『裸足で散歩』今更レビュー|ペントハウスなんてものは、子供の頃は知らなかったよ

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『裸足で散歩』 
Barefoot in the Park

ニール・サイモンが描いた、オンボロアパートに住む新婚夫婦のコメディ。ロバート・レッドフォードとジェーン・フォンダの共演。

公開:1967 年  時間:105分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:        ジーン・サックス
脚本:        ニール・サイモン

キャスト
ポール・ブラッター: 
       ロバート・レッドフォード
コリー・ブラッター: 
          ジェーン・フォンダ
ビクター・ベラスコ: 
          シャルル・ボワイエ
エセル・バンクス:  
      ミルドレッド・ナトウィック
ハリー・ペッパー:  
        ハーバート・エデルマン
フランク:     テッド・ハートリー
ハリエット: メイベル・アルバートソン

勝手に評点:2.5
       (悪くはないけど)

あらすじ

若手弁護士のポール(ロバート・レッドフォード)とその妻コリー(ジェーン・フォンダ)は新婚夫婦。新婚旅行から帰ってきた二人は新居のアパートへ引っ越すが、そこはエレベーターもないオンボロ物件だった。

しかも、そこに暮らす住民は変わり者が多く、その中でもとりわけ風変わりな人物ベラスコ(シャルル・ボワイエ)と親しくなったコリーは、彼のように人生を楽しんでほしいと、生真面目なポールと自分の母親を彼との食事会に招待するが、それがきっかけでポールとコリーは大喧嘩を始めてしまう。

今更レビュー(ネタバレあり)

レッドフォードとジェーン・フォンダ

ロバート・レッドフォードジェーン・フォンダが何十年ぶりに共演したNETFLIXの映画『夜が明けるまで』を観たときに思い出したのが本作。懐かしくてつい観てしまった。

原作・脚本をニール・サイモンが手掛けた、洒脱な都会派コメディ。監督のジーン・サックスは、本作の後、ジャック・レモンとウォルター・マッソーの『おかしな二人』でも、ニール・サイモンと組んでいる。

新婚ホヤホヤのカップルが、オンボロアパートで暮らし始めてから繰り広げる数日間のドタバタを描いたソフィスティケイテッド・コメディ。舞台は二月の冷え込むマンハッタン。

かけだしの弁護士ポールロバート・レッドフォード新妻のコリージェーン・フォンダ。当たり前だが、メチャクチャ若い。

ロバート・レッドフォードは本作の二年後にポール・ニューマンと共演し『明日に向って撃て!』で大ブレイクする。彼が主宰のサンダンス映画祭の名は、この作品の当たり役に因んだものだ。彼がここまでコメディ一辺倒の作品に出るのは珍しく、貴重な作品といえるかもしれない。

一方のジェーン・フォンダ。翌年公開の異色お色気SF『バーバレラ』やアカデミー主演女優賞に輝いた『コールガール』の数年前になる本作で、すでに肌も露わに妖艶で情熱的な若妻を演じている。

ロバート・レッドフォードジェーン・フォンダの共演作は意外と多く、『逃亡地帯』(1966)、『裸足で散歩』(1967)、『出逢い』(1979)、そして『夜が明けるまで』(2017)と続く。翌2018年にレッドフォードは『さらば愛しきアウトロー』で俳優業引退宣言をしてしまったので、四本で打ち止めだ。二人が共演するコメディは、本作のみということになる。

Barefoot In The Park Trailer

オンボロアパートの最上階

映画は冒頭、挙式したばかりの二人が大はしゃぎでプラザホテルに馬車で運ばれていく。高級ホテルにチェックインしてから六日間、<Do not disturb>の札をドアに掛けて部屋にこもりっきりのアツアツな二人。一体食事はどうしていたのだろう。

そしてハネムーンを終わってグリニッチ・ビレッジのアパートの新居に。エレベーターのないアパートの五階の部屋は、百貨店の配達員や電話の修理工が上がってきては、息も絶え絶えになっている。

最上階のペントハウスといえば聞こえはいいが、家賃格安のオンボロアパートのガラストップのルーフは窓が割れ、寒風が吹き込み、夜には雪が降り積もる

そして、この手の映画にはお約束の風変りな住人。屋上部屋に住む変人のベラスコ(シャルル・ボワイエ)は自分の部屋に行くのに堂々と彼らの部屋を通り、あかりとりの窓からでていく男。

ベラスコは部屋がアジア趣味で、日本文化にも造詣が深そうだが、『ティファニーで朝食を』のように人種差別的な描き方ではないところはよい。

映画の中でいちばん弾けているのはコリーで、喜怒哀楽も激しい。彼女が、堅物の夫の言動にいちいち過剰反応する様子は、ドリフのコントの原型をみているようだ。

やがてコリーは、新婚家庭の様子をみにきた母親のエセル・バンクス(ミルドレッド・ナトウィック)や真面目過ぎて面白味のないポールを、親しくなったベラスコに近づけることで、人生を楽しむ術をおぼえてもらおうと画策する。母親は52歳の設定だったと思うが、現代感覚ならどうみても60代にしかみえない。

洒脱な会話で笑わせる感じとは少々違う

基本的には室内劇の戯曲から生まれた作品であり、ほとんどがアパートの中でのシーンで、外に出ても建物の前の階段がせいぜいなのだが、ほんの少しだけ夜の街に繰り出すシーンがある。

みんなでフェリーでスタッテン島に渡って、怪しげなエスニック料理店に行くのである。

わざわざ野外ロケをするほどのシーンでないところが不思議なのだが、母親エセルがベラスコの部屋に泊まるハプニングが起きたこの晩を境に、新婚夫婦の仲が急激に険悪になる。

真面目過ぎて堅物のポールがろくに冒険もせず面白味もなくみんなと過ごした昨晩のことが気に入らず、痴話げんかを始めるが、一向に収まらずについには離婚話に発展する。

結局、痴話げんかが収まって最後はハッピーエンドということではあるのだが、常に沈着冷静で冒険をしないポールが、飲んだくれて公園でヨレヨレの服に裸足で歩いているところが、原題の<Barefoot in the Park>となるわけだ。

ニール・サイモンの書いたソフィスティケイテッド・コメディゆえ、都会的で気の利いた男女の会話で魅せる作品。子供の頃に見た時には、ずいぶんと洒落た映画だと感心したものだ。なにせペントハウスなんて知らなかったから、なんで天井がガラスなのか不思議だった

だが、今の時代に改めて観てみると、抱腹絶倒するまでには至らず、彼の脚本にしては今ひとつ冴えがないように思う。懐かしさで観る分にはまったく問題ないけれど。一番笑ったのは、電話修理工のおじさんを挟んで夫婦喧嘩するところかなあ。