『ゲーム』今更レビュー|デヴィッド・フィンチャー監督が仕掛けた128分の極上体験

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『ゲーム』 
The Game

デヴィッド・フィンチャーの最高傑作。誕生日プレゼントにもらったゲームの招待状が、男の人生を翻弄する。

公開:1998 年  時間:128分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:     デヴィッド・フィンチャー
脚本:       ジョン・ブランカトー
           マイケル・フェリス

キャスト
ニコラス・ヴァン・オートン:
           マイケル・ダグラス
コンラッド・ヴァン・オートン: 
             ショーン・ペン
クリスティーン:  
        デボラ・カーラ・アンガー
ジム・ファインゴールド:
         ジェームズ・レブホーン
サミュエル・サザーランド:
          ピーター・ドゥナット
イルサ:       キャロル・ベイカー
エリザベス:     アンナ・カタリーナ
アンソン・ベア:
     アーミン・ミューラー=スタール

勝手に評点:5.0
        (何をおいても必見)

あらすじ

投資家として成功したものの、離婚後、孤独な毎日を送っていたニコラス(マイケル・ダグラス)は48歳の誕生日に弟コンラッド(ショーン・ペン)に再会し、CRSという会社のゲームの招待状を受け取る。

ニコラスは好奇心からそれに参加するが、その時から奇妙で不可解な事件が続発する。

レビュー(まずはネタバレなし)

個人的には文句なしの最高傑作

デヴィッド・フィンチャー監督の代表作といえば、『セブン』(1995)という声が多いように思う。彼の監督作品の中で、ブラッド・ピットを三度も主演に起用していることで強い印象を与えているのかもしれない。

だが、私にとってフィンチャーの最高傑作といえば、この『ゲーム』をおいてほかにない。落ち着きのある映像の洗練度と、最後まで真相が分からないスリリングな展開。サスペンス・スリラーとしての完成度は高く、20年以上たって観直しても、まったく魅力が色褪せていない。

ストーリーは至ってシンプルだ。広大な敷地の大邸宅に住む投資銀行家のニコラス・ヴァン・オートン(マイケル・ダグラス)が、自由気ままに生きる弟のコンラッド(ショーン・ペン)から、48歳の誕生日プレゼントにとあるものを受け取る。

「何でも持っている兄さんを喜ばせるものを選ぶのは難しいけど、僕には最高の体験だったよ

それはCRS(Consumer Recreation Services)という会社が提供するゲームの招待状。だが、その会社の実態も、ゲームの内容も全く分からない。

仕事で多忙を極めるニコラスは、胡散臭そうなその招待状に関心を示さずにいたが、ある日偶然商談で訪れたビルに、CRSのオフィスが入居していることに気づき、受付を訪ねてみる。

これ以上は何も読まないでほしい

ああ、これ以上は一言たりともネタバレすべきではない。もしあなたが本作を未見なら、ここから先の展開は、何も知らずに観てほしい。私の中では、本作が<もう一度記憶を消して楽しみたい映画>のトップランク入りしてから久しい。

なんだよ前世紀の映画かと、尻込みするなんて勿体ないことだ。スマホではないケータイにはさすがにちょっと時代を感じるが、ニコラスの愛車のBMW(7シリーズか?)はむしろ当時のデザインのが気品や高級感は上。

主演はマイケル・ダグラス。さすが『ウォール街』(オリバー・ストーン監督)の男だけあって、カネの亡者の投資銀行家を演じさせると、実に似合う

話はそれるが、最近、立て続けに松田優作の映画を観ていたので、マイケル・ダグラスを見ると、つい『ブラック・レイン』(リドリー・スコット監督)を思い出してしまうが、やさぐれ刑事役よりはやはりこっちがいい。

そして、高慢で堅物の兄貴と対照的に、社会常識に縛られずに生きていたい弟コンラッド役に名優ショーン・ペン。当然、彼の演技もよいし、極めて重要な役なのだが、惜しむらくは、出番が少ないことか。もう少し、彼の登場シーンが多かったら、なおよいのに。

THE GAME - Trailer - HQ

この二人以外には、失礼ながら、私には顔で名前が分かる共演者は現れなかった。だが、これは望外な効果に繋がったと思う。

例えばニコラスにCRSの受付手続を行ったファインゴールドを演じたジェームズ・レブホーンや、後半に登場するウェイトレスのクリスティーン役のデボラ・カーラ・アンガーなどは、私には見慣れない俳優だっただけに、CRSの正体を一層謎めいた雰囲気にしてくれた。

CRSとはどんな組織で、ゲームとは一体何か。このテーマだけをブレることなく追いかけて、128分間、中だるみすることなく、映画は緊張感を持続させ、そして見事に完結させる。

この手の映画は普通、中盤でその謎が概ね解き明かされ、後半は違った展開に移っていくことが多い。ブレずに初志貫徹するような作品を撮りきったデヴィッド・フィンチャー監督は、称賛に値する。

The Game (1997) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。本作は、特にネタバレ厳禁の作品なので、くれぐれも鑑賞後にお読みいただくことをお薦めします。

CRSとゲームの正体に興味津々

さて、私がまず感心したのは、ニコラスが初めは胡散臭いと感じていたCRSに惹き込まれていく様子の描き方だ。

偶然みつけたオフィスで、対応したファインゴールドは中華デリのテイクアウトを片手にニコラスのカウンセリング開始。まるで『ブレードランナー』のレプリカント検査みたいな質問を延々と続け、結局多忙な彼を一日がかりのテストに付き合わせる。

ニコラスは後日、CRSについて雑談している会員制クラブのメンバーに、ゲームについて尋ねてみるが、適当にあしらわれる。

「そうですね、まるで聖書の一節のようですよ。昔は盲目だったが、今は見える」

いつしかCRSに興味津々になっているニコラス。だが、CRSからの電話で、不合格だったと伝えられる。このじらされ感がいい。

そして、電話とは裏腹に、ゲームは始まる。邸宅前に置かれたピエロ人形の口の中の鍵。リビングのテレビから、お馴染みのニュースキャスターがニコラスに語りかける不気味さ『マックス・ヘッドルーム』みたいな映像)。

サンフランシスコの空港でも、みんなが怪しい人物に見える。ウェイトレスのクリスティーンにはワインをかけられ、その後成り行きで路上に倒れた男を救急車に同乗して病院へ。そして、病院では大停電が起き、エレベータに閉じこめられ…。

次々と遭遇するトラブルに、これがゲームかと、とんだ災難に巻き込まれた様子のニコラス。文章では面白味が伝わらないが、それぞれのハプニングの描き方は、どれも手が込んでいる。窮地に追い込まれたときに、予めCRSから届けられている様々な鍵を使ってピンチを逃れるという設定も、ありがちではあるが面白い。

CRSはヤバい犯罪組織に違いない

かなり早い段階から、CRSというのはヤバい連中なのではと思わせる演出になっている。それが確信に変わるタイミングは人それぞれだ。彼にCRSを紹介した弟のコンラッドが、連中に騙されたと騒ぎだす場面という人もいるだろう。

私は、ニコラスの乗せたタクシーの運転手が、クルマを暴走させ、自分は脱出してニコラスごとクルマを海に沈めるシーンで、ここまでやったら犯罪集団だと結論づけた。ちなみにCRSの目的はというと、彼の莫大な個人資産だ。言葉巧みに彼を誘導し、銀行口座のパスワードまで盗み出している。

ニコラスが唯一の味方と思っていたクリスティーンの家に行き、ランプシェードの裏に値札があったり、蛇口や冷蔵庫や書棚の本までセットだったりという発見で、彼女もCRSと気づく見せ方も秀逸。もはや、彼の身の回りで起きていることは全てゲームなのだ。

絶望の果てに、ニコラスはテレビのコマーシャルに、CRSで彼を受け付けたファインゴールドが出演していることに気づく。ヤツは役者だったのだ! そこから彼はこの俳優の所在をつきとめ、ついに所在不明となっていたCRSのオフィスにたどり着く。

終盤の見事な二転三転

侵入したオフィスのカフェテリアに、これまでの全ての登場人物があちこちで談笑している風景は衝撃的だ。えー、あいつもこいつも、みんないるぞ。

すべてが仕組まれたことだったのだ。サスペンス・スリラーとしては、ここまでで十分満足な出来だと思う。だが、本作は驚くことに、この後さらに二転三転する。

まずは、弟のコンラッドの再登場。CRSのオフィスで激昂してビルの屋上で銃を振り回すニコラス。これはCRSがすり替えたものではない本物の銃だと驚くクリスティーン。そして、扉が開いて現れた弟を、ニコラスは誤射してしまう。割れるシャンパンボトル。そう、これは弟が仕組んだサプライズパーティだった。

いや、見事に決まった! ここで最高評価をあげたいくらいだ。なんと悲しい結末。だが、弟を殺してしまい悲嘆にくれたニコラスは、そこから投身自殺を図る。更に悲しい展開になるのか。

彼が高層ビルの屋上から飛び降りた一階部分には、なんと巨大なマットが置かれ、彼の行動を予期するかのように、着地点には標的マークが。そう、この発作的な飛び降りまでもが、ゲームでは織り込み済だったのだ

なんという大逆転。コンラッドは死んでいなかったのだ。予想もしなかったハッピーエンド。すっかりだまされまくった後半戦。

からんでくる人物は俳優が演じており、家の中は作り物のセットだし、撃たれようが飛び込もうが、実際に死んではいない。映画が持つ虚構性を逆手にとる面白さ。

いや、CRSの仕事ぶり、まじすげえっす。資産家の兄貴を喜ばすには、ここまでサプライズ演出しないとダメなのか。請求額、気になるわあ。