちがこの作戦に参加を申し入れ、詐欺師だらけの場外馬券場ができあがる。これがすこぶる面白い。
ストーリーについてはこれ以上触れないが、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』とともに、私の中では本作は<もう一度記憶を消して楽しみたい映画>のひとつに数えられている。
ラストシーンは、主演の二人を写す円形の窓が次第に小さくなっていき暗転するアイリス・アウト手法で終わり、束の間サイレント映画の時代を感じさせる。
『明日に向って撃て!』と並び、古くても必見の作品。