『キングダム 大将軍の帰還』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『キングダム 大将軍の帰還』一気通貫レビュー④|忘れられない戦いが始まる

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『キングダム』(2019)
『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)

『キングダム 運命の炎』(2023)
『キングダム 大将軍の帰還』(2024)

『キングダム 大将軍の帰還』

前作から続く馬陽の戦いに、ついに決着がつくのか。シリーズ第4作。大将軍・王騎と同じ景色を見る信は何を思う。

公開:2024年  時間:146分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:      佐藤信介
原作:       原泰久

       『キングダム』
キャスト
【秦国】
<飛信隊>

信:       山﨑賢人
羌瘣:      清野菜名
尾到:      三浦貴大
尾平:      岡山天音
澤圭:      濱津隆之
沛浪:      真壁刀義
輝蓮:        栄信
竜川:       佳久創
渕:       田中美央
<王宮>
嬴政:       吉沢亮
昌文君:     髙嶋政宏
肆氏:      加藤雅也
昭王:      草刈正雄
尚鹿:      渡辺邦斗
河了貂:     橋本環奈
蒙毅:      萩原利久
<王騎軍>
王騎:     大沢たかお
騰:         要潤
干央:      高橋光臣
摎:       新木優子
<呂不韋陣営>
呂不韋:     佐藤浩市
昌平君:      玉木宏
蒙武:      平山祐介
<山の民>
楊端和:    長澤まさみ
<村人>
友里:      村川絵梨
東美:     桜井日奈子
【趙国】
龐煖:      吉川晃司
李牧:       小栗旬
カイネ:    佐久間由衣
趙荘:      山本耕史
万極:      山田裕貴

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

あらすじ

春秋戦国時代の中国。馬陽の戦いで、隣国・趙の敵将を討った秦国の飛信隊のしん(山崎賢人)たちの前に趙軍の真の総大将・龐煖ほうけん(吉川晃司)が突如現れた。

自らを「武神」と名乗る龐煖の急襲により部隊は壊滅的な痛手を追い、飛信隊の仲間たちは致命傷を負った信を背負って決死の脱出劇を試みる。

一方、その戦局を見守っていた総大将・王騎おうき(大沢たかお)は、龐煖の背後に趙のもう一人の化け物、天才軍師・李牧りぼく(小栗旬)の存在を感じ取っていた。

通貫レビュー(まずはネタバレなし)

夏の風物詩『キングダム』シリーズもこれで四作目。

若き秦国王の嬴政えいせい(吉沢亮)なぜ中華統一を目指すのかが明らかになった前作『キングダム 運命の炎』は、壮絶な脱出劇である王の回想パートと、趙軍との馬陽の戦いの序盤戦が一体化し、シリーズ屈指の盛り上がりを見せた。

本作の導入部分は、正体が分かっていなかった、趙軍の総大将で「武神」として恐れられる龐煖ほうけん(吉川晃司)と、飛信隊の対決シーン。

しん(山﨑賢人)羌瘣きょうかい(清野菜名)が力を合わせても、全く歯が立たないレベチの強さ。顔に刀傷の吉川晃司が渋い。このバトルアクションは相変わらず魅せるものの、映画のテンポとしては序盤から相当ダレ気味の印象。

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

冒頭に、申し訳程度に駆け足で前回までのあらすじが紹介される。4作目で初めて映画を観る人も少ないだろうから、このお手軽対応はOK。

だが、それならば映画自体も前作終盤の勢いを受けて、最初からクライマックスだぜと、息もつかせぬ戦闘モードで突き進んで欲しかったなのに、馬陽の戦いが次の局面に進むまでには少々もたつく。

龐煖ほうけんとの戦いで瀕死の傷を負った信が同郷の旧友、尾到(三浦貴大)尾平(岡山天音)の助けを借りて生き長らえ、村では許嫁の友里(村川絵梨)東美(桜井日奈子)が尾到・尾平の無事を祈る。

こういったお約束のシーンが結構ダラダラ続く。ここ、感動するところなのかもしれないが、私には水増し演出に思えた。

ついでにいえば、羌瘣きょうかい龐煖ほうけんに立ち向かう際に華麗に舞う、お馴染み「トーンタンタン」も、長くないすか 今回は、あのフレーズが戦闘と噛み合ってなかった。

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

驚いたことに(原作を読んでいない私だけか)、主人公である信の活躍は前半のこの龐煖ほうけんとのバトルがメインなのである。勿論、中盤以降も要所では暴れまくるが、添え物扱いだ。

劇場予告で王騎(大沢たかお)が信に「これが将軍の見る景色です」なんていうものだから、本作で信はもっと偉くなるのかと思ったが、長大な物語の中では、4作目でもいまだ、「わらべ信」なのだ。

本作においては、タイトルにもあるように、秦の大将軍・王騎が圧倒的な主人公といえる。嬴政えいせいに賢王としての資質を見抜き、かつて亡き昭王(草刈正雄)から賜った、王たる者の心得を伝授し、秦国のために、趙軍との戦いの陣頭指揮を執る。

シリーズ当初はウッチャンのコントかと思った、あのオネエっぽい語り口と笑みを絶やさないこの人物が、今では無双の大将軍にしかみえない。大沢たかお、恐るべし。

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

微笑みの大将軍・王騎と、孤独を背負う武神・龐煖ほうけんの一騎打ち。光と影の対決、ともに力は互角。秦と趙の軍勢が見守るなか、熾烈な戦いが繰り広げられる。

「私もまた、過去と向き合わなければなりません」

前作で王騎はそう語っていたが、その意味が今ようやく分かる。

王騎にはかつて、秦の女将軍を務めたきょう(新木優子)という婚約者がいた。龐煖ほうけんに対しては、そのきょうを巡って、晴らさねばならぬ恨みつらみがあった。王騎にとって、この男こそ、最大の宿敵であったのだ。

王騎の回想シーンに登場するきょう役の新木優子が美しすぎる。およそ将軍にはみえないが、ワンダーウーマン風なおでこのバンダナがカッコよい。

森の精のような着ぐるみの河了貂かりょうてん(橋本環奈)ロールパンナちゃんみたいな男装の戦士・羌瘣きょうかい(清野菜名)、そしてアマゾネス風コスプレの山の民、楊端和ようたんわ(長澤まさみ)と、女優陣は豪華だが一風変わったキャラばかりなので、新木優子が際立って見える。

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

趙国は将軍に趙荘ちょうそう(山本耕史)万極まんごく(山田裕貴)。前作では、信が馮忌ふうき(片岡愛之助)を倒して終わったので、本作ではメフィラス山本ドラケン山田を相手に戦いが続くのかと思っていたが、敵のラスボスは龐煖ほうけん吉川晃司なのだった。

前作にチラッと顔を出した、趙国の天才軍略家・李牧りぼく(小栗旬)はどう絡むのかと期待したが、あれこれと軍略は口にするものの、戦いには参加せず。

軍師とはそういうものだろうが、映画的にはちょっと消化不良。というか、小栗旬にああいう洋服着せて戦場に立たせると、『信長協奏曲』にしかみえんのよ。

李牧に付き従う兵士カイネ(佐久間由衣)は、今後活躍するキャラなのだと思うが、本作においては役割がまだ不明。

前作から続いた馬陽の戦いは、本作で幕を閉じる。趙国との決着がこの戦いでつく訳ではないが、敵軍は一旦退くことで話は続いていくようだ。

今回の本筋にはほとんど絡んでいないが、過去作からの流れでワンカットのみ登場するような軍人キャラも数多い。原作に沿っているのかもしれないが、映画作品として観た場合には、豪華な脇役陣が一瞬だけ出てくるのはやや集中力を削がれる。

作品全体としては、完成度の高かった前作には及ばないものの、王騎大沢たかおの圧倒的な存在感と、ダークヒーロー龐煖ほうけん(吉川晃司)の活躍で、締まった作品にはなっていた。

ただ、山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈が目当てのファン層には、初期作品に比べ出番減少で落胆かも。

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。

どこまで映画化が続くのか存じ上げないが、本作では前回と異なり、次に登場する新キャラのチラ見せもなかったし、ひとまずの区切りなのかもしれない。

何せ、馬陽の戦いで、王騎は李牧の策略にはまり、背後からの狙撃により、一旦はほぼ一騎打ちで勝ちを収めたかに見えた龐煖ほうけんに胸を貫かれてしまうのだ。

その場で戦死するのではないが、残兵を集めて将軍の座を腹心の部下である(要潤)に委ね、信に自らの矛を託し、王騎は昇天する。

無敵の王騎が龐煖ほうけんに胸を貫かれるシーンも、馬上で魂が抜けて動かなくなるシーンも涙なくしては見られない。王騎とは折が合わないように見えた剛力男の蒙武(平山祐介)との、最期の会話も泣かせる。

最後に流れる曲はONE OK ROCK『キングダム』1作目に原点回帰したということか。でも、吉川晃司ONE OK ROCK『るろうに剣心』のイメージが強いんだよなあ。

王騎の仇打ちを果たすために、次作では龐煖ほうけんと戦う信たちの姿が見られるのか。王騎なくしては、もはや映画は商業的に成り立たないのか。どういう方針になるのか、興味深いところ。

山崎賢人には、そろそろ『ゴールデンカムイ』の映画続編の方をやってほしいよ」と思っていたら、なんと『金カム』は映画じゃなく、WOWOWで続編ドラマ化だって?