『エイリアン』 (リドリー・スコット監督)
『エイリアン2』(ジェームズ・キャメロン監督)
『エイリアン3』(デヴィッド・フィンチャー監督)
『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ監督)
『エイリアン4』
Alien: Resurrection
公開:1997 年 時間:109分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: ジャン=ピエール・ジュネ 脚本: ジョス・ウィードン キャスト リプリー8号: シガニー・ウィーバー アナリー・コール: ウィノナ・ライダー ロナルド・ジョナー: ロン・パールマン ドム・ブリース: ドミニク・ピノン エルジン船長: マイケル・ウィンコット クリスティー副長: ゲイリー・ドゥーダン サヴラ・ヒラード: キム・フラワーズ マーティン・ベレス将軍: ダン・ヘダヤ メイソン・レン博士: J・E・フリーマン ジョナサン・ゲディマン:ブラッド・ダリフ
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

あらすじ
惑星フィオリーナで溶鉱炉に消えたリプリーだったが、エイリアンの軍事利用をたくらむペレズ将軍率いる一派が、残されていたDNAからクローンを生み出し、リプリーは復活する。
リプリーの体内に宿っていたエイリアンをもとに宇宙船オリガ号の中で養殖が開始されるが、成長したエイリアンが脱走。
オリガ号は緊急事態のため地球へ向けて動き出してしまう。リプリーはエイリアンを地球に降ろすまいと戦う。
今更レビュー(ネタバレあり)
リプリー、クローンと化す
シリーズ四作目にして、ジャン=ピエール・ジュネ監督を起用、ハリウッド・デビューとなる。
本作の次に『アメリ』で世界的なヒットを放つわけだが、三作目のデヴィッド・フィンチャーが、その後に『セブン』で注目を浴びたのを思い出す。
リドリー・スコットの一作目、ジェームズ・キャメロンの二作目は文句なしの面白さ、その後の二作は見劣りするが、それでもどの監督も<エイリアン>を踏み台に、みんなメジャーにのし上がっている。何とも、縁起のいいシリーズなのだ。
◇
本作はマンネリ気味だった展開に新機軸を打ち出している。ひとつは、リプリーがクローンだということ。
彼女は失敗を繰り返してようやく誕生した8号なのだ。シガニー・ウィーバーもこの設定は気に入ったらしく、出演を決めている。
◇
そして冒頭では、リプリーの腹から、エイリアンを摘出し標本捕獲に成功する。
過去作はいずれも、乗組員の知らないうちに、エイリアンが閉鎖空間に忍び込んでいる恐怖を描いてきたが、今回は初めからその存在を認識し、コントロール下に置いている。これも目新しい展開だ。

かつてないほどに頼れるメンバー
本作の舞台は連合軍の実験宇宙船「オリガ」であり、ベレス将軍(ダン・ヘダヤ)を筆頭に、上層部は、すぐに餌食になりそうな俗物が揃っている。
そして修理のために「オリガ」に乗船する宇宙貨物船「ベティ」の面々。どれも荒っぽそうな連中だが、エイリアンとの対戦には頼もしそうでよい。
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その中で女性クルーのコール(ウィノナ・ライダー)は過去作にはいなかった優しい性格の女性キャラだが、「人間より人間らしい」と称されたその正体は、お馴染みの<白い汗>のアイツ。でもさすがに、ウィノナ・ライダーには生首だけで喋らせたりはしないか。
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車椅子のひねくれ者ブリースに、ジャン=ピエール・ジュネ監督作品では常連のドミニク・ピノン。彼が登場すると、どこか『デリカテッセン』(1991)っぽい雰囲気が。

エイリアン、泳ぐ
本作では初めてフルCGのエイリアンになっているそうだが、ネバネバなウェット感は健在で、前作ほど安っぽい感じには見えない。
ゴア表現も意外と強く、また、エイリアンやクローン失敗作の標本など、監督の好きそうなキワモノ映像にも力が入っている。
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強化ガラスの檻に入れられたエイリアンが、きっと叩き割って脱出するのだと思っていたら、知恵を使って別な方法で脱出する。はじめは仲間割れかと思ったが、一匹を殺してその体液で床を溶かすのだ。
彼らは強いし凶暴だが、知能は人間に劣るのだろう。今更だが、この設定はうまい。
強くて頭脳明晰だとはじめから人間に勝ち目がなく、すぐ諦めてしまって映画にならない。音に反応するゾンビは愚かだが、大量発生で襲ってくるから怖いのと似ている。
また、今度のエイリアンは、水中を泳いだりもする。これも人間より微妙に速く泳ぐ感じで、恐怖の煽り方がいい。
髑髏顔のニューボーン登場
本作は最後に、エイリアンがついに宿主不要で、自分の体内に子宮を持つように進化する。そして、人間とエイリアンのハイブリッド生物「ニューボーン」が誕生する。
ビジュアル的には、『キャプテン・アメリカ』の宿敵レッド・スカルのような髑髏顔。こいつが、クローンであるリプリーを母親と認識する。

終盤には、凶暴ではあるが彼女を母と慕うニューボーンを、リプリーが泣く泣く宇宙に放り出すという、本シリーズには珍しいエイリアンとの人情劇が登場する。これには、たまげた。
この、凶暴化した我が子を涙をこらえて退治する話、どこか見覚えがある気がしていたが、やっと思い出した。手塚治虫先生の『ブラックジャック』だ。「ナダレ」という鹿が脳手術を受けて凶暴化してしまい、最後に飼い主が撃ち殺すことになる、悲話に似ているのである。
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さて、本作は最後に宇宙船がエイリアンを排除して、地球に帰還する。ロボットのコールにも、クローンのリプリーにも、初めての地球。その美しさに感動する二人で、映画は終わる。
『第9地区』のニール・ブロムカンプを監督に『エイリアン5』を撮る企画も一時期あったが、立ち消えになっている。個人的には、興味があったのだが…。
なお、これらの他に、リドリー・スコット監督が一作目の前日譚として撮った『プロメテウス』および『エイリアン:コヴェナント』があり、また2024年には最新作『エイリアン・ロムルス』が公開される。