『リバー・オブ・グラス』『オールドジョイ』『ウェンディ&ルーシー』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | ページ 3 | シネフィリー

『リバーオブグラス/オールドジョイ/ウェンディ&ルーシー』一気レビュー

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『ウェンディ&ルーシー』
 Wendy & Lucy

公開:2008 年  時間:82分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        ケリー・ライカート
製作総指揮:      トッド・ヘインズ

キャスト
ウェンディ:   ミシェル・ウィリアムズ
警備員:      ウォルター・ダルトン
アンディ:      ジョン・ロビンソン
メカニック:      ウィル・パットン

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

(C)2008 Oscilloscope Laboratories.

あらすじ

ウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は仕事を求め、愛犬ルーシーを連れて車でアラスカを目指していたが、途中のオレゴンで車が故障し足止めされてしまう。

ルーシーのドッグフードも底をつき、旅費を少しでも残しておこうと考えたウェンディはスーパーマーケットで万引きをする。

店員に見つかって警察に連行されたウェンディは、長時間の勾留の末にようやく釈放されるが、店の外に繋いでおいたルーシーの姿は消えていた。野宿を続けながら必死にルーシーを探すウェンディだったが…。

今更レビュー(ネタバレあり)

ケリー・ライカート監督のロードムービー第3弾。

とはいいながら、第1弾の『リバー・オブ・グラス』は退屈な田舎町から脱出できない男女の映画だったし、本作はアラスカを目指す旅の途中、オレゴン州で足止めを食う女と愛犬の話だ。きちんと移動するロードムービーだったのは、前作『オールドジョイ』だけかもしれない。

製作総指揮には今回もトッド・ヘインズ。そして、愛犬ルーシーと旅をしている主人公ウェンディにはミシェル・ウィリアムズ

既に『ブロークバック・マウンテン』(2005)で有名になっていたミシェルだがインディペンデント作品への出演も多く、本作でケリー・ライカート監督と出会う。

以降、次作の『ミークス・カットオフ』から『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』そして最新作の『ショーイング・アップ』と、既に4本の作品に出演。

(C)2008 Oscilloscope Laboratories.

前作『オールドジョイ』では、旧友のむさ苦しい中年男の二人旅に賢そうな犬が華を添えてくれていた。今回はウェンディが連れ歩く愛犬が、更に重要な役を担う。

あれ、考えてみれば、両作品とも犬の名前はルーシー。そう、この哀愁を漂わす犬は、前作からの連続出演、何を隠そうケリー・ライカート監督の飼い犬が実名で出ているのだった。

ちなみにルーシーは、カンヌ国際映画祭で優れた演技をみせた犬に贈られるパルム・ドッグ賞を、初の満場一致の快挙で受賞。飼い主より一足先に栄冠に輝いている。

(C)2008 Oscilloscope Laboratories.

さて、その思わせぶりな展開ばかりで分かり易いドラマになっていなかった前作『オールドジョイ』に比べると、本作はとっつき易い内容。

職を求めて貧乏旅行で、アラスカに向かっているウェンディが、クルマの故障でオレゴンに足止めを食う。クルマは年季の入ったホンダ・アコード『リバー・オブ・グラス』日産パルサーに続き、懐かしの日本車だ。

いくらか持ち合わせはあるが、節約中のウェンディは、工場だかの私有地に無断で車中泊をしていて、老警備員(ウォルター・ダルトン)に注意される。

とはいっても、この眉毛まで真っ白で別所毅彦のような警備員は、とても感じのいい老人だ。エンジンがかからなくなったクルマを敷地外まで手押ししてくれるし、その後も町に身寄りのないウェンディに、何かと気にかけてくれる。

ルーシーのドッグフードが枯渇したので、スーパーに赴いたウェンディは、つい節約マインドが高まって、エサの缶詰を万引きし、店員の若者(ジョン・ロビンソン)に見つかってしまう。

この手のケースは厳重指導して終わるケースが多い邦画に比べ、オレゴンは厳しい。

ウェンディは警察に連行され、長時間拘束されて写真や指紋は登録され、罰金50ドルを課せられる。自業自得ではあるが、ようやく釈放されてスーパーに戻ると、入り口に繋いでおいたルーシーがいない。これはさすがに気の毒になる、いや、犬が。

そこから先は、見知らぬ街で懐も乏しい中クルマを断腸の思いで修理に出し、あとはひたすら愛犬を探す物語になる。保健所を訪ねたり、迷い犬のポスターを貼ったり、いろいろ試みるも何の手がかりも得られない。

妹に電話しても「要件は横にいる彼氏に話してよ」と、何とも仲の悪そうな反応が返ってくる。一体どんな経緯でウェンディが犬を連れてアラスカで職探しすることになったのか、特に語られはしないが、頼る相手がいない様子は窺える。

携帯も持たず犬探しに苦労するウェンディを、老警備員が元気づけてくれる。押しつけがましくないサポートぶりがいい。

クルマを預けた自動車修理屋の店主(ウィル・パットン)は、決してがめつい人物ではないのだろうが、結果的に当初想定の修理費用を大きく超えることが判明し、ウェンディは愛車を手離さざるを得なくなる。

「修理するなら2,000ドル、その値段じゃ買い替えは厳しいな、廃車なら30ドルで引き受けるよ」

ああ、胸が痛む台詞だ。災難続きのウェンディ。

(C)2008 Oscilloscope Laboratories.

以下、ネタバレになるので未見の方はご留意ください。

このまま愛犬ルーシーと会えずに映画が終わるわけがなく、終盤に再会が待っていることはお約束だ。この場面のパルム・ドッグ受賞犬の演技は泣かせる。

だが、そこから先の展開は、ハッピーエンドというわけにはいかなかった。クルマなし、犬連れでアラスカ行きはさすがにキツイか

(C)2008 Oscilloscope Laboratories.

思えば、ミシェル・ウィリアムズ『ブローク・マウンテン』から『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、近年では『フェイブルマン』と、どれも不運に見舞われており、幸福感に充ちる役柄がなかなかない気がする。

本作もその例にもれず、結局彼女は良かったことなど一つもないまま、貨物列車に忍びこみ、アラスカを目指す。

そこは南極大陸とは対極のポジションだが、一年後にはタロとジロのように、ルーシーとまた会えることを願わずにいられない。