『はたらく細胞』
人気コミックの実写映画化。『半分、青い。』の永野芽衣と佐藤健が今度は赤と白の血球に
公開:2024年 時間:110分
製作国:日本
スタッフ
監督: 武内英樹
脚本: 徳永友一
原作: 清水茜
『はたらく細胞』
原田重光・初嘉屋一生・清水茜
『はたらく細胞BLACK』
キャスト
赤血球: 永野芽郁
白血球: 佐藤健
キラーT細胞: 山本耕史
NK細胞: 仲里依紗
マクロファージ: 松本若菜
ヘルパーT細胞: 染谷将太
新米赤血球: 板垣李光人
先輩赤血球: 加藤諒
血小板: マイカ・ピュ
肝細胞: 深田恭子
肺炎球菌: 片岡愛之助
化膿レンサ球菌: 新納慎也
黄色ブドウ球菌: 小沢真珠
好中球先生: 塚本高史
神経細胞: DJ KOO(TRF)
制御性T細胞: 高橋りな
外肛門括約筋: 一ノ瀬ワタル
最強の敵:Fukase(SEKAI NO OWARI)
<人間>
漆崎茂: 阿部サダヲ
漆崎日胡: 芦田愛菜
武田新: 加藤清史郎
社長: 光石研
医師: 鶴見辰吾
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球(永野芽衣)や細菌と戦う白血球(佐藤健)など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。
高校生の漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と二人暮らし。
健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。
そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。
レビュー(まずはネタバレなし)
笑って泣けて勉強になった
清水茜の『はたらく細胞』も、スピンオフの『はたらく細胞BLACK』も、ましてやテレビアニメも観ていないのだが、何度となく観た劇場予告に、もしかしたらメチャクチャ傑作なのではないかという予感が働いた。
結果は大当たり。笑って泣けて、子どもと見ても楽しめるし、ついでに勉強にもなる。全方位に隙のない映画ではないか。
武内英樹監督は『翔んで埼玉』から『ルパンの娘』、『もしも徳川家康が総理大臣になったら』と、ここ数年でもヒット作は量産するが、失礼ながら、くだらなく薄っぺらいコメディ映画を得意とする監督なのだと思い込んでいた。
これはお詫びしなければいけない。誠に申し訳ございませんでした。
本作は、監督の得意とする笑いのエッセンスはふんだんに採り入れながら、きちんと父娘の感動ドラマもあるし、自分に託された仕事の尊さまで説教くさくならずに教えてくれる。
そのバランスの良さは原作由来なのかもしれないが、しっかり映画作品として結実させているところは、やはり武内英樹監督の手腕なのだろう。
まずは体内環境から
城下町のような街並みや大型ショッピングモールのような建物内に、道路案内を多数掲げた体内の舞台セットが秀逸だ。原作より更に一歩エッジを効かせている感じ。そこに大勢の赤血球や白血球がごった返して活動している。
立派な赤血球になることを目指し、体内に酸素を運ぶベレー帽の赤血球さん(永野芽衣)と、外敵を退治することに執念をみせる武闘派の白血球さん(佐藤健)。
特に顔を白塗りにして野球帽をかぶった佐藤健は、原作キャラの再現度が高く、感心する。帽子の後ろにはチープな妖怪アンテナみたいなピンポンブザー。これで外敵の侵入を検知するのだ。
肺炎球菌(片岡愛之助)や化膿レンサ球菌(新納慎也)、黄色ブドウ球菌(小沢真珠)など、メイクが濃すぎて上映中は気づかなかったが敵キャラの顔ぶれの意外性に驚かされる。
敵キャラが触手を伸ばして攻撃してくる姿は、どこか東映の特撮ものを思わせる。そこに立ち向かうのが佐藤健とくれば、仮面ライダー電王を思い出さずにはいられないが、白血球は変身することなく、短剣を片手に飛び回る。
そのアクションは、コメディ映画にありながら超一流の迫力だ。
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— 映画『はたらく細胞』公式 (@saibou_movie) December 18, 2024
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佐藤健が、『るろうに剣心』を超えたいと、『るろ剣』のアクション監督・大内貴仁を連れてきたのだから、そのレベルは推して知るべし。
普段は『シザーハンズ』のジョニー・デップみたいに青白い顔で挙動不審な白血球だが、戦闘モードでは別人のように重力を無視して体内の壁を跳躍し、逆刃刀ならぬ短剣で敵菌を倒しまくる。
キャスティングの面白さ
赤血球の永野芽衣と白血球の佐藤健との共演は、朝ドラ『半分、青い。』以来となるわけで、つい盛り上がってしまうが、佐藤健とは『仮面ライダー電王』で姉弟役だった松本若菜がマクロファージ先生とは感慨深い。
SWAT隊のようなキラーT細胞のリーダーに山本耕史、司令塔のようなヘルパーT細胞に染谷将太、肝細胞にドロンジョ様の深田恭子がいれば、孤高の女戦士NK細胞にはゼブラクイーンの仲里依紗とお色気系も充実。
そして、人間界に目を移せば、トラック運転手の父・漆崎茂(阿部サダヲ)と高校生の娘・日胡(芦田愛菜)の父娘。共演は『マルモのおきて』以来か?
さすがに鈴木福は出てこないが、日胡の高校の憧れの武田先輩には、元こども店長の加藤清史郎だ。子役レジェンド揃いぶみ。
永野芽衣や佐藤健が活動しているのは、高校生の日胡の体内。一方、不摂生がたたり成人病寸前の父・茂の体内はというと、薄暗い昭和感溢れる酒場通りになっており、細胞たちにとってはブラックな職場なのだ(ロケ地はラーメン博物館か)。
劇場予告で頻繁に観た、茂が便意を催し尻を押さえて公衆トイレに駆け込む場面。これの体内の情景がメチャクチャ笑えた。外肛門括約筋の一ノ瀬ワタルの配役がツボ。
先輩赤血球の加藤諒もあんな役とは気の毒な。新米赤血球の板垣李光人は、『八犬伝』で女形をやってたイケメン犬士とは随分イメチェン。
◇
さて、暴飲暴食で不摂生にもほどがある父・茂が病気になるのかと思いきや、娘の愛情弁当のおかげで父は健康回復。だが、その娘が白血病にかかってしまう。
【インタビュー】阿部サダヲ×芦田愛菜、時を経て感じた互いの強み 次に共演するなら刑事ドラマのバディ役?https://t.co/TC4M9FLnWY#はたらく細胞 #阿部サダヲ #芦田愛菜
— リアルサウンド映画部 (@realsound_m) December 19, 2024
赤血球や白血球をはじめ、彼女の体内の細胞たちは、どうやってこの危機を乗り切っていくのか。笑いメインの前半戦から、難病ものの後半戦へと様変わりしていく。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
白血球が外敵をカプセルに閉じこめ、気管支からくしゃみロケットで体外放出して「バイバイ菌だ!」
その他、娘には擦り傷ができたり、父は酒をがぶ飲みしたり便意を我慢したり。
このあたりはまだ笑えたが、闘病生活が始まると、採血だとか、抗がん剤、或いは全ての細胞を破壊する放射線治療など、細胞目線で見ると結構恐ろしいものに見える。
◇
そして、日胡の体内に、白血球の変異種として現れたのが、恐ろしいヴィラン。演じるのはセカオワのFukase。
映画の登場は、初出演の『キャラクター』(2021)以来か。前作の猟奇殺人犯役も相当怖かったが、今回も不気味で強く、ラスボス感あり。
病原菌、或いは放射線治療ですっかり廃墟と化していく日胡の体内の造形デザインも素晴らしいし、そんな逆境でも、外敵と戦ったり体内に酸素を運んだりと、自分の仕事を投げ出すことなく職務に忠実であろうとする細胞たち。
◇
さすがに細胞全滅で彼女が快方に向かわなかったら物語が重苦しすぎるが、そこは武内英樹監督作品だけあって、Official髭男dismの主題歌が似合う、明るくハッピーなエンディングに予定調和。
阿部サダヲと加藤清史郎が病室でちょっと羽目外しすぎな気もしないこともないが、まあそれだけ喜びも大きいってことで。
この映画は、堅苦しい健康アドバイスなんかより、よっぽど自分の身体をいたわろうという気にさせる内容だ。
私の体内など、阿部サダヲのように昭和然とした歓楽街に近いのかもしれないが、それでも懸命にはたらいてくれている細胞たちがいるのだと思うと、ちょっとは自制してみるか。