『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー(インディジョーンズ2) | シネフィリー

『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』一気通貫レビュー②

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『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)

『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』
Indiana Jones and the Temple of Doom

インディジョーンズの第2弾は、ダークでグロい演出がふんだんに採り入れられた前日譚。

公開:1984 年  時間:118分  
製作国:アメリカ
 

スタッフ 
監督:    スティーヴン・スピルバーグ
脚本:        ウィラード・ハイク
            グロリア・カッツ
原案:        ジョージ・ルーカス

キャスト
インディ・ジョーンズ:ハリソン・フォード
ウィリー・スコット:ケイト・キャプショー
ショート・ラウンド: キー・ホイ・クァン
モラ・ラム:    アムリーシュ・プリー
チャター・ラル宰相:   ロシャン・セス
ブランバート大尉: フィリップ・ストーン
ラオ・チェ:        ロイ・チャオ
ウー・ハン:    デヴィッド・ヴィップ
シャーマン長老:D・R・ナーナヤッカーラ
マハーラージャ王:     ザリム・シン

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

ポイント

  • 賛否両論別れるらしいが、私的にシリーズ最高なのは、スピルバーグ自身が最悪の出来という本作。何たって、映画のダークな雰囲気と大人の男インディの組み合わせがいいのだ。

あらすじ

前作より1年前の1935年。上海のナイトクラブでマフィアとトラブルになったインディ(ハリソン・フォード)は、クラブの歌姫ウィリー(ケイト・キャプショー)と現地の少年ショーティ(キー・ホイ・クァンを連れて逃亡するが、飛行機が墜落しインドの山奥に不時着してしまう。

寂れた村に辿り着いた彼らは、この村の子どもたちが邪教集団にさらわれ、村の秘宝「サンカラストーン」も奪われたことを知る。奪還を依頼されたインディたちは、邪教集団の根城であるパンコット宮殿へと向かう。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

インディとショーティの再会

本作を語る際に、まず触れたいのは2023年のアカデミー賞授賞式の感動劇だ。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の作品賞受賞を発表したのはプレゼンターのハリソン・フォード、そして同作で久々に俳優カムバックのキー・ホイ・クァンがステージで熱い抱擁をかわす。

『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』インディとショート・ラウンド少年の再会劇が、こんな大舞台でみられるとは、何とも乙な演出だ。

もっとも、『フェイブルマンズ』がノミネートされたスティーヴン・スピルバーグ監督が、その光景をどのような面持ちで観ていたのかは定かではない。

渾身の新作(出来もいいです)が受賞できなかった悔しさもあるだろうが、そもそもスピルバーグ監督は、『魔宮の伝説』「インディのシリーズで最悪の出来だ」と後に評しており、複雑な思いがあったのかもしれない。

ダークなインディでなぜ悪い

過去何度も『魔宮の伝説』を観ているが、今まで知らなかったことが二つあった。

一つは、これが前作『レイダース 失われた聖櫃』前日譚であったこと。たしかに、前回意味ありげに終わった聖櫃の行方が、本作では話題にあがらないが、かと言って前日譚と知らずとも、面白さに影響はない。

もう一つは、本作の評判がけして高くない、というか賛否が大きく分かれているらしいということ。これは意外だった。なぜなら、私には文句なしにシリーズで一番面白い作品だったからだ。

だが、悪評の理由をみると納得がいく。本作はインディにしてはダークでグロすぎる、児童虐待が描かれインドへの偏見も激しい、等々。

一方、私はこの作品のダークなところが好きなのだ。前作で気になった、能天気な明るさと家族みんなで楽しめる優等生的なエンタメから、ちょっと大人の雰囲気がでてきた。

児童虐待も人種偏見も、昨今のコンプラ目線では気になるが、当時はそんなことお構いなしに、ただの娯楽ファンタジーとして観ていた。

大量に登場する蛇や大型サイズの昆虫、さらにはゲテモノ料理の晩餐会など、その手の映像が苦手なひとは敬遠するだろうけれど、これだって最近の映画ではもっと気色悪い映像が蔓延っているではないか。

上海の取引シーンが最高

なので、個人的には『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』、大いに買っている。

なかでも、冒頭の上海の高級レストランでの、インディとギャングとの物品取引のシーン。ここは息つく暇もない興奮の連続。

中華料理の円卓を効果的に使った取引に、毒入りのカクテルと解毒剤、給仕として潜入しているインディの相棒、そして歌姫ウィリー・スコット(ケイト・キャプショー)との邂逅。

前作の冒頭で転がる巨大な球状の岩から逃げるようなダイナミックさはないが、スパイ映画のようなキレのいいアクションになっており、インディが『ミッション:インポッシブル』のイーサンに見える。墜落する飛行機からゴムボートにのって落下し、雪山を滑走し渓谷に落ちていくあたりも、どこか似ている。

この序盤の上海のシーンだけで高い満足が得られるが、本作全編の中では、ヒロインのウィリー・スコットと、インディがどこかで拾った相棒のショート・ラウンド少年(キー・ホイ・クァン)を登場させるだけの意味しかないところがまた面白い。

こうして、インドの秘境にたどりついたインディ・ジョーンズとウィリー、ショート・ラウンドの三人は、村の長老から救世主とみなされ、奪われたサンカラストーンと子供たちを取り戻す羽目になる。

そして邪教集団の暮らす、かつてマハラジャが支配していたパンコット宮殿へと向かう。

インディ以外のキャラ設定が残念

ここから先の展開は前回同様のインディっぽいものになるのだが、残念だったのは、ウィリーとショート・ラウンドのキャラクター設定だ。

特にウィリーは歌姫という設定も特に生かされず、ただひたすら金切声をあげてバカ騒ぎするだけの深みのないヒロイン役になっており、絶叫クイーンという名前にも値しない薄っぺらさ。

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ケイト・キャプショーは本作の出会いでスピルバーグ監督と結婚したのだが、なおのこと、もっといいキャラにしてあげればいいのに。ちなみに彼女は松田優作の遺作『ブラック・レイン』(1989)で大阪の外人ホステスを演じていた女優。ああいう落ち着いた演技のが映える。

ショート・ラウンド少年キー・ホイ・クァンは本作で一躍人気者になり、スピルバーグが製作総指揮の『グーニーズ』(1985)にも出演。

本作でもインディの小さなサイドキックとして活躍する姿が印象的だが、それでも後半のクライマックスでは、ウィリー同様にただ絶叫をあげてインディの助けを求める場面が目立ったように思う。

結局、主人公に女と子供がすがりつくという構成にしてしまったのは、いま一つ新鮮味がない。

終盤に登場するトロッコでチェイスするローラーコースター的な展開や、吊り橋の両端から敵が迫ってくるシーンなど、定番商品的なシチュエーションではあるが、そこはさすがに安定感のある処理で見応えあり。

いくつか欠点はあるものの、やはり私はこのダークなインディに一票を投じたい。