『マトリックス リローデッド』
The Matrix Reloaded
エージェント・スミスが暴走し、仮想世界で繰り広げられるアクションは、更なる高みに到達する。難解な内容を耐え抜く価値はある。
公開:2003 年 時間:138分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督・脚本: ラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹 キャスト ネオ: キアヌ・リーブス モーフィアス: ローレンス・フィッシュバーン トリニティ: キャリー=アン・モス エージェント・スミス: ヒューゴ・ウィーヴィング オラクル: グロリア・フォスター ナイオビ:ジェイダ・ピンケット=スミス リンク: ハロルド・ペリノー・ジュニア パーセフォニー: モニカ・ベルッチ メロヴィンジアン: ランベール・ウィルソン キー・メーカー:ランドール・ダク・キム ロック司令官: ハリー・レニックス ハーマン評議員: アンソニー・ザーブ ジー: ノーナ・ゲイ アーキテクト:ヘルムート・バカイティス ザ・ツインズ: ニール&エイドリアン・レイメント セラフ: コリン・チョウ ベイン: イアン・ブリス エージェント・ジョンソン: ダニエル・バーンハード エージェント・ジャクソン: デヴィッド・A・キルド エージェント・トンプソン: マット・マッコーム
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
救世主として覚醒したネオは、コンピュータの支配から人類を解放するため戦いを続けていた。しかし、人間たちが暮らす最後の都市ザイオンに、ロボット兵センチネルが25万もの大軍で押し寄せていることがわかり、ザイオンの滅亡は目の前に迫っていた。
ザイオンを救うには、ネオ(キアヌ・リーブス)がマトリックスの「ソース」に到達しなければならず、そこへ通じる道を開くことができるのは、キー・メーカーという人物だけだと知る。
ネオやモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)、トリニティ(キャリー=アン・モス)は、キー・メーカーに会うためマトリックスへと侵入する。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
続編は更にスケールアップ
マトリックスの続編にあたるのだが、その独特の世界観とアクションは、前作を更にスケールアップしたものとなっている。一方でストーリーは難解を極める。
公開当時に観たにもかかわらず、一作目のような強烈な印象がなく、思い出すのは大量発生したエージェント・スミスだけなのを不思議に思っていたが、久しぶりに観てその理由がわかった。物語が本作のみでは完結しないのだ。
◇
公開時期が半年しか違わない、三部作の完結編にあたる『マトリックス レボリューションズ』と合わせ技で一本の構成。つまり本作では謎を投げかけたままで、次作につなげているのだ。
いわば、『スターウォーズ 帝国の逆襲』から『ジェダイの復讐』、いや前後編を立て続けに公開する点では『るろうに剣心』スタイルといえる。だから単品での印象が希薄なのだろう。
バトルアクションは文句なし
本作がお気に召すかは、アクションとストーリーのどちらに比重を置くかによるといえるかもしれない。
アクションに関しては、素晴らしいの一言だ。冒頭のトリニティがビルに単身で攻め込んでいくアクションから魅せてくれる。『ブラック・ウィドウ』の決めポーズは、トリニティが20年前に既に披露しているではないか。
◇
全体を通じて、バレットタイムの撮影手法による映像効果や、エージェントたちの不気味な強さなど、基本線は大ヒットした前作からの踏襲であるが、そこにマンネリ感はない。むしろ、前作を踏み台にして、更なる高みに挑戦している。
例えば、預言者オラクル(グロリア・フォスター)の用心棒セラフ(コリン・チョウ)とネオとのカンフーアクションは、さすがに本格派の登場だけあって前作以上に見応えがある。ジェット・リーのオファーは実現しなかったそうだが、この対戦をみれば全く不満はない。
◇
エージェントに関しては、前作のリーダー格だったスミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)が前作でネオに敗れたことで放浪の身(エグザイル)となり、ついでに複製機能や上書き機能も加わったという、実にプログラムっぽい、恐ろしいアップグレードを果たしている。
これにより、あの強敵エージェント・スミスが無尽蔵に街中から湧いて出てきてネオたちを襲うという、衝撃的な戦闘シーンに繋がっていく。まるで蟻の大群のような俯瞰ショットだ。
同じ姿形の敵が大量に出てくる例はあっても、大抵は同一コスチュームの兵士か機械のたぐいだ。同じ顔の人間となると、『マルコヴィッチの穴』にも似た不気味さがある。連続写真のようにアクションの残像が残る様子は、まるで『聖闘士星矢』か『リンかけ』のようだ(古いね)。
高速道路を撮影用に造成!
今回アクションに関しては、モーフィアスとトリニティも負けていない。オラクルによれば、ザイオンの町を救うためには、ネオが<ソース>と呼ばれるメインフレームに行かねばならない。
その際に必要となるキー・メーカー(ランドール・ダク・キム)なる人物を敵の手から守るために、この二人がマトリックス内の高速道路を戦いながらクルマやバイクで激走するのだ。
◇
このバトルアクションは地下駐車場から始まって延々と高速道路を暴走・逆走し恐ろしく長尺なのだが、あまりのド迫力に目が離せなくなる。
スミスとの戦いと違い、こちらはどのくらい特撮が入っているのか、どこまで実写なのかが、とても気になる。でも、飛行場の古い滑走路上に実際に2キロ以上の高速道路を造成してしまったというから、結構ガチで撮ってるのかも。
◇
透過能力をもつザ・ツインズ(ニール&エイドリアン・レイメント)が相当手強いが、最後に日本刀を持ってクルマを跳び移り、決着をつけるモーフィアスはまるで『ブレイド』のようであった。
オラクルは信用できるか
さて、アクションは大満足だが、ストーリーはどうだろう。ザイオンにロボット兵センチネルの大軍が押し寄せている。モーフィアスらのネブカドネザル号が久しぶりにザイオンに帰投する。
現実主義で堅物のロック司令官(ハリー・レニックス)は、オラクルの予言を盲信するモーフィアスは折り合いが悪い。ロックの恋人である船長のナイオビ(ジェイダ・ピンケット=スミス)が、かつてモーフィアスと付き合っていたことも影響している。
ザイオンの内部でさえ、複雑な人間関係がありそうだが(評議会などが絡んでくると、『スターウォーズ』のように敵も混ざっている気がしてしまう)、本作で観る者の頭を悩ましてくれるのは、オラクルと、終盤に登場するアーキテクト(ヘルムート・バカイティス)の二人だ。
◇
まずオラクルは、前作ではネオに「あなたは救世主ではない」と言いながらも、トリニティへの言葉などで彼らを勝利に導いてくれた人物だ。なので、こちら側の人間のつもりで見てしまうが、実は彼女はプログラムなのだ。
では、彼女を信じていいのか。生き残るためには、力を合わせなくちゃ。だから彼女は人間に手を貸す。そしてネオに、ザイオンを救うには、「キー・メーカーを連れてソースに行け」と告げる。
エージェント・スミスのような異常プログラムも、行き着く先は、隠れるかソースに戻るしかないそうだ。一方で、ネオはソースには行きたくなかった。夢でみたように、トリニティが死んでしまうから。
だが、選択をしなければザイオンは滅びてしまう。そういい残して、オラクルは去っていく。
アーキテクトが語る真実とは
更なる謎を与えてくれる、マトリックスの設計者であるアーキテクトに、ネオはようやくソースで出会うことになる。そこに到達するまでには長い道のりがあるのだが、ここでは割愛する。
ただ、目立たなそうに見えたのに意外と職人気質で渋いアジア系なおっさんのキー・メーカーや、次作にも活躍してきそうな老舗プログラムのメロヴィンジアン(ランベール・ウィルソン)とパーセフォニー(モニカ・ベルッチ)の夫妻など、なかなかユニークなキャラ多し。
モニカ・ベルッチは何の特撮効果もないのに、そこに登場するだけで映画のジャンルを変えてしまう魔力がある。この破壊力は『007 スペクター』でのボンドガール出演時にもなお健在。
◇
閑話休題。アーキテクトはネオにいう。マトリックスには秩序を受け入れない人間が一定数存在してしまう。そこで、その人間達を誘導してザイオンを作らせ、救世主というアノマリーを出現させる。それがネオで6人目になる。
全てはお釈迦様の手のひらの上だった。前任者同様に、ネオの救うべきザイオンもまた滅びてしまうのか。ソースの部屋の壁を取り囲むモニター画面の無数のネオの顔は、前任者のものか。アーキテクトの発言にいちいち文句を言ってくる演出が面白い。
だが、ネオは前任者とは大きく異なった。ザイオンの町全体かトリニティ一人か、どちらを救うかという選択に、彼は微塵も悩まずにトリニティを選ぶのだ。
そして彼は悪夢が現実にならぬよう、エージェントに撃たれてビルを落下していくトリニティを必死で救命する。このネオの迷いのなさは凄い。まあ、『ダークナイト』のバットマンだって、ハービー・デントより恋人のレイチェルを救おうとしたけど。
本作で序盤から二人の熱愛ぶりを盛んに見せ、パーセフォニーが他人事ながら嫉妬するくらいだったのは、この伏線だったか。
◇
終盤でネオが失神してからの展開は次回のお楽しみ。To be continued ならぬTo be concludedってのがウォシャウスキー姉妹らしくてよいね。
マトリックス
The Matrix (1999)
マトリックス リローデッド
The Matrix Reloaded(2003)
マトリックス レボリューションズ
The Matrix Revolutions(2003)