『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
John Wick: Chapter 4
報いを受ける時がきた。伝説の殺し屋は、決着に立ち上がる。真田広之にドニー・イェンとは、豪華にもほどがあるシリーズ最高傑作。
公開:2023 年 時間:169分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: チャド・スタエルスキ
脚本: シェイ・ハッテン
マイケル・フィンチ
キャスト
ジョン・ウィック: キアヌ・リーブス
<主席連合>
グラモン侯爵: ビル・スカルスガルド
チディ: マルコ・サロール
ケイン: ドニー・イェン
調停人: クランシー・ブラウン
キーラ・ハルカン: スコット・アドキンス
ルスカ・ロマ首領: ナタリア・テナ
<ホテル・コンチネンタル>
ウィンストン(NY支配人):
イアン・マクシェーン
シャロン(フロント):ランス・レディック
シマヅ・コウジ(大阪支配人): 真田広之
シマヅ・アキラ: リナ・サワヤマ
<その他>
バワリー・キング:
ローレンス・フィッシュバーン
トラッカー/ ミスター・ノーバディ:
シャミア・アンダーソン
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
裏社会の掟を破り粛清の包囲網を逃れたジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)は、裏社会の頂点に立つ組織・主席連合から自由になるべく立ちあがる。
主席連合の若き高官グラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)は、これまで聖域としてジョンを守ってきたコンチネンタル・ホテルNYを爆破し、ジョンの旧友でもある盲目の暗殺者ケイン(ドニー・イェン)をジョンのもとへ差し向ける。
その中を、ジョンは日本の友人シマヅ(真田広之)に協力を求めるため、大阪コンチネンタル・ホテルに現れる。
一気通貫レビュー(ネタバレなし)
聖地ホテル・コンチネンタルNYが
ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)は、かつて忠誠を誓った世界に決着をつけて、自由を手にすることができるのか。
伝説の殺し屋は戦い続けてついにシリーズ4作目に突入、一体これまでにどれだけの敵を葬り去ったことだろう。この最新作を観るにあたって、先月はシリーズ三作を立て続けに鑑賞したので、予習は十分。
冒頭、砂漠に立つジョン。宿敵「主席連合」への復讐に、アラブにいる首長(ジョージ・ゲオルギウ)を見つけ出し、射殺する。だが、それは新たな因果応報の始まりであった。
首長の死により主席連合の全権を握った若きグラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)が、ホテル・コンチネンタルNYの支配人・ウィンストン(イアン・マクシェーン)を呼びつける。
「お前がジョン・ウィックを野放しにしたせいだ。責任を取れ」と。
前作でも引責で支配人を解雇されたウィンストンだが、今回はお仕置きもレベルアップ。怒りの砂時計が落ちきると同時に、眼下の由緒あるホテルの建物が、爆発で全壊する。このスケール感はハンパない。
ここから先、ストーリーの詳細には触れないが、今回のラスボスはこのグラモン侯爵。首長を殺したジョンを抹殺するために、執拗に追いかける。
大阪の支配人は真田広之だったか
一方、ジョンは旧知の友人を頼って大阪コンチネンタル・ホテルへ。その支配人シマヅ・コウジを、真田広之が演じているのである。劇場予告では二人が対決しているように見えたが、実際はジョンを匿って組織と敵対する役だった。
ともあれ、『ブレット・トレイン』じゃ物足りなかった、キレ味鋭い真田広之のアクションが堪能できるのは嬉しい限り。
『アベンジャーズ・エンドゲーム』でも魅せるバトルはあったが、役柄的には唐突にホークアイと戦い始めて、すぐに死んでしまう謎のヤクザだ。でも、今回は存在感が違う。何より義理・人情に厚いキャラなのが良い。
そうはいっても、『ジョン・ウィック』シリーズだから、結局は主席連合の意気がかかったヤバい連中がわんさと押しかけて、みんなでジョンに襲いかかってくる構図は不変。
舞台となる夜の大阪には、相変わらずカタカナや漢字のネオンや相撲レスラー、日本刀や甲冑に松の盆栽と、ハリウッドの考える昔と大差ない日本のイメージまんま。だが、相当スタイリッシュな仕上がりではある。
セットとはいえ、大阪の町をここまでクールに見せてくれるのは『ブラック・レイン』以来ではないかい。梅田駅と地下鉄のセットもいい感じだった。
ケインはコスギじゃなかった
そして今回、ジョンを苦しめる大敵となるのが、引退していた盲目の殺し屋ケイン。娘をネタにグラモン侯爵が脅迫し、渋々旧知のジョンの暗殺を請け負う。
ケイン役を演じているのは香港映画界の至宝ドニー・イェンじゃないか、グラサン姿だとちょっと雰囲気違うけど。
思えば冒頭でジョンが木の棒相手にカンフーの稽古をしているシーンも、ドニー・イェンでお馴染み『イップ・マン』のそれのようであった。
それにしても、真田広之に加えドニー・イェンまで登場とは、シリーズは回を追うごとに豪華になるものだ。
盲目のケインが、音を頼りに拳銃を撃ったり、仕込み杖で斬りつけたりで、屈強な連中を相手に戦える設定には相当ムリがあるのは事実。
だが、どれだけ攻撃されクルマに衝突してさえも、すぐに復活するジョンの無敵さ同様に、ケインが活躍するのも満更ありえなくはない気になってくる。
キアヌ・リーブスや真田広之のアクションがクソ真面目路線なのに対し、ドニー・イェンがコミカルな要素を思いつくままに採用しているのも変化があっていい。
ただ、盲目の仕事人という設定は、勝新太郎の座頭市というより、『ローグ・ワン:スター・ウォーズ・ストーリー』でドニー・イェン自身が演じた、目の見えない僧侶のようである。
◇
ここまでで既に一流の殺し屋は揃っているが、更に新キャラがもう一人、獰猛な愛犬とともにジョンを追う賞金稼ぎのトラッカー(シャミア・アンダーソン)。
ジョンとは旧知ではないし、金目当ての男だからすぐに返り討ちに遭うかと思えば、要所で存在感をアピール。
最新作が最良なのだ
大阪だけでも十分に見応えありの作品だが、今回は169分の長尺とあって、まだまだ盛りだくさん。
更にベルリンに行き、前作でジョンが縁を切ったルスカ・ロマの一族の首領(ナタリア・テナ)に会いに行き、巨大なディスコを舞台に巨漢キーラ・ハルカン(スコット・アドキンス)と対決。
そして、ついに組織の古いルールを使って、グラモン侯爵とパリで決闘を申し込むことに成功。ジョンが勝てば、掟に則り、自由が約束される。
パリ中のギャングを相手にしながら、ジョンは約束の夜明け時刻までに、会場であるサクレクール寺院に到達しなければならない。
◇
映画は勿論この決闘がクライマックスなのだが、そこにたどり着けるかのハラハラもあり、最後まで存分に楽しめる。
「最新のものが最良なのだ」というフレーズはポルシェを語るときに使われるものだが、『ジョン・ウィック』シリーズもまさにそれだわ。4作目にして、星がついに4つになった。
一気通貫レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
さらばシャロン、あんたも最高だった
1作目から良い味をだしていたホテル・コンチネンタルNYのコンシェルジェ、シャロン(ランス・レディック)は本作序盤でウィンストンの身代わりでグラモン侯爵にあっさり射殺されてしまう。
残念だが、これにより、本作ではただならぬ敵を相手にしていることが伝わる。ランス・レディックは昨年惜しくも亡くなっている。遺作となる本シリーズのスピンオフ『バレリーナ』で在りし日の姿を見たい。
真田広之の出番が前半だけになってしまったのは寂しいが、あんなに頼もしいバディがいては、主人公が目立たなくなってしまうか。
今回のドニー・イェンは正統派カンフーアクションではないが、あそこまでコミカル演技でも映画の緊張感を維持させるのは、香港映画仕込みだからかもしれない。
盲目のケインが爆弾を仕掛けたのかと思ったら、人感センサーだったのは最高。チャイムの音色と銃撃の異色組み合わせだ。
圧巻のアクションは今回も文句なし
アクションについては今回も手抜きなし。ジョン・ウィックも、たまたま手にしたヌンチャクで攻撃しながらすぐに熟練したり、防弾スーツに弾丸喰らって何メートルも飛んだりと、相変わらず過激。
凱旋門周囲を走るクルマに何度も衝突されながら戦う超人的なファイトは、一体どこまでがCGなのだろう。決闘の場面では、会場までの長い階段を賊と戦いながら駆け上がっていくジョン。
「階段落ち」じゃなく「階段上り」のチャンバラもあるのかと感心したが、結局最後にやはり、ジョンは下まで派手に転げ落ちる。これも痛そう。
決闘の対戦相手であるグラモン侯爵が、ケインを代理指名するという裏技がありなのかは釈然としない。それで勝っても名誉にならんだろうに。
だが、決闘の内容は、なかなかよく練られており、さすがだと感服。きれいに終わったではないか。ここまで到達したら、もう完結してよい気もする。
だが、妻のため自分のために組織を足抜けした男が、これだけ周囲の仲間にも悲劇を生み出しているとなれば、このまま静かに終われないか。エンドロール後のおまけを観ても、まだ続きそうだ。